このページは関節痛の鑑別、つまり「目の前の関節痛がどの疾患によるものか」を切り分ける手順を扱います(東洋医学的な弁証と配穴は姉妹ページ「関節痛の東洋医学的治療」が担当します)。鑑別の軸は経過(急性か慢性か)×罹患関節数(単関節か多関節か)の2つで、この4象限にあてはめるだけで候補疾患がぐっと絞れます。あわせて関節炎と関節周囲炎の区別、そして施術を中止して医療機関に送るべきレッドフラッグを押さえましょう。
| 読み方 | かんせつつうのかんべつ |
|---|---|
| 定義 | 関節およびその周囲に生じた疼痛について、原因疾患を絞り込むための臨床的な切り分け |
| 鑑別の2軸 | 経過(急性/慢性)×罹患関節数(単関節/多関節) |
| 急性×単関節 | 外傷・痛風・化膿性関節炎 |
| 急性×多関節 | ウイルス・膠原病 |
| 慢性×単関節 | 変形性関節症 |
| 慢性×多関節 | 関節リウマチ・SLE |
| 関節炎の特徴 | 腫れ・熱感が強い/赤く腫れて熱をもつ/安静時も痛い(関節そのものの炎症) |
| 関節周囲炎の特徴 | 腫れ・熱感は少なめ(赤みや熱は軽度またはほとんどない)/動かすと痛い(関節の周りの組織の炎症) |
| レッドフラッグ | 強い腫れ・発熱・激しい痛み・著しい運動制限・外傷歴。化膿性関節炎、骨折、悪性腫瘍の可能性 |
| 禁忌・注意 | レッドフラッグがあれば放置すると命に関わることもあり、早めの受診(医療機関への紹介)が必要 |
| 国試での狙われ方 | 4象限と代表疾患の対応、関節炎と関節周囲炎の鑑別点(安静時痛か運動時痛か)、リウマチの朝のこわばり・左右対称・MCP/PIP、痛風の母趾・高尿酸血症、SLEの蝶形紅斑、ベーチェット病の4主症状 |
関節痛を訴える患者を前にして最初に行うのは、痛みの発生源が関節そのものか、関節の周りの組織かの切り分けです。ポイントは症状の特徴と痛みが出るタイミングです。
「安静時痛があるかどうか」が最も実用的な分かれ目です。安静時痛があれば炎症が関節内で起きている可能性が高く、局所の炎症所見(発赤・熱感・腫脹)も強く出ます。
| 項目 | 関節炎 | 関節周囲炎 |
|---|---|---|
| 炎症の場所 | 関節そのもの | 関節の周りの組織 |
| 腫れ・熱感 | 強い(赤く腫れて熱をもつことも) | 少なめ・軽度またはほとんどない |
| 痛みのタイミング | 安静時も痛い | 動かすと痛い |
鑑別で最優先すべきは「鍼灸で診てよいのか、すぐ医療機関へ送るべきか」の判断です。次の3疾患は見逃してはいけません。
これらを疑わせる危険なサイン(レッドフラッグ)は、強い腫れ・発熱・激しい痛み・著しい運動制限・外傷歴の5つです。放置すると命に関わることもあるため、違和感があればすぐに医療機関へ。早めの受診が大切です。
| 危険なサイン | 想定される病態 |
|---|---|
| 強い腫れ | 化膿性関節炎・骨折・腫瘍 |
| 発熱 | 化膿性関節炎(感染) |
| 激しい痛み | 化膿性関節炎・骨折・痛風発作 |
| 著しい運動制限 | 化膿性関節炎・骨折 |
| 外傷歴 | 骨折・外傷性関節痛 |
関節痛の鑑別はパターンで考えると簡単です。縦軸に急性/慢性、横軸に単関節/多関節をとった4象限に落とし込みます。この表がこのページの中心であり、国試でも最頻出の整理法です。
| 単関節 | 多関節 | |
|---|---|---|
| 急性 | 外傷・痛風・化膿性 | ウイルス・膠原病 |
| 慢性 | 変形性関節症 | 関節リウマチ・SLE |
慢性に経過する関節痛の二大疾患。多関節・左右対称なら関節リウマチ、単関節・荷重関節なら変形性関節症が基本です。
関節リウマチの特徴
変形性関節症の特徴
| 鑑別点 | 関節リウマチ | 変形性関節症 |
|---|---|---|
| 関節数 | 多関節 | 単関節(4象限では慢性×単関節) |
| 左右差 | 左右対称 | 左右差あり(荷重側に強い) |
| 侵される関節 | PIP関節・MCP関節 | ひざ関節・股関節・指の関節 |
| 特徴的症状 | 朝のこわばり | 動き始めが痛い・動作時痛 |
| 炎症の程度 | 滑膜の炎症による慢性的な炎症 | 比較的軽い |
| 予後 | 進行すると関節破壊・変形が残る | 軟骨のすり減りが進行 |
急性発症の関節痛は、単関節なら外傷・痛風・化膿性関節炎を、多関節ならウイルス・膠原病を考えます。
痛風発作:突然の激痛。足の親指に多い。高尿酸血症が背景にあり、関節内に尿酸結晶の沈着が起こる。局所は発赤・熱感・腫れ。くり返すと腎障害の原因になる。
感染による関節炎
外傷性関節痛のチェックポイント:まず受傷機転を確認し、圧痛・腫脹・可動域制限・内出血を診る。骨折に注意し、疑えば早めの受診を促します。
| 疾患 | 経過・関節数 | 特徴的所見 |
|---|---|---|
| 痛風 | 急性・単関節 | 足の親指に多い/突然の激痛/発赤・熱感・腫れ/高尿酸血症・尿酸結晶の沈着/反復で腎障害 |
| 化膿性関節炎 | 急性・単関節 | 激痛・発赤・熱感・運動制限/感染が関節に広がる重篤な炎症 |
| ウイルス性関節炎 | 急性・多関節 | 発熱・倦怠感・発疹 |
| 外傷性関節痛 | 急性・単関節 | 受傷機転あり/圧痛・腫脹・可動域制限・内出血/骨折に注意 |
多関節痛に関節以外の全身症状が加わるときは膠原病・自己免疫疾患を疑います。「関節の痛みだけじゃない」ことが鑑別の決め手です。
全身性エリテマトーデス(SLE):関節痛+全身症状。蝶形紅斑が特徴的で、発熱・倦怠感・息切れ・脱毛を伴う。自己免疫の病気で、自己抗体・血液検査で診断される。
ベーチェット病:全身にさまざまな症状があらわれる。口内炎・外陰部潰瘍・皮膚症状・眼症状の4つが主症状で、関節痛も生じる。眼症状では視力低下に注意。
| 疾患 | 関節症状 | 関節以外の症状 |
|---|---|---|
| 全身性エリテマトーデス(SLE) | 関節痛(慢性・多関節) | 蝶形紅斑・発熱・倦怠感・息切れ・脱毛/自己抗体・血液検査でわかる |
| ベーチェット病 | 関節痛 | 口内炎・外陰部潰瘍・皮膚症状・眼症状(視力低下に注意) |