片方だけ笑えない!?梅雨に忍び寄る顔のマヒ 〜表情筋(顔面筋)刺鍼法〜

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じめじめとした梅雨の晴れ間。事務職の笑子(えみこ)さんが、いつもの明るい笑顔を……片側だけこわばらせて来院しました。「先生、今朝、歯みがきしてたら口から水がこぼれて……。鏡を見たら、右の頬がうまく動かないんです」。うがいもしづらい、まばたきもぎこちない――果たして、笑子さんの笑顔は元どおりに戻るのでしょうか?

笑子さん
笑子さん

先生、朝起きたら右の顔がうまく動かなくて……。
おでこにシワも寄らないし、目もしっかり閉じられないんです。

アフロ先生
アフロ先生

なるほど……。痛みはあるかな?
とくに耳の後ろのあたり。

笑子さん
笑子さん

言われてみれば、2〜3日前から耳の後ろがズキッと……。
あと最近、寝るとき扇風機を顔に当てっぱなしで寝ちゃってて。

アフロ先生
アフロ先生

(耳の後ろの痛み、顔への冷たい風、片側だけ……。
梅雨どきはコレが増えるんだよねー。)

梅雨に増える?顔面神経マヒ

病態:末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺など)は、顔面神経がむくみ・炎症で圧迫され、片側の表情筋が動かしにくくなる状態です。

梅雨との関係:気温差や冷房・扇風機の風、疲労、ウイルスの再活性化などが引き金になりやすく、ジメジメした時期に相談が増えがちです。

特徴:片側だけ「額にシワが寄らない・目が閉じにくい・口角が下がる」。とくに額のシワが消えるのは、脳が原因の中枢性と区別する大事なサインです。

アフロ先生
アフロ先生

ちょっと表情を作ってみよっか。
眉を上げて、ギュッと目を閉じて、最後に口をすぼめて「ウー」。

笑子さん
笑子さん

ん〜……右のおでこだけシワが寄らない……!
目も閉じきれないし、口も右だけうまくすぼめられません!

アフロ先生
アフロ先生

うん、左右差がはっきり出てるね。
表情を作ってもらうと、どの表情筋が弱っているか触ってわかるんだ。まずは顔の筋肉のおさらいからいこう!

【ここに表情筋の位置(前頭筋・眼輪筋・口輪筋)の図を入れる】

顔の表情をつくる3つの筋肉

前頭筋(ぜんとうきん):起始=冠状縫合の高さで帽状腱膜/停止=前頭部の皮膚・眼輪筋の一部/支配神経=顔面神経(側頭枝)/作用=額にシワを作り、眉と上眼瞼を引き上げて「驚きの表情」をつくる。

眼輪筋(がんりんきん):眼窩部・眼瞼部・涙嚢部の3部からなる、目を取り巻く輪状の筋/支配神経=顔面神経(側頭枝・頬骨枝)/作用=眼瞼を閉じる、まばたき(瞬目反射)。

口輪筋(こうりんきん):見た目は輪状筋だが、じつは4部から構成される/支配神経=顔面神経(下部頬骨枝・頬筋枝・下顎枝)/作用=口唇を閉じる・とがらせる。

ポイント:3つともすべて顔面神経の支配。だから顔面神経がやられると、これらが一気に動かしにくくなるんです。

表情筋への刺鍼 ―どこに、どう打つ?

刺法の原則:表情筋は皮膚のすぐ下にある薄い「皮筋」。そのため原則は横刺(水平刺)で、筋に沿って鍼を寝かせ、浅く刺します。

前頭筋:眉毛中央の上 約2cm=経穴の「陽白(ようはく)」へ、上から下へ水平刺。

眼輪筋:瞳孔の下方 約2cm=経穴の「四白(しはく)」へ、下から上へ水平刺。

口輪筋:左右の上唇上部・下唇下部に沿って水平刺。

使用鍼:顔は比較的細い鍼(16号・18号)を選ぶとよい。鍼通電を行う場合は20号。ふつうは仰向け(背臥位)で行います。

東洋医学では「風」と「湿」に注目

病態:顔のマヒは、外からの「風邪(ふうじゃ)」が経絡に入り込み、気血の巡りが滞って起こると考えます。梅雨どきは「湿邪(しつじゃ)」も重なりやすい季節です。

代表的な選穴:顔・口のトラブルといえば「面口は合谷に収む」――手の合谷(ごうこく)は顔と口の万能ツボ。局所では翳風(えいふう)・地倉(ちそう)・頬車(きょうしゃ)などを使います。

治法:風を散らし(疏風)、経絡の通りをよくする(通絡)。刺鍼部位の陽白は胆経、四白は胃経の経穴でもあり、局所治療を兼ねられます。

アフロ先生
アフロ先生

じゃあ仰向けで楽にしてね。
チクッと刺すというより、皮膚にそっと寝かせる感じだから安心して。

【ここに顔への施術写真を入れる】
笑子さん
笑子さん

細い鍼なんですね……思ったより全然平気です!
顔に鍼って、もっと怖いものかと……。

アフロ先生
アフロ先生

顔は血管が多くて内出血しやすいから、抜くときは押さえながらゆっくり、が鉄則なんだ。
マヒには電気を流す「鍼通電」も使っていくよ。

顔への鍼で気をつけること

出血対策:顔面部は刺鍼に伴い出血しやすい部位。抜鍼時は押し手の圧をやや強めにし、刺鍼部を圧迫しながら鍼をゆっくり抜きます。

禁忌:高熱や感染症など全身状態が悪いとき、刺鍼部の皮膚に炎症などがあるときは行いません。

適応:主に末梢性顔面神経麻痺・顔面痙攣。麻痺では、筋収縮が生じやすい「電気運動点(顔面神経の走行と一致することが多い)」を刺鍼部位に用いることがよくあります。

一週間後・・・

数回の施術を重ねた、梅雨明けまぢかのある日。診察室に入ってきた笑子さんの表情が、来院初日とは見違えていました。

笑子さん
笑子さん

先生、見てください!
右のおでこにシワが……寄るんです!水も口からこぼれなくなりました!

アフロ先生
アフロ先生

おおー、いい笑顔!
左右そろってきたねー。両方そろうと、やっぱり笑顔は最高だ!

アフロ先生
アフロ先生

顔のマヒは早期のケアが大事。よく早めに来てくれたね。
あと……寝るときの扇風機の直当ては、そろそろ卒業しよっか。

笑子さん
笑子さん

はい……!あきらめなくて、本当によかったです。
今年の梅雨は、先生のおかげで笑って乗り切れそうです(笑)。

表情筋(顔面筋)刺鍼法のまとめ

最後に、今回のポイントをふり返っておきましょう。表情筋(前頭筋・眼輪筋・口輪筋)は、いずれも顔面神経に支配される薄い皮筋です。だからこそ顔面神経がダメージを受けると、片側の表情が一気に動かしにくくなります。

刺鍼は、薄い皮筋に沿わせる「横刺(水平刺)」が原則。前頭筋は陽白、眼輪筋は四白などをねらい、顔には細い鍼を選びます。適応は末梢性顔面神経麻痺や顔面痙攣で、麻痺には鍼通電や電気運動点もよく用いられます。

梅雨どきは、冷たい風・気温差・疲労などで顔面神経麻痺の相談が増えやすい季節。「片側だけ額のシワが寄らない」のは末梢性のサインです。顔は出血しやすいので抜鍼時の圧迫はていねいに、高熱・感染症・皮膚の炎症があるときは行いません。「なんだか顔が動かしにくいな」と思ったら、迷わず早めの受診を。早期のケアが、あなたの笑顔を守ります。

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