以前、肩こりと後頭部痛で来院していたデスクワーカーのコリ男さん。今回は「首から肩、腕の外側を通って指先まで、ジンジンとしびれるようになってきた」と少し不安そうな表情で再来院しました。肩や腕をほぐしてもらっても、首から先に走るあのしびれがどうにも取りきれない…。果たして原因はどこにあって、鍼でこのしびれは和らぐのか!?

先生、今度は首から腕にかけてジンジンしびれるんです…
ひどいと指先まで響いて、字を書く力も入りにくくて

それは気になるねぇ
腕の外側から指先…首の神経の出口が関係してそうだ

ちょっと首の横を触らせてね
のどぼとけと同じ高さ…この出っぱりが第6頸椎の横突起だよ

あっ、そこ押されると…
腕のほうにビーンと響きます!

やっぱり
首の神経(頸神経)が悲鳴をあげてるね

頸神経…?
首の神経って、そんなにたくさんあるんですか?

いい質問だね!
首の神経のしくみを、ちょっとだけおさらいしよう
頸神経の解剖
本数:頸神経は8本(C1〜C8)ある。第1頸神経(C1)は後頭下神経とよばれ、運動神経線維のみで知覚神経線維はない。
枝の行方:第2・3・4頸神経の前枝は頸神経叢をつくり、第5・6・7・8頸神経の前枝は腕神経叢をつくる。腕や指のしびれは、この腕神経叢につながる神経が関係する。
走り方:頸神経は頸髄から椎間孔を出た後、頸椎横突起の脊髄神経溝(横突起の前結節と後結節との間)を走り、横突起の尖端にいたる。この「横突起の尖端」が刺鍼の目印になる。
出る場所:第2頸神経は第1頸椎の下から、第3頸神経は第2頸椎の下から…と、上の椎骨の下を通って出る(第8頸神経は第7頸椎の下から出る)。
(図1 頸神経の解剖〔C1〜C8、頸神経叢・腕神経叢の枝〕の画像 ※画像準備中)

へぇ〜、首の骨の出っぱりが目印なんですね
そこに鍼を打つんですか?

そうそう
触れやすい第6頸椎を手がかりに、場所を決めていくんだよ
体表面上の刺鍼部位
狙う範囲:鍼でアプローチできるのは第2〜第6頸神経まで。それぞれの刺鍼部位は、横突起の尖端を体表から探して決める。
基準線(AB線)を引く:まず乳様突起下端の先端(A点)と第6頸椎横突起の尖端(B点)を結ぶ。第6頸椎の横突起は頸椎の横突起の中で最も突出して触れやすく、甲状軟骨と同じ高さにある。
各横突起の求め方:A点より1.5cm下方で、AB線より0.5cm前方に第2頸椎横突起の尖端がある。これを基準に、AB線上で1.5cmずつ下方に第3・第4・第5・第6頸椎横突起の尖端を求める。注意深く触診すると、それぞれの尖端を触知できる。
(図2 頸神経の刺鍼部位〔A点=乳様突起下端/B点=第6頸椎横突起尖端、C2〜C6の取り方〕の画像 ※画像準備中)

首って太い血管も通ってますよね?
鍼って…痛くないですか?こわいなぁ

大丈夫、安全に配慮して打つから安心して
どんな手順か説明するね
刺鍼操作と使用鍼
使用鍼:特別な指定はないが、18号あるいは20号鍼(やや太め)を用いる。
体位:通常は背臥位で枕をはずし、首を回旋して行う。狙う側の横突起を触れやすくするのがコツ。
刺入:刺鍼部位に鍼を垂直に刺入し、刺鍼深度は約2.5〜3.0cmで横突起の尖端にぶつける。その時に、各神経の支配領域(首〜上肢)に得気が得られればよい。
刺鍼時の注意点と禁忌
一般的注意点:ズキッとした疼痛様の感覚が出る場合は、神経そのものに当たっているサインなので刺し直す。また第7頸神経・第8頸神経への刺鍼部位は胸郭出口の付近にあるため、刺鍼の方向によっては気胸を起こすおそれがある。そのため鍼で狙うのは第2〜第6頸神経までにとどめ、第7・第8は避ける。雀啄術などは慎む。
禁忌:鍼治療の一般的禁忌と同じく、高熱や感染症などの状態にあるときは行わない。また刺鍼部位の皮膚に炎症所見などがある場合は注意して行う。
頸神経刺鍼の適応
頸部、あるいは頸部から上肢にかけての痛み・痺れに応用する。首の神経の出口(横突起の尖端)をピンポイントで刺激することで、その神経が支配する首〜腕の症状にアプローチできる。まさにコリ男さんのようなケースにぴったりだ。
説明を聞いて少し安心したコリ男さん。アフロ先生は触れやすい第6頸椎横突起を手がかりにAB線を引き、第2〜第6の横突起尖端をていねいに確かめながら、背臥位・首を回旋した姿勢で慎重に鍼を進めていきます。気胸の心配がある第7・第8はしっかり避けて――。
(頸神経刺鍼の施術風景の写真 ※画像準備中)
一週間後・・・

先生、あれから指先までのジンジンがだいぶ軽くなりました!
字を書くのもラクになって…!

よかった!
あとは、こまめに休憩して首を休めて、長時間の前かがみに気をつけよう

はい!
アフロ先生、ありがとうございます(^^)
頸神経刺鍼法のまとめ
頸神経は8本(C1〜C8)。C1は後頭下神経(運動性)、C2〜C4前枝は頸神経叢、C5〜C8前枝は腕神経叢をつくる。各頸神経は椎間孔→横突起の脊髄神経溝→横突起の尖端へと走る。
鍼で狙うのは第2〜第6頸神経。第6頸椎横突起(最も触れやすい・甲状軟骨の高さ)と乳様突起下端(A点)を結ぶAB線を基準に、A点1.5cm下・AB線0.5cm前のC2尖端から、AB線上を1.5cmずつ下げてC3〜C6を求める。
18〜20号鍼、背臥位で枕なし・首を回旋。横突起尖端へ垂直に約2.5〜3.0cm刺入し、支配領域に得気を得る。第7・第8頸神経は胸郭出口に近く気胸のおそれがあるため避ける。雀啄は慎み、高熱・感染症・刺鍼部の炎症は禁忌。
適応は頸部〜上肢の痛み・痺れ。神経の通り道を地図にして、安全第一でアプローチしよう。


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