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膝痛の鑑別・弁証(痺証)・国試ポイントしつつうのかんべつとちりょう

このページは膝の解剖ではなく、膝痛という主訴をどう鑑別し、どう治療方針を立てるかを扱います(解剖は「膝関節(屈伸の筋・終末回旋・靱帯)」のページが担当)。まず骨折・感染症・骨腫瘍などの重篤疾患を除外し、次に圧痛部位と動作から障害組織を推測、最後に東洋医学で不通則痛(行痺・痛痺・着痺・熱痺・血瘀)と不栄則痛(腎虚・気血不足)のどちらかを見極めます。

膝痛の鑑別と治療|膝痛の鑑別と治療 1
読み方しつつうのかんべつとちりょう
定義膝痛の原因(加齢による変性・スポーツの使い過ぎ・外傷・靱帯や半月板の損傷)を見極め、西洋医学的除外診断と東洋医学的弁証の両面から治療方針を決める考え方
まず除外する疾患骨折・感染症・骨腫瘍。激しい痛み/著しい腫れ/発熱/歩行困難/夜間痛・安静時痛は危険なサイン
主な整形外科的疾患変形性膝関節症、内側・外側半月板損傷、前十字靱帯損傷、側副靱帯損傷、ジャンパー膝、オスグッド病、腸脛靱帯炎、鵞足炎、骨粗鬆症、偽痛風
主な証(弁証)不通則痛=行痺・痛痺・着痺・熱痺・血瘀/不栄則痛=腎虚(腎陰虚・腎陽虚)・気血不足/傷筋(労損)
随伴症状・舌脈行痺=遊走性の痛み・悪寒発熱・舌の変化少ない・脈浮/痛痺=冷えで悪化し温めて軽減・脈緊/着痺=重だるい固定痛・雨天悪化・舌苔白膩・脈濡または滑/熱痺=発赤熱感腫脹・発熱多汗口渇・舌質紅・舌苔黄膩・脈数/血瘀=刺すような固定痛・夜間増悪・舌質紫暗・舌下静脈怒張・脈渋/腎虚=慢性の膝痛・脱力感・腰のだるさ・耳鳴り・難聴・夜間悪化
治法行痺=風邪を除き経絡の流れを整える/痛痺=寒邪を散らし温めて経絡を通す/着痺=湿邪を除き経絡を流す/熱痺=熱を冷まし湿や邪気を除く/血瘀=血行を促進し瘀血を除く/腎虚=病態に応じ腎陰・腎陽を補う/傷筋=経絡を通しながら気血を補い瘀血を除く
代表的な配穴本スライドには具体的な経穴名の記載なし(治法レベルのみ提示)
禁忌・注意(危険な兆候)持続する痛み・急激な悪化・発熱・著しい腫脹・夜間痛は速やかに専門医へ。手術が必要な病態(靱帯損傷・半月板損傷)や腫瘍・感染症は除外が必須
国試での狙われ方痺証の四分類(行・痛・着・熱)と症状/舌脈の対応、圧痛部位と疾患の対応(脛骨粗面=オスグッド病、膝外側=腸脛靱帯炎、膝蓋腱=ジャンパー膝)、徒手検査と対象疾患の組み合わせ、変形性膝関節症と偽痛風の鑑別

まず重篤な疾患を除外する(レッドフラッグ)

膝痛の診療は「鍼灸の適応か否か」の判断が最初です。スライドでは、次の危険なサインがあれば骨折・感染症・骨腫瘍などの可能性を除外することが重要とされています。

持続する痛みや急激な悪化は、速やかに専門医へ。高齢者では骨粗鬆症(軽微な転倒や負荷でも骨折することがある/特に閉経後の女性・高齢者は要注意)と、ピロリン酸カルシウム結晶が関節内に沈着して起こる偽痛風も念頭に置きます。

鑑別項目変形性膝関節症偽痛風
痛みの起こり方徐々に進行する痛み突然の激しい痛み
局所所見関節の変形や可動域制限発赤・熱感・腫れ
経過動作時痛(階段昇降など)急性発作を繰り返す
鑑別に用いる検査画像検査(X線・CT・MRI)関節液検査(結晶の確認)・血液検査(炎症反応など)
膝痛で最初に除外すべき危険なサイン
膝痛で最初に除外すべき危険なサイン

問診と圧痛部位から障害組織を推測する

膝痛の診察では、まず①痛む場所 ②受傷機転 ③症状の経過 ④発症状況(運動開始時・運動後/夜間・安静時)を詳しく確認します。痛む場所は前面・後面・内側・外側に分けて捉えます。

そのうえで圧痛部位+動作を組み合わせると、障害されている組織を絞り込めます。国試ではこの対応表がそのまま問われます。

圧痛部位考えられる疾患
内側関節裂隙変形性膝関節症、内側半月板損傷
外側関節裂隙外側半月板損傷
膝蓋腱ジャンパー膝
膝外側腸脛靱帯炎
脛骨粗面オスグッド病
圧痛部位から障害組織を推測する
圧痛部位から障害組織を推測する

主な整形外科的疾患とスポーツ障害

変形性膝関節症は関節軟骨のすり減りが原因で、中高年以降の女性に多く、加齢や体重増加、運動負荷が影響します。主な症状は運動開始時痛・階段昇降時痛、膝の腫れ、可動域制限、内反変形で、進行すると歩行や正座が難しくなります。チェックポイントは圧痛の有無・膝蓋跳動・関節可動域・歩行状態・X線画像の確認です。

使い過ぎ(オーバーユース)による障害は、痛む部位が特徴的です。

予防と対処は、ストレッチ・筋力強化・休息/アイシング・フォームの見直しです。

区分特徴主な検査・所見
半月板損傷外傷や加齢性変化で発生。引っ掛かり感、ロッキング(膝が動かない)、関節裂隙の圧痛、腫れや水がたまることもマックマレーテスト、アプレーテスト(半月板後根損傷)、グラスピングテスト、MRI・超音波
側副靱帯損傷(内側・外側)膝の不安定性内反ストレステスト(外側側副靱帯)、外反ストレステスト(内側側副靱帯)
前十字靱帯損傷膝崩れ(ガクッと抜ける)、不安定感、腫れや内出血が出ることもラックマンテスト、前方引き出しテスト
腸脛靱帯炎膝外側の痛みオーベルテスト
スポーツ・使い過ぎで起こりやすい膝の痛み
スポーツ・使い過ぎで起こりやすい膝の痛み

身体診察の進め方

視診・触診・関節可動域(ROM)・筋力・徒手検査を組み合わせて総合的に判断します。単独の検査所見で決めつけないことが原則です。

チェックポイントは、疼痛性跛行や側方動揺、膝の腫脹・熱感・圧痛、膝蓋跳動、関節可動域、筋力(大腿四頭筋・ハム)、各種徒手検査の結果です。膝そのものだけでなく股関節・大腿部・腰部・足関節まで全身の状態を確認し、身体全体の動きを評価します。

視診・触診・ROM・筋力・徒手検査の組み合わせ
視診・触診・ROM・筋力・徒手検査の組み合わせ

東洋医学で考える膝痛 ― 不通則痛と不栄則痛

東洋医学では膝痛を両面から考えます。

治療は邪気を除く治療腎や気血を補う治療を病態に応じて使い分けます。

痛みの特徴随伴症状舌・脈治法
行痺痛む場所が移動する遊走性の痛み。屈伸しにくくなることも悪寒、発熱(初期に出やすい)舌の変化は少なく、脈は浮きやすい風邪を除き、経絡の流れを整える
痛痺寒邪による強い固定痛。冷えると悪化し温めると軽減。屈伸制限が起こりやすい冷えを伴う舌苔の変化は少ない、脈は緊になりやすい寒邪を散らし、温めながら経絡の流れを整える
着痺重だるい痛み、固定性の痛み、関節の動かしにくさ。雨の日・湿気が多いと悪化身体の重だるさ舌苔は白膩、脈は濡または滑湿邪を除き、経絡の流れを改善する
熱痺熱感・発赤・腫脹を伴うズキズキする強い痛み。寒冷刺激で軽減しやすい発熱、多汗、口渇舌質は紅、舌苔は黄膩、脈は数になりやすい熱を冷まし、湿や邪気を除く
血瘀刺すような鋭い痛み。場所が固定しやすく、夜間に悪化しやすい転倒・打撲などの外傷が誘因舌質は紫暗、舌下静脈は怒張しやすい、脈は渋になりやすい血行を促進し、瘀血を除く
腎虚慢性的な膝痛、脱力感(力が入りにくい)。夜間の症状が悪化しやすい腰のだるさ、耳鳴り、難聴。陰虚タイプ=ほてり・盗汗・口渇/陽虚タイプ=冷え・むくみ・疲れやすい病態に応じて腎陰や腎陽を補う
傷筋(労損)繰り返しの負担による痛み。気血不足では鈍痛やだるさ、血瘀では固定性の刺痛と強い夜間痛疲れやすい。スポーツや労働・作業で膝や周囲組織に負担が繰り返しかかる舌質は紫暗になりやすい、舌下静脈は怒張しやすい、脈は渋になりやすい経絡を通しながら気血を補い、瘀血を除く
不通則痛と不栄則痛の両面から考える
不通則痛と不栄則痛の両面から考える

治療方針の立て方と生活指導

最終的な判断は西洋医学で除外し、東洋医学で証を判断するという二段構えです。

生活指導は証ごとに要点が異なります。

西洋医学で除外し、東洋医学で証を判断する
西洋医学で除外し、東洋医学で証を判断する
国試ポイント
① 膝痛はまず重篤疾患の除外から。夜間痛・安静時痛・発熱・著しい腫脹・歩行困難は骨折/感染症/骨腫瘍を疑うレッドフラッグ。
② 圧痛部位と疾患の対応は頻出。脛骨粗面=オスグッド病、膝外側=腸脛靱帯炎、膝蓋腱=ジャンパー膝、内側関節裂隙=変形性膝関節症・内側半月板損傷。
③ 徒手検査の対象を混同しない。マックマレー/グラスピング=半月板損傷、アプレー=半月板後根損傷、オーベル=腸脛靱帯炎、ラックマン・前方引き出し=前十字靱帯損傷。内反ストレステストは外側側副靱帯、外反ストレステストは内側側副靱帯。
④ 痺証の四分類は舌脈で覚える。行痺=遊走痛・脈浮、痛痺=冷えで悪化・脈緊、着痺=重だるい固定痛・舌苔白膩・脈濡または滑、熱痺=発赤熱感・舌質紅・舌苔黄膩・脈数。
⑤ 血瘀は刺すような固定痛+夜間増悪+舌質紫暗・舌下静脈怒張・脈渋。腎虚は慢性膝痛+脱力感+腰のだるさ+耳鳴り・難聴で、陰虚(ほてり・盗汗・口渇)と陽虚(冷え・むくみ・疲れやすい)を分ける。
⑥ 変形性膝関節症は中高年以降の女性に多く「徐々に進行・動作時痛・変形と可動域制限」、偽痛風は「突然の激しい痛み・発赤熱感腫れ・急性発作の反復」。この対比が鑑別の引っかけどころ。
📖 膝痛の鑑別と治療をスライドで学ぶ(国試辞書) 図解スライドでサクッと復習