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関節痛の東洋医学的治療 — 痺証(行痺・痛痺・着痺・熱痺)の弁証と鍼灸治療の国試ポイントかんせつつうのとうよういがくてきちりょう

このページは関節痛を東洋医学的にどう捉え、どう治療するか(弁証と鍼灸の組み立て)に絞って解説します。関節痛の東洋医学的な考え方は大きく2つで、外邪や気血の滞りで通じないために痛む「不通則痛」と、気血が不足して関節を養えないために痛む「不栄則痛」に分けられます。実証は風・寒・湿・熱の邪による行痺・痛痺・着痺・熱痺、虚証は気血両虚・肝腎精血不足が代表で、鍼灸は局所穴・循経穴・証に応じた経穴を組み合わせて局所と全体の両方から整えます。

関節痛の東洋医学的治療|関節痛の東洋医学的治療 1
読み方かんせつつうのとうよういがくてきちりょう
東洋医学的な痛みの機序不通則痛(外邪・気血の滞りで通じない)/不栄則痛(気血不足で関節を養えない)
実証(外邪)の4型行痺(風邪)・痛痺(寒邪)・着痺(湿邪)・熱痺(熱邪)
虚証の代表気血両虚(関節を養えず慢性的に痛む)/肝腎精血不足(腰や膝の慢性痛)
虚証を招く背景加齢・過労・久病
肝腎の役割肝は筋を養う/腎は骨を養う(精血を補う関係)
鍼灸治療の組み立て局所穴・循経穴・証に応じた経穴を選ぶ。筋・靱帯への刺激、温熱療法(灸)、可動域改善。行痺・痛痺・着痺・熱痺のいずれにも対応し、虚証にも対応する
生活指導急性期は安静/患部を冷やしすぎない/風を直接当てない/症状が落ち着いたら無理のない自動運動/暴飲暴食を避ける/十分な休養と睡眠
リスク管理(西洋医学的アセスメント)外傷歴・発症の仕方・経過・随伴症状を確認。感染症・骨折・脱臼・膠原病を除外し、必要時は専門医へ
レッドフラッグ発熱/著しい腫脹/骨折・外傷/激しい痛み
国試での狙われ方4つの痺証の性質(遊走性か固定痛か、寒で悪化か熱感か)の対応づけ、虚実の鑑別、レッドフラッグ

関節痛の東洋医学的な考え方 ― 不通則痛と不栄則痛

関節痛の東洋医学的治療は、まず痛みが「通じないから痛む」のか「養えないから痛む」のかを見分けるところから始まります。

「流れが悪い痛み」と「養えない痛み」を見分けることが、そのまま治療方針(邪を除くのか、気血を補うのか)の分岐点になります。

不通則痛(外邪・気血の滞り)と不栄則痛(気血不足)の2系統
不通則痛(外邪・気血の滞り)と不栄則痛(気血不足)の2系統

実証の4型 ― 行痺・痛痺・着痺・熱痺の鑑別表

外邪によるものは、どの邪が主体かで4つに分けます。邪の性質がそのまま痛み方の特徴になるのが最大のポイントです。

主な邪痛みの性質随伴・特徴悪化・軽減
行痺風邪遊走性の痛み(痛む場所が移動する)関節の屈伸がしにくい。初期は悪寒・発熱を伴うことも風の性質で痛みがあちこち移る
痛痺寒邪強い固定痛(同じ場所に留まり、痛みが動かない)こわばり、屈伸困難、動かすと痛い冷えると悪化、温めると軽減
着痺湿邪重だるい痛み・固定痛動かしにくい。湿邪が体にまとわりつき気血の巡りを停滞させる雨の日に悪化
熱痺熱邪強い痛み発赤・熱感・腫脹(腫れ)。発熱・口渇を伴うことも冷やすと楽
痛痺=寒さで悪化する強い固定痛。温めると軽減する
痛痺=寒さで悪化する強い固定痛。温めると軽減する

行痺・痛痺・着痺・熱痺をスライドで確認

4型はイメージで押さえると取り違えません。行痺=移動する/痛痺=動かない強い痛み/着痺=重だるい/熱痺=赤く熱く腫れると対応させて覚えます。

熱痺は発赤・熱感・腫脹がポイント。冷やすと楽になる
熱痺は発赤・熱感・腫脹がポイント。冷やすと楽になる

虚証の関節痛 ― 気血両虚と肝腎精血不足

外邪がはっきりしない慢性の関節痛では、養えないタイプ(不栄則痛)を考えます。

病態関節の状態随伴症状背景
気血両虚栄養や潤いが関節に届きにくく、関節が十分に養われない軟骨が弱る/関節の動きが悪い/痛みが慢性化しびれ、息切れ、倦怠感、自汗、顔色不良。疲れると悪化気血の不足
肝腎精血不足肝は筋を養い、腎は骨を養う。精血が不足して筋・骨・関節が滋養されない腰痛・膝痛など腰膝の慢性的な痛み、こわばり筋力低下、重だるく動きづらい加齢・過労・久病
肝は筋、腎は骨。精血が虚すると腰膝が弱る
肝は筋、腎は骨。精血が虚すると腰膝が弱る

関節痛の鍼灸治療 ― 局所穴・循経穴・証に応じた経穴

鍼灸治療は局所と全体の両方から整えるのが原則です。スライドでは配穴を次の3本立てで示しています。

これに温熱療法(灸)を組み合わせ、可動域改善を図ります。行痺・痛痺・着痺・熱痺のいずれにも対応でき、虚証にも対応できるのが鍼灸治療の特徴です。

※本スライドでは具体的な経穴名は挙げられていないため、ここでは選穴の考え方のみを示しています。

局所穴・循経穴・証に応じた経穴を選び、局所と全体の両方から整える
局所穴・循経穴・証に応じた経穴を選び、局所と全体の両方から整える

判断と対応・生活指導 ― 危険な疾患を見逃さない

治療の前に西洋医学的アセスメント東洋医学的アセスメントを両輪で行います。

区分確認すること
西洋医学的アセスメント外傷歴/発症の仕方/経過/随伴症状
除外すべき危険疾患感染症/骨折・脱臼/膠原病。必要時は専門医へ
レッドフラッグ発熱/著しい腫脹/骨折・外傷/激しい痛み
東洋医学的アセスメント(証を判断)行痺・痛痺・着痺・熱痺・虚証のいずれかを見極める
生活指導(守る)急性期は安静/患部を冷やしすぎない/風を直接当てない/暴飲暴食を避ける/十分な休養と睡眠
生活指導(動かす)症状が落ち着いたら無理のない自動運動を行う
急性期は守り、回復期は少しずつ動かす
急性期は守り、回復期は少しずつ動かす
国試ポイント
① 関節痛の東洋医学的機序は「不通則痛(外邪・気血の滞り=実証)」と「不栄則痛(気血不足で関節を養えない=虚証)」の2系統。
② 行痺=風邪で遊走性(痛む場所が移動)、痛痺=寒邪で強い固定痛(冷えで悪化・温めて軽減)、着痺=湿邪で重だるい固定痛(雨天で悪化)、熱痺=熱邪で発赤・熱感・腫脹(冷やすと楽)。
③ 「固定痛」は痛痺と着痺の両方にあるため、寒で悪化するのか重だるいのかで鑑別する(国試の引っかけポイント)。
④ 虚証の関節痛は、気血両虚(しびれ・息切れ・倦怠感・自汗・顔色不良、疲れると悪化)と肝腎精血不足(腰痛・膝痛・筋力低下、加齢・過労・久病が背景)。
⑤ 肝は筋を養い、腎は骨を養う。肝腎の精血が虚すると腰膝が弱る。
⑥ 鍼灸は局所穴・循経穴・証に応じた経穴を組み合わせ、温熱療法や可動域改善も併用する。
・ 発熱・著しい腫脹・骨折や外傷・激しい痛みはレッドフラッグ。感染症・骨折・脱臼・膠原病を除外し、必要時は専門医へ。
📖 関節痛の東洋医学的治療をスライドで学ぶ(国試辞書) 図解スライドでサクッと復習