「先生、毎月の生理のたびに下腹部がキューッと痛くて、鎮痛薬が手放せないんです……」そう打ち明けてくれたのは、20代のツキ美さん。とくに冷えた日はつらく、腰も重だるい。薬を飲めばしのげるが、毎月のことなので体への負担も気になる。この生理痛、鍼灸でやわらげられるのか?

先生、生理痛がひどくて…下腹部がキューッと痛むんです。
鍼灸でなんとかなるものなんですか?

つらいよねー。生理痛(月経困難症)は、鍼灸が得意とするお悩みの一つだよ。骨盤の中の血流を良くしたり、自律神経を整えたりして、痛みをやわらげていけるんだ。

どんな痛み方かな?冷えると強くなる?温めると楽になる?あと、経血にレバーのようなかたまりは混じる?

冷えるとすごく痛くて、カイロで温めると楽になります。
言われてみれば、かたまりも少し混じってるかも…。

なるほどねー。冷えで悪化して温めると楽、かたまりもある――東洋医学でいう「寒(冷え)」と「血の滞り」が関わっていそうだねー。ただ、痛みが年々ひどくなってないかは大事だよ。

今のところ、いつも同じくらいの痛みです。生理のとき以外は痛くないです。

それは大事な情報だよー。生理のときだけの痛みで、少しずつ悪化してないなら、まずは体を温めて巡りを良くしていこうねー。冷えとお血への対策だ!
生理痛(月経困難症)って何が起きてるの?
正体:生理痛(月経困難症)は、月経に伴う下腹部痛や腰痛などのつらい症状のことです。大きく2つに分けられます。機能性(原発性)=子宮内膜でつくられる「プロスタグランジン」という物質が子宮を強く収縮させ、血流が一時的に低下して痛みが出るもの。若い女性に多いタイプです。器質性(続発性)=子宮内膜症・子宮筋腫・子宮腺筋症などの病気が背景にあるものです。
症状:下腹部のキューッとした痙攣性の痛み、腰の重だるさ、頭痛、悪心、下痢、冷え、だるさなど。冷えると悪化し、温めると楽になることがよくあります。
見逃したくない注意サイン
器質性を疑うサイン:痛みが年々強くなる、月経のとき以外にも下腹部や性交時に痛む、経血の量がとても多い、レバー状のかたまりが増えた、といった場合は、子宮内膜症などの病気が隠れていることがあります。
婦人科の受診を:上のようなサインがあるときや、日常生活に支障が出るほど痛みが強いとき、市販薬が効きにくいときは、一度婦人科で相談しましょう。原因の病気があれば、その治療が第一です。
鍼灸の役割:鍼灸は、機能性の生理痛の緩和や、婦人科治療と併用しての体調・冷え・自律神経のケアとして役立ちます。
鍼とお灸はなぜ効く?
しくみ:下腹部や腰・足のツボへの鍼やお灸は、骨盤内の血流を促し、子宮まわりの緊張をやわらげます。また、鍼灸の心地よい刺激は自律神経のバランスを整え、副交感神経を優位にしてリラックスを助けます。痛みそのものに対しても「ゲートコントロール説」=太い神経への刺激が脊髄で痛みの信号を抑えるしくみが働きます。
お灸とセルフケア:とくにお灸は「温めて巡らせる」ことが得意で、冷えタイプの生理痛と相性が良いです。下腹部や仙骨、足首の内側を温めましょう。ふだんから体を冷やさない、湯船につかる、薄着を避ける、適度に体を動かすことも、毎月の痛みをやわらげます。
東洋医学でみる生理痛「痛経」
病態:東洋医学では生理痛を「痛経(つうけい)」と呼び、いくつかのタイプ(証)に分けて考えます。気滞血瘀=ストレスなどで気血が滞り、経前〜経初に張るような痛みとかたまり。寒凝血瘀=冷えで血が滞り、キューッと痛んで温めると楽になる。気血両虚=経後にシクシク鈍く痛み、疲れやすい。「通じざれば則ち痛む(不通則痛)」「養われざれば則ち痛む(不栄則痛)」で説明します。
治法:タイプに応じて、行気活血(気血を巡らす)・温経散寒(温めて冷えを散らす)・補気養血(気血を補う)を使い分けます。
選穴:三陰交(肝・脾・腎が交わる婦人科の要穴)、血海(血の巡りを整える)、関元・気海(下腹部を温める)、地機(脾経の郄穴・急な痛みに)、太衝(肝経で気を巡らす)、次髎(仙骨部)。冷えタイプにはお灸がとくに有効です。


足の三陰交・血海、下腹部の関元・気海に鍼とお灸をするよー。冷えタイプだから、しっかり温めようねー。おうちでも三陰交にお灸や足首の保温をしてみてー。
一か月後・・・
次の生理の後、ツキ美さんはやわらかい表情で報告してくれた。

先生、今回は痛みが軽くて、鎮痛薬が1回で済みました!
お灸で温めると、こんなに違うんですね。

よかったねー!生理痛は、ふだんの冷え対策と巡りのケアで、少しずつ楽になっていくことが多いんだ。生理の1週間くらい前から温めておくのもおすすめだよー。無理せずいこうねー。
生理痛(月経困難症)のまとめ
生理痛(月経困難症)は、月経に伴う下腹部痛や腰痛などのつらい症状です。若い女性に多い機能性はプロスタグランジンによる子宮の収縮が主な原因で、冷えで悪化し温めると楽になることがよくあります。痛みが年々強くなる・月経時以外も痛む・経血量が多いなどのサインがあるときは、子宮内膜症など器質性の病気を考え、婦人科の受診をおすすめします。
鍼灸は、骨盤内の血流を促し、自律神経を整えて、機能性の生理痛をやわらげるのが得意です。東洋医学では「痛経」ととらえ、気滞血瘀・寒凝血瘀・気血両虚などの証に応じて、三陰交・血海・関元・気海などで行気活血・温経散寒・補気養血。あわせて、日ごろの冷え対策と温活が毎月のつらさを軽くするカギです。西洋と東洋の両面から、生理のたびのつらさにやさしく寄りそっていきましょう。
参考文献
本記事は、はり師・きゅう師国家試験の指定教科書をもとに、鍼灸師である運営者が作成しています。
- 公益社団法人東洋療法学校協会 編『生理学 第3版』医道の日本社
- 公益社団法人東洋療法学校協会 編『臨床医学各論 第2版』医道の日本社
- 公益社団法人東洋療法学校協会 編『新版 東洋医学概論』医道の日本社
- 公益社団法人東洋療法学校協会 編『新版 経絡経穴概論 第2版』医道の日本社
- 公益社団法人東洋療法学校協会 編『新版 東洋医学臨床論(はりきゅう編)』医道の日本社
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状が続く場合や強い痛み・しびれがある場合は、医療機関にご相談ください。


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