「先生、夜中にふくらはぎがつって、あまりの痛さに飛び起きるんです……」そう訴えるのは、最近ウォーキングを始めたツリ夫さん。明け方に「つった!」と目が覚め、しばらく悶絶。日中もふくらはぎが張っている。クセになったように繰り返すこの“こむら返り”、どうすれば防げるのか?

先生、夜中に足がつって痛くて眠れないんですよ〜!
あれって、どうして起きるんですか?

あの激痛、つらいよねー。「こむら返り」は、ふくらはぎの腓腹筋(ひふくきん)が突然ギューッと勝手に収縮してしまう、筋肉のけいれんなんだ。夜間や運動のあとに多いよー。

最近ウォーキングを始めたんだよね?水分はしっかりとってる?あと、寝るとき足元は冷えてない?

言われてみれば、汗かくのに水はあまり飲んでないかも…。
それに夜は足元がスースー冷えてます!

なるほどねー。運動量が増えたのに水分やミネラルが足りない、そして冷え。これがこむら返りを起こしやすくするんだ。ふくらはぎの状態を見てみようねー。


ふくらはぎ、カチカチに張ってるねー。冷たいし。(ぐっと押す)ここ、しこりみたいに硬いところがあるよ。

ウッ、そこ硬いですね…!自分でもカチカチなのわかります。

腓腹筋の緊張としこり、そして冷え。これがそろうと、寝ている間のちょっとした刺激で一気につっちゃうんだよー。ゆるめて温めて、しっかり対策しようねー!
こむら返りって何が起きてるの?
正体:こむら返りは、ふくらはぎ(腓腹筋)などの筋肉が突然、強く不随意に収縮して痛む「筋けいれん」です。「こむら」はふくらはぎの古い呼び名。夜間や運動中に起こりやすく、加齢・脱水・電解質(マグネシウム・カルシウム・ナトリウム・カリウム)の乱れ・冷え・妊娠・使いすぎ・血流不良などが引き金になります。
起こるしくみ:筋肉の収縮と弛緩をコントロールするしくみが、脱水やミネラル不足、疲労、冷えでうまく働かなくなり、筋肉が勝手に強く収縮してしまうと考えられています。特にふくらはぎは、寝ているときに足首が伸びた姿勢になりやすく、つりやすい場所です。
つる筋肉(起始・停止・作用・支配神経)
腓腹筋:起始=大腿骨の内側顆・外側顆/停止=アキレス腱を介して踵骨隆起/作用=足関節の底屈、膝関節の屈曲/支配神経=脛骨神経(S1・S2)。こむら返りの主役です。
ヒラメ筋:起始=脛骨・腓骨の後面/停止=アキレス腱を介して踵骨隆起/作用=足関節の底屈/支配神経=脛骨神経。腓腹筋とあわせて下腿三頭筋をつくります。
つった時の対処:あわてず、膝を伸ばした状態で足先を手前(すね側)にゆっくり引き寄せます。これで腓腹筋が伸ばされ、けいれんが治まってきます。反動をつけず、じわーっと伸ばすのがコツです。
くり返す時は原因のチェックも
よくある誘因:水分・ミネラル不足、運動のしすぎ、冷え、加齢によるふくらはぎの筋力・柔軟性の低下。
セルフケア:こまめな水分・電解質の補給、就寝前のふくらはぎストレッチ、足元を冷やさない工夫(レッグウォーマーなど)。
注意サイン:あまりに頻回・強い、片足だけがむくんで痛む、しびれを伴う場合は、下肢の血流障害(動脈・静脈)、電解質異常、糖尿病、薬の影響、腰からの神経など、別の原因が隠れていることもあります。気になるときは医療機関で相談しましょう。
鍼とお灸はなぜ効く?
鍼のしくみ:張って硬くなった腓腹筋のトリガーポイントに鍼をすると、筋の緊張がゆるみ血流が回復して、つりにくい状態に近づきます。鎮痛は「ゲートコントロール説」=太い神経への刺激が脊髄で痛みの信号を抑えます。血流改善は疲労物質の排出も助けます。
お灸とセルフケア:お灸の温熱でふくらはぎを温めて血流を促し、冷えによるつりを防ぎます。あわせて水分・ミネラル補給、就寝前のストレッチ、足元の保温を習慣にすると、夜中のこむら返りがぐっと減ります。
東洋医学でみるこむら返り
病態:東洋医学では「肝は筋を主る」。血をたくわえる肝の働きが弱り、血が筋を十分に養えなくなる「肝血虚(かんけっきょ)」で、筋がひきつり、つりやすくなると考えます。さらに「寒邪」(冷え)が加わると筋が縮こまり、こむら返りが起こりやすくなります。加齢による肝腎の不足も背景になります。ふくらはぎには足の太陽膀胱経が走ります。
治法:養血柔筋・舒筋活絡・散寒(血を補って筋をやわらげ、経絡を通し、冷えを散らす)。
選穴:承山(膀胱経・こむら返りの特効穴)、承筋(膀胱経・ふくらはぎ)、委中(膝の裏)、陽陵泉(胆経・筋会)、三陰交(肝脾腎を養い血を補う)、太衝(肝経の原穴)。血を養いながら局所の巡りを整えます。


ふくらはぎの承山・承筋と、血を養う三陰交に鍼をするよー。お灸でしっかり温めようねー。おうちでは、寝る前に水分をとって、ふくらはぎを伸ばして、足元を冷やさないこと!
一週間後・・・
一週間後、ツリ夫さんはすっきりした顔で治療院にやってきた。

先生、この一週間、一度もつってません!
水分とストレッチと保温、ちゃんとやったら全然違いました。

いいねー!こむら返りは、ふだんのケアで本当に減らせるんだ。ウォーキングの前後もしっかり水分とストレッチをね。ぐっすり眠れる夜が続きますようにー!
こむら返りのまとめ
こむら返りは、ふくらはぎ(腓腹筋)などが突然強く収縮する筋けいれんです。夜間や運動中に多く、脱水・電解質の乱れ・冷え・加齢・使いすぎが引き金になります。つった時は、膝を伸ばして足先を手前にゆっくり引き、腓腹筋を伸ばすのが基本。頻回・強い・片足のむくみやしびれを伴うときは、血流障害や電解質異常など別の原因も考え医療機関で相談しましょう。
施術では張った腓腹筋のトリガーポイントへの鍼で緊張をゆるめ(ゲートコントロール説)、お灸の温熱で血流を促します。東洋医学では「肝血虚+寒」ととらえ、承山・承筋・三陰交・太衝などで養血柔筋・舒筋活絡。あわせて水分とミネラルの補給、就寝前のストレッチ、足元の保温が予防のカギです。西洋と東洋の両面から、つらい夜中のこむら返りを防いでいきましょう。
参考文献
本記事は、はり師・きゅう師国家試験の指定教科書をもとに、鍼灸師である運営者が作成しています。
- 公益社団法人東洋療法学校協会 編『解剖学 第2版』医道の日本社
- 公益社団法人東洋療法学校協会 編『新版 経絡経穴概論 第2版』医道の日本社
- 公益社団法人東洋療法学校協会 編『新版 東洋医学臨床論(はりきゅう編)』医道の日本社
- 公益社団法人東洋療法学校協会 編『はりきゅう理論 第3版』医道の日本社
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状が続く場合や強い痛み・しびれがある場合は、医療機関にご相談ください。


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