このページは、個々の癌腫の各論ではなく腫瘍を「総論」としてとらえる切り口——すなわち分類・発生の諸段階・増殖と進展(転移)・生体への影響・発癌因子——を、スライド20枚の記載どおりに整理したものです。腫瘍は正常細胞→癌細胞→臨床的な癌へと段階的に進み、その進行度はTNM分類で評価されます。国家試験では上皮内癌と浸潤癌の違い(基底膜を越えるか)、転移の3経路、発癌の3段階が繰り返し狙われます。
| 読み方 | しゅようそうろん |
|---|---|
| 腫瘍発生の条件 | 腫瘍細胞が発生すること/その細胞が増殖し続けること |
| 発生の諸段階 | ①イニシエーション(癌化への最初のきっかけ)→②プロモーション(増えて癌へ進む)→③潜伏期(発癌因子を受けてから臨床的に癌と確認されるまでの期間) |
| 増殖と進展の様式 | 膨張性増殖(押して広がる・境界がはっきり)/浸潤性増殖(入り込んで広がる・悪性腫瘍に多い・予後不良になりやすい) |
| 転移の3経路 | 血行性転移(肺・肝臓に転移しやすい)/リンパ行性転移(リンパ節へ)/播種(胸腔・腹腔などに散らばり多数の結節をつくる) |
| 進行度分類 | TNM分類(T=原発腫瘍の大きさ・広がり、N=リンパ節転移の有無、M=遠隔転移の有無) |
| 原因(内因・外因) | 外因=物理的因子(紫外線・X線・放射線・熱・機械的刺激など)、化学的因子(タバコ・アスベスト・ベンゼン・食品添加物・農薬・化学物質など)、癌ウイルス(HPV・B型/C型肝炎ウイルス・EBウイルスなど)/内因 |
| 生体への影響 | 局所への影響(発生部位・周囲への影響)+全身への影響(悪液質・発熱・免疫異常・内分泌異常) |
| 国試での狙われ方 | 上皮内癌と浸潤癌の区別(基底膜)、発癌3段階の順序、転移3経路、TNMの各文字の意味、癌ウイルスと疾患の組合せ |
スライドはまず腫瘍の分類から入ります。造血器・リンパ組織腫瘍は、現在では基本的に悪性腫瘍と考えられる点がポイントです。一方で神経性腫瘍には良性・悪性の両方があるため、対比して覚えます。
| 神経性腫瘍 | スライド記載の例 |
|---|---|
| 良性腫瘍の例(神経組織や神経鞘などから発生する) | 脈絡叢乳頭腫/星状細胞腫/神経鞘腫/神経線維腫/髄膜腫/メラニン細胞性黒斑 |
| 悪性腫瘍の例 | 神経芽細胞腫/脈絡膜癌/神経膠肉腫/悪性神経鞘腫/悪性黒色腫/網膜芽細胞腫 |
悪性腫瘍はいきなり臨床的な癌になるわけではないとスライドは強調します。正常細胞 → 癌細胞 → 臨床的な癌という流れを、3つの段階で押さえます。
前癌性病変とは「癌が発生するリスクが高い病変」です。代表例は胃の異型増殖・子宮頸部の異形成・腸上皮化生・胃の腺腫・潰瘍性大腸炎に伴う変化。ただし、昔は前癌病変と考えられていたものでも、現在では直接関係がないと考え直されているものもある、という注意書きが添えられています。
癌の初期には、発生した場所にとどまってまだ他へ進展していない時期があります。ここで最頻出なのが基底膜を越えているかどうかという一点です。
| 比較項目 | 上皮内癌(carcinoma in situ) | 浸潤癌(invasive cancer) |
|---|---|---|
| 状態 | 癌が上皮内にとどまっている状態 | 癌細胞が基底膜を越えて周囲へ浸潤している状態 |
| 基底膜 | 越えていない | 越えている |
| 進展 | 他へ進展しない | 他へ進展する可能性あり |
| 位置づけ | 癌が上皮内に限局している=cancerの「始まりの段階」 | 上皮内癌とは区別される |
早期癌は「粘膜内〜粘膜下層にとどまる比較的早い段階の癌」です。癌細胞が横に広がったり粘膜内に広がることがあり、粘膜内にとどまるものや粘膜下層まで浸潤するものを含めて早期癌と呼ぶことがあります。特に胃癌では内視鏡所見とあわせて診断・治療・予後を考え、内視鏡で形や広がりを確認し、治療方針の判断・予後の見通しに役立てます。
増殖の広がり方は2つに整理します。
| 増殖様式 | 特徴 |
|---|---|
| 膨張性増殖 | 周囲を押し広げるように増える/比較的境界がはっきりしている(=押して広がる) |
| 浸潤性増殖 | 周囲組織の中へ入り込むように増える/悪性腫瘍に多い/予後不良になりやすい(=入り込んで広がる) |
転移とは、腫瘍細胞がもとの場所から離れて、別の場所で増殖することです。経路は3パターンで覚えます。
悪性腫瘍の進行度を表す分類がTNM分類で、T・N・Mを組み合わせて癌の進行度を評価し、予後や治療方針の判断に重要です。
| 記号 | 意味 | 評価内容 |
|---|---|---|
| T | 原発腫瘍の大きさ・広がり | 腫瘍の大きさや深さ、広がりを評価する |
| N | リンパ節転移の有無 | リンパ節に転移しているかを評価する |
| M | 遠隔転移の有無 | 離れた臓器への転移があるかを評価する |
腫瘍の影響は局所への影響(腫瘍ができた部位やその周囲に起こる影響=圧迫、浸潤・破壊)と全身への影響(腫瘍が体全体に及ぼす影響)の2つに分けて整理します。局所の病変はQOLと予後に大きく影響し、早期発見・早期対応が大切とされます。
局所の病変(6つ)
| 全身への影響(4つ) | 内容 |
|---|---|
| 悪液質 | 癌によって栄養状態が悪くなり、体重減少や衰弱が起こる状態 |
| 発熱 | 腫瘍の崩壊物質や感染によって発熱することがある |
| 免疫異常 | 悪性腫瘍では全身の免疫が抑制され、感染が起こりやすくなる |
| 内分泌異常 | 腫瘍がホルモン様物質を産生することがある(例:ACTH・HCG・ガストリン様物質・副甲状腺ホルモン関連物質)。ホルモンを分泌する能力をもつ腫瘍=機能性腫瘍 |
腫瘍ができるには腫瘍細胞が発生することとその細胞が増殖し続けることが必要で、原因は大きく外因と内因に分けられます(このページでは外因を扱います)。外因は物理的因子・化学的因子・癌ウイルスの3つです。
| 癌ウイルス | 関係する疾患 |
|---|---|
| EBウイルス | バーキットリンパ腫、伝染性単核球症、鼻咽頭癌などと関係 |
| HTLV | 成人T細胞白血病と関係 |
| HBV・HCV | 肝細胞癌と関係(ウイルスによる慢性肝炎は、肝硬変を経て肝細胞癌につながることがある) |