「先生、夕方になると頭が“ギューッ”と締めつけられて、首も肩もカチカチなんです……」デスクワークの合間に駆け込んできたのは、ズキ美さん。痛み止めを飲んでもすっきりせず、パソコン作業が続くとまた頭が重くなる。ズキンズキンではなく、鉢巻きで締められるような鈍い痛み。この“締めつけ頭痛”の正体は?

先生、頭痛持ちなんですけど、頭を締めつけられる感じなんです。
肩こりもひどくて…これって関係あるんですか?

大アリだよー。「締めつけられる」「両側」「肩こりと一緒」――それは緊張型頭痛のいちばん多いパターンだねー。首や肩の筋肉のこりが引き金になるんだ。

念のため聞くね。ズキンズキンと脈打つ感じ?体を動かすと悪化する?光がまぶしくて吐き気がする?

脈打つ感じではないです。動いても特に悪くはならないし、吐き気もないです。
ただ重くて、ぼーっとする感じ。

うんうん、拍動性じゃない・動作で悪化しない・吐き気なし。これは片頭痛とは違って緊張型頭痛らしい特徴だねー。首の後ろをさわらせてー。


後頭部と首のつけ根、ここを押すよー。(ぐぐっ)どうかな?

アイタタ…!そこ押されると、頭の後ろまでズーンと響きます!
まさにこの痛みです!

はい、後頭下筋群のトリガーポイントだねー。ここが頭の後ろに痛みを飛ばすんだ。僧帽筋の上のほうもガチガチ。原因がはっきりしたよ!
緊張型頭痛って何が起きてるの?
正体:緊張型頭痛は最も多いタイプの頭痛で、頭〜首・肩の筋肉の緊張、姿勢、精神的ストレス、眼精疲労などが重なって起こります。「鉢巻きで締めつけられるような」両側性の鈍い痛みで、脈打つ感じ(拍動性)ではなく、階段の上り下りなど日常動作で悪化しないのが特徴です。
関わる筋肉:僧帽筋の上部、胸鎖乳突筋、後頭下筋群、側頭筋、頭板状筋など。とくに後頭下筋群のトリガーポイントは、後頭部へ痛みを放散させます。長時間のデスクワークやスマホ姿勢(頭が前に出る姿勢)で悪化しやすいです。
頭痛をつくる筋肉たち(起始・停止・作用・支配神経)
僧帽筋(上部):起始=外後頭隆起・項靱帯・棘突起/停止=鎖骨の外側1/3・肩峰・肩甲棘/作用=肩甲骨の挙上・上方回旋・内転/支配神経=副神経(第11脳神経)とC3・C4。肩こりの主役で頭痛にも直結します。
後頭下筋群(大後頭直筋・小後頭直筋・上頭斜筋・下頭斜筋):後頭骨〜第1・第2頸椎に付着/作用=頭部の細かな伸展・回旋(頭の位置の微調整)/支配神経=後頭下神経(C1)。眼精疲労や緊張型頭痛と深く関わります。
側頭筋:起始=側頭窩/停止=下顎骨の筋突起/作用=下顎の挙上(噛みしめ)/支配神経=三叉神経の下顎枝。食いしばりのクセがあるとこめかみの頭痛につながります。
片頭痛との見分け・注意サイン
緊張型頭痛:両側性・締めつけ感・非拍動性・日常動作で悪化しない・吐き気や強い光過敏はない。首肩のこりを伴う。
片頭痛:片側が多い・ズキンズキンと拍動性・体を動かすと悪化・吐き気や光/音の過敏を伴う。対処の方向性が違うので見分けが大切です。
危険なサイン:「今までにない突然の激しい頭痛」「手足のまひ・ろれつが回らない・高熱・意識がおかしい」を伴う頭痛は、くも膜下出血や髄膜炎など重い病気の可能性があり、すぐ医療機関の受診が必要です。
鍼とお灸はなぜ効く?
鍼のしくみ:僧帽筋・後頭下筋群・側頭筋のトリガーポイントに鍼をすると、こり固まった筋がゆるみ血流が回復して、頭に放散する痛みがやわらぎます。鎮痛は「ゲートコントロール説」=太い神経への刺激が脊髄で痛みの信号を抑えます。さらに、心地よい刺激は自律神経を整え、副交感神経が優位になってリラックスにもつながります。
お灸とセルフケア:首肩の温めで血流を促進。あわせて、こまめに姿勢を変える・1時間ごとに肩を回す・画面の高さを上げて頭が前に出ないようにする・目を休める、といったケアが再発予防に効きます。
東洋医学でみる緊張型頭痛
病態:頭は「諸陽の会」で、多くの陽経が集まる場所です。緊張型頭痛はストレスや緊張で肝の気が高ぶる「肝陽上亢」や、気の巡りの滞り「肝鬱気滞」、経絡の不通が多いと考えます。痛む部位で経絡を見分けます(後頭部=太陽経/側頭部=少陽経/前頭部=陽明経/頭頂=厥陰・督脈)。
治法:平肝潜陽・疏肝理気・通絡止痛(高ぶった肝を鎮め、気を巡らせ、経絡を通して痛みを止める)。
選穴:風池(胆経・後頭部)、天柱(膀胱経)、百会(督脈・頭頂)、太陽(奇穴・こめかみ)、合谷(大腸経の原穴・「面口は合谷に収む」で頭顔面の要穴)、太衝(肝経の原穴・高ぶった肝陽を下ろす)。合谷と太衝を合わせた「四関」でリラックスを促します。


風池・天柱と、僧帽筋のこりに鍼をするよー。手の合谷、足の太衝もね。じんわり温めてリラックスしていこうねー。
一週間後・・・
一週間後、ズキ美さんの表情はすっかり明るくなっていた。

先生、夕方の締めつけがずいぶん軽くなりました!
肩こりが頭痛につながっていたなんて、驚きです。

よかったねー!緊張型頭痛は姿勢とストレス、目の疲れとも仲良し。こまめに肩を回して、頑張りすぎたら深呼吸だよー。痛み止めに頼りすぎる前に、体をゆるめてあげてね。
緊張型頭痛のまとめ
緊張型頭痛は、頭〜首・肩の筋緊張や姿勢、ストレス、眼精疲労などが重なって起こる最も多い頭痛です。両側性・締めつけ感・非拍動性で、日常動作で悪化しないのが特徴。僧帽筋上部や後頭下筋群のトリガーポイントが頭に痛みを放散させます。片頭痛(片側・拍動性・動作で悪化・吐き気)との見分けが大切で、突然の激しい頭痛や神経症状を伴うときはすぐ医療機関へ。
施術では、こり固まった筋のトリガーポイントへの鍼で緊張をゆるめ(ゲートコントロール説)、自律神経を整えてリラックスを促します。東洋医学では「肝陽上亢・肝鬱気滞」ととらえ、風池・天柱・百会・合谷・太衝などで平肝・疏肝・通絡。あわせて姿勢・ストレス・目の疲れのケアが再発予防のカギです。西洋と東洋の両面から、つらい頭痛を根本からゆるめていきましょう。
参考文献
本記事は、はり師・きゅう師国家試験の指定教科書をもとに、鍼灸師である運営者が作成しています。
- 公益社団法人東洋療法学校協会 編『解剖学 第2版』医道の日本社
- 公益社団法人東洋療法学校協会 編『生理学 第3版』医道の日本社
- 公益社団法人東洋療法学校協会 編『新版 経絡経穴概論 第2版』医道の日本社
- 公益社団法人東洋療法学校協会 編『新版 東洋医学臨床論(はりきゅう編)』医道の日本社
- 公益社団法人東洋療法学校協会 編『はりきゅう理論 第3版』医道の日本社
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状が続く場合や強い痛み・しびれがある場合は、医療機関にご相談ください。


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