外因とは、体の外から加わる刺激や環境の影響によって病気を引き起こす原因のことです。人体は体温・血圧・血糖値・水分量を一定に保つ恒常性(ホメオスタシス)を持っていますが、外からの刺激が強すぎたり長く続いたりすると防御力が追いつかず、バランスが崩れて発病します。外因は大きく①栄養素の不足・過剰(供給障害)②物理的因子 ③化学的因子 ④生物学的因子の4つに分類され、国家試験ではこの分類と、熱傷・凍傷の度数、ビタミン欠乏症名、減圧症のしくみなどが繰り返し問われます。
| 分野 | 病理学(病因論・外因) |
|---|---|
| 外因の定義 | 体外から加わる刺激・環境の影響により病気を引き起こす原因 |
| 外因の4分類 | ①栄養素の不足・過剰(供給障害)②物理的因子 ③化学的因子 ④生物学的因子 |
| 覚え方 | 食べ物・刺激・毒・ばい菌 |
| 物理的因子の内訳 | 機械的損傷・温度(高温/低温)・放射線・光線(紫外線)・音波・電気・気圧 |
| 化学的因子の代表 | 薬物中毒、農薬中毒、一酸化炭素中毒、アルコール中毒、重金属中毒(水銀・鉛)、大気汚染(PM2.5) |
| 生物学的因子の代表 | 細菌(肺炎・結核)・ウイルス(インフルエンザ・ノロ・コロナ)・真菌(水虫・カンジダ)・寄生虫(回虫・マラリア) |
| 感受性を左右する内因 | 免疫力・年齢・体質・栄養状態・疲労・持病の有無 |
| 熱傷の分類 | 1度(表皮)/2度(表皮〜真皮・水疱)/3度(真皮全層〜皮下・壊死)/4度(筋肉・骨まで炭化) |
| 凍傷の分類 | 1度(軽症・発赤)/2度(水疱)/3度(組織壊死・黒色変化)/4度(完全壊死・切断) |
| 放射線の高感受性組織 | 骨髄・リンパ組織・生殖腺・消化管粘膜・皮膚(分裂の盛んな細胞) |
| 高圧環境の代表疾患 | 潜函病(減圧症)=窒素の気泡による血管閉塞 |
病因(病気の原因)は、体の内側にある内因と、体の外から加わる外因に大別されます。外因とは「外から体に影響を与え、体のバランス(恒常性)を崩して病気を起こす原因」です。人体は体温・血圧・血糖値・水分量などを一定範囲に保つホメオスタシスを備えていますが、外からの刺激が強すぎるか長く続くと、防御力では対応しきれずに発病します。
重要なのは、同じ外因に曝されても、発症するかどうか・重症度は人によって違うという点です。ここに内因(宿主側の条件)が関わります。
したがって予防・対策は「外因を避けること」と「体の防御力(免疫・栄養・休養)を高めること」の両輪になります。
| 外因の分類 | 内容 | 代表例 |
|---|---|---|
| ① 栄養素の不足・過剰(供給障害) | 必要な栄養が足りない/摂りすぎてバランスが崩れる | 飢餓、蛋白質不足、ビタミン欠乏症、ミネラル異常、肥満・糖尿病 |
| ② 物理的因子 | 熱・寒さ・力・放射線など物理的刺激による傷害 | 熱中症、低体温症・凍傷、熱傷、外傷・骨折、放射線障害、減圧症 |
| ③ 化学的因子 | 毒物・薬品・有害物質など化学物質による傷害 | 薬物中毒、農薬中毒、一酸化炭素中毒、アルコール中毒、重金属中毒、大気汚染 |
| ④ 生物学的因子 | 生きた病原体による傷害 | 細菌・ウイルス・真菌・寄生虫の感染 |
栄養は「体を作り、動かし、病気から守る」ために必要ですが、不足しても摂りすぎても病気の原因になります。
原因は食事量の不足、偏った食事、過度なダイエット、消化吸収の障害、病気による食欲低下など。結果として体重減少・発育障害・筋力低下・免疫力低下・貧血が生じます。とくに小児では発育障害に直結し、たんぱく質・ビタミン・ミネラルの不足は免疫細胞の働きを弱め、感染症にかかりやすくします。
国試頻出の順番です。体は生きるために次の順で燃料を切り替えます。
その結果、体重減少・筋肉量の低下・易疲労・体温低下・臓器の機能低下が起こります。
蛋白質は筋肉・血液・皮膚・臓器・免疫細胞の材料です。不足すると血中アルブミンが減少します。アルブミンは血管内に水分を保つ働き(膠質浸透圧)を担うため、減ると水分が血管外へ漏れ出し浮腫(飢餓浮腫)が生じます。さらに免疫細胞や抗体の材料も不足するため、免疫細胞が作られにくい・抗体が十分作れない・傷の治りが悪い・感染症にかかりやすいという状態になります。
食べすぎ・間食、高カロリー高脂肪食、糖質過多、運動不足、アルコール過剰などにより、余った栄養が脂肪として蓄積し、肥満・脂質異常症・高血圧・動脈硬化・糖尿病・脂肪肝といった生活習慣病につながります。
| 栄養素 | 主な役割 | 不足・過剰で起こること |
|---|---|---|
| 蛋白質 | 筋肉・血液・皮膚・臓器・免疫細胞の材料 | 不足→アルブミン低下による飢餓浮腫、免疫力低下、創傷治癒遅延 |
| 脂質 | 細胞膜の材料、ホルモンの材料、体温保持、内臓の保護、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収促進 | 不足→脂溶性ビタミンの吸収不良/過剰→肥満・脂質異常症 |
| 炭水化物(糖質) | 最も使いやすいエネルギー源。脳の主要エネルギーはブドウ糖 | 不足→易疲労・集中力低下・低血糖・筋肉の分解/過剰→肥満・糖尿病 |
| 食物繊維 | 便通を整える、腸内環境改善、血糖急上昇の抑制、コレステロール吸収抑制、大腸癌予防に関与 | 不足→便秘・腸内環境の悪化 |
栄養障害のなかでも、欠乏症の病名とミネラルの過不足による病態は国試の定番です。ビタミンは体の働きを正常に保つために必要で、どのビタミンが不足したかによって特徴的な病気が起こります。
ミネラルは体液のバランスを保つ、神経や筋肉の働きを助ける、骨や歯を作る、酵素やホルモンの働きを助ける、酸素を運ぶ(鉄)などの役割を担います。少量でも生命維持に不可欠で、不足・過剰いずれも高血圧・不整脈・骨粗鬆症・鉄欠乏性貧血などの原因になります。
水分は「多すぎても少なすぎても危険」です。脱水では血液濃縮により高ナトリウム血症、水中毒では血液希釈により低ナトリウム血症となる対比が最重要ポイントです。
| ビタミン | 主な働き | 欠乏症 | 主な症状 |
|---|---|---|---|
| ビタミンA | 目・皮膚・粘膜の健康を保つ | 夜盲症 | 暗所で見えにくい、眼・角膜の乾燥、感染しやすい |
| ビタミンD | カルシウムの吸収を助け骨を丈夫にする | くる病(小児)・骨軟化症(成人) | 骨の石灰化障害、O脚などの変形、骨折しやすい |
| ビタミンB1 | 糖質をエネルギーに変える、神経・心臓の働き | 脚気(かっけ) | 手足のしびれ、筋力低下、むくみ(特に脚)、動悸・息切れ |
| ナイアシン(B3) | エネルギー代謝、皮膚・消化管・神経の働き | ペラグラ | 3つのD=皮膚炎(Dermatitis)・下痢(Diarrhea)・認知機能低下(Dementia) |
| ビタミンC | コラーゲン生成、血管・歯ぐきを丈夫にする | 壊血病 | 歯肉出血・腫脹、皮下出血、創傷治癒遅延、易疲労・貧血 |
ここからが物理的因子です。まず機械的損傷は、外から加わる力によって細胞や組織が壊れる病変で、転倒・打撲・交通事故・スポーツ外傷・圧迫などで起こります。起こり方は次の4つに整理されます。
強い外傷だけでなく慢性的な軽い圧迫でも障害は起こります(大動脈瘤による脊椎骨の圧迫→骨萎縮、結石による粘膜の傷、カテーテルによる粘膜潰瘍)。
高温では体温調節が追いつかず熱中症(脱水・めまい・頭痛・吐き気・体温上昇・意識障害・けいれん・多臓器不全)となり、さらに強い熱では細胞の蛋白質が固まり(変性)組織が壊れて熱傷(やけど)になります。広範囲熱傷が危険なのは、皮膚のバリアが失われて体液が失われる・感染しやすくなる・血圧が下がる・ショックになるためです。
低温では低体温症(ふるえ、手足のしびれ、判断力低下、意識障害、心肺機能低下、重症では凍死)となります。凍傷は体の一部が強い寒さにさらされて起こる局所障害で、指先・足先・耳・鼻に好発します。機序は「寒さで血管収縮→血流低下→酸素が届かず組織壊死」です。
| 度数 | 熱傷(やけど) | 凍傷 |
|---|---|---|
| 1度 | 表皮まで。皮膚が赤くなり日焼けのような状態、痛みがある | 軽症。しもやけ様、皮膚が赤紫色になり、かゆみや痛み |
| 2度 | 表皮〜真皮。水疱(水ぶくれ)ができ痛みが強い(湿潤創) | 中等症。水疱ができ、皮膚の障害が強くなる |
| 3度 | 真皮全層〜皮下組織。深く壊死し潰瘍化、痛みを感じにくいことがある(乾燥創) | 重症。血流が止まり組織が壊死し、皮膚が黒っぽく変色 |
| 4度 | 筋肉・骨まで炭化する最も重い熱傷 | 最重症。組織が完全に壊死し、切断が必要になることもある |
放射線とは細胞やDNAにダメージを与えるエネルギーで、X線・γ線・α線・β線・中性子線などがあります。放射線が細胞に当たると分子が変化してDNAが傷つき、傷が大きいと細胞が死ぬ・分裂できなくなる・異常な細胞になるという結果を招きます。
高感受性組織は骨髄(造血細胞)・リンパ組織(リンパ球)・生殖腺(精巣・卵巣)・消化管粘膜(腸上皮細胞)・皮膚(表皮細胞)です。それぞれ、骨髄障害→貧血・出血傾向・易感染、リンパ組織障害→免疫機能低下、生殖腺障害→精子卵子の形成低下・月経異常・不妊、という形で症状が出ます。
晩期障害(後遺症)として、DNA損傷が完全に修復されず異常細胞が増えることで白血病・悪性リンパ腫・皮膚癌・その他の悪性腫瘍が発生することがあります。
太陽光は可視光線・赤外線(熱をもつ光)・紫外線(UV)からなり、人体に特に有害作用を持つのが紫外線です。UVは波長によりUVA(皮膚深部まで届く:シワ・たるみ・光老化)、UVB(表皮に強く作用:日焼け・炎症・水疱・DNA障害)、UVC(最もエネルギーが強いがほとんどオゾン層に吸収され地表には届かない)に分けられます。
紫外線による皮膚変化は紅斑(血管拡張)・落屑(表皮の入れ替わり)・色素沈着(メラニン増加=DNAを守る防御反応)。繰り返し曝露するとDNA修復が追いつかず遺伝子異常・異常増殖が起こり、基底細胞癌・有棘細胞癌・悪性黒色腫(メラノーマ)など皮膚癌のリスクが高まります。顔・首・手背など曝露の多い部位に好発します。DNA修復異常の代表疾患が色素性乾皮症で、強い日焼け・色素沈着・若年での皮膚癌を起こしやすくなります。
| 因子 | 傷つけるもの | 起こりやすい急性障害 | 晩期障害 |
|---|---|---|---|
| 放射線(X線・γ線・α線・β線・中性子線) | 分裂の盛んな細胞のDNA | 貧血・出血傾向・易感染、免疫低下、不妊・月経異常、消化管粘膜障害 | 白血病、悪性リンパ腫、皮膚癌、その他悪性腫瘍 |
| 紫外線UVA | 皮膚深部(真皮) | - | シワ・たるみ・光老化 |
| 紫外線UVB | 表皮 | 日焼け(紅斑)・炎症・水疱 | DNA障害の蓄積→皮膚癌 |
| 紫外線UVC | (通常は地表に届かない) | - | - |
音波は空気や水を伝わる振動エネルギーで、音の3要素は強さ(音圧)・高さ(周波数)・持続時間(曝露時間)。障害の大きさは「音の強さ×曝露時間」で決まるため、小さめの音でも長時間続けば耳に負担がかかります。強い音は内耳の有毛細胞(音の振動を電気信号に変える細胞)を傷つけ、耳鳴り・難聴・高音域の聞き取りにくさを起こします。
騒音性難聴は工事現場・工場・ライブ会場・イヤホンの大音量などで起こり、少しずつ進行し初期は気づきにくく、高音域から聞こえにくくなり、一度傷つくと回復しにくいのが特徴です。爆発音や銃声では一瞬でも鼓膜損傷・急な難聴・強い耳鳴り・めまい・吐き気が起こります。超音波は人の耳に聞こえにくい高い周波数の音波で、体内で振動作用・熱の発生・細胞への刺激を起こします。難聴は伝音難聴(外耳・中耳の障害:鼓膜損傷、中耳炎)と感音難聴(内耳・神経の障害:騒音性難聴、加齢性難聴)に分けられ、騒音や強い音は感音難聴を引き起こしやすい点が要注意です。
電気による病変は「電流が体の中を通ることで起こる障害」です。組織の抵抗により熱が発生し、神経・筋肉・心臓に障害を起こします。主な障害は①電撃傷 ②熱傷 ③心停止(心室細動)④呼吸停止(呼吸筋・呼吸中枢の麻痺)。電流が心臓や呼吸中枢を通る経路(手→足、手→胸→足など)は致死的です。
周囲の圧力が高すぎても低すぎても障害が起こります。高圧環境(潜水・海底工事・潜函作業)では空気中の窒素が血液や組織に多く溶け込み、急浮上して圧力が急に下がると溶けていた窒素が気泡となって血管を詰まらせます。これが潜函病(減圧症)です。軽症では関節痛・筋肉痛・皮膚のかゆみ、重症では呼吸困難・麻痺・意識障害・ショック。窒素は脂肪に溶けやすいため脂肪組織や神経組織で障害が強く、脂肪組織が壊れると脂肪塞栓を起こすこともあります。予防はゆっくり浮上(減圧停止)、潜水時間の管理、体調管理で、治療は再圧治療(高気圧酸素療法)です。
低圧環境(高山・飛行機の高高度)では酸素が少なくなり高山病(頭痛・めまい・吐き気・息切れ・思考力低下・倦怠感)となり、重症化すると意識障害・肺水腫・脳浮腫を起こします。長期間高地で生活すると多血症(赤血球増加)、呼吸数・心拍数の増加、毛細血管の増加、酸素利用効率の向上といった代償反応が起こります。
| 因子 | 高い/強いとき | 低い/弱いとき・慢性 |
|---|---|---|
| 音波 | 爆音→鼓膜損傷・急性難聴・めまい/超音波→組織の振動・熱・細胞刺激 | 長時間の騒音曝露→騒音性難聴(感音難聴・高音域から進行・回復しにくい) |
| 電気 | 高電圧→深いやけど・筋壊死・血管障害・神経障害・心停止・呼吸停止/落雷→全身障害 | 交流は直流より危険(心室細動・離手不能) |
| 気圧 | 高圧→窒素の溶解、急浮上で気泡化→潜函病(減圧症)・脂肪塞栓・神経障害 | 低圧→低酸素→高山病、慢性では多血症などの代償反応 |
化学的因子は毒物・薬品・有害物質などの化学物質が体内に入り、細胞の働きや臓器の機能を障害するものです。
生物学的因子は、生きた病原体が体内で増殖したり毒素を出したりして炎症や発熱を起こすものです。感染症の原因として最も日常的な外因です。
いずれの因子でも、発症するかどうかは病原体側の量・毒力と、宿主側の免疫力・栄養状態とのバランスで決まります。外因を減らす(衛生管理・防護具・環境調整)と同時に、内因を高める(栄養・休養・免疫)ことが予防の基本です。
| 生物学的因子 | 代表的病原体 | 代表疾患 |
|---|---|---|
| 細菌 | 肺炎球菌、結核菌、サルモネラなど | 肺炎、結核、細菌性食中毒 |
| ウイルス | インフルエンザウイルス、ノロウイルス、コロナウイルス | インフルエンザ、感染性胃腸炎、COVID-19 |
| 真菌 | 白癬菌、カンジダ | 水虫、カンジダ症 |
| 寄生虫 | 回虫、マラリア原虫 | 回虫症、マラリア |