疫学とは、人の集団における病気の発生・分布・原因を調べ、予防に役立てる学問です。国家試験では発生率=新規患者・有病率=現在患者という区別、相対危険=発生率の比・寄与危険=発生率の差という計算式、そして症例対照研究=オッズ比・後ろ向き/コホート研究=相対危険・前向きという対応が超頻出です。
ここでは14枚のスライドをもとに、疫学の歴史上の人物から研究デザインの長所・短所まで、得点に直結する項目を表で整理します。
| 読み方 | えきがく(疫学) |
|---|---|
| 定義 | 人の集団における病気の発生・分布・原因を調べ、予防に役立てる学問 |
| 疫学の目的 | 病気の原因を明らかにする/危険因子を見つける/予防法を考える/健康増進に役立てる |
| 主な指標 | 発生率(Incidence)・有病率(Prevalence)・死亡率・累積罹患率・人年法(Person-year) |
| リスク指標の計算式 | 相対危険(RR)=暴露群の発生率÷非暴露群の発生率/寄与危険(AR)=暴露群の発生率-非暴露群の発生率/オッズ比(OR)=ad/bc |
| 研究の流れ | 記述疫学 → 分析疫学 → 介入研究(実験疫学) |
| 代表的な研究デザイン | 症例対照研究(後ろ向き・オッズ比)/コホート研究(前向き・相対危険) |
| 因果関係の判定 | Hillの基準(時間的順序・一致性・強い関連・特異性・用量反応関係・生物学的妥当性・実験的証拠) |
| 国試での狙われ方 | 発生率と有病率の入れ替え、相対危険(比)と寄与危険(差)の混同、症例対照=オッズ比/コホート=相対危険の対応、記述疫学の三要素、Hillの基準 |
疫学とは、人の集団における病気の発生・分布・原因を調べ、予防に役立てる学問です。個人ではなく集団を単位に考えるのが最大の特徴で、医学・保健・公衆衛生の基本となります。
| 人物 | 生没年 | 業績 |
|---|---|---|
| ジョン・スノウ | 1813〜1858 | コレラ流行の原因が井戸水であることを解明。 |
| 高木兼寛 | 1849〜1920 | 脚気が栄養(白米中心)に関係することを証明。 |
| ヒポクラテス | 紀元前460〜紀元前370頃 | 環境と病気の関係を提唱。「人は自然の一部である」と考えた。 |
疾病の広がりを表す指標は、「新しく病気になった人」を見るのか「今病気の人」を見るのかで区別します。ここが国試最頻出の引っかけです。
これらの指標を使って、病気の発生や広がり、対策の効果を評価します。
| 指標 | 見るもの | スライドの例 |
|---|---|---|
| 発生率(Incidence) | 新規患者数 | 100人中5人が今年発病 → 5% |
| 有病率(Prevalence) | 現在の患者数 | 100人中10人が病気 → 10% |
| 死亡率 | 一定期間の死亡者数 | 1年間に100人中2人が死亡 → 2% |
| 累積罹患率 | 一定期間に病気になった割合 | 1年間に100人中8人が発病 → 8% |
| 人年法(Person-year) | 観察期間の合計 | 1年+2年+0.5年 → 合計3.5人年 |
相対危険(Relative Risk:RR)は、暴露群が病気になる危険度を非暴露群と比べたものです。比(割り算)で求めます。
相対危険(RR)=暴露群の発生率 ÷ 非暴露群の発生率
例(喫煙と肺がん・10年間の追跡調査):暴露群(喫煙者)100人中5人が肺がん → 発生率5/100=0.05(5%)。非暴露群(非喫煙者)100人中1人 → 1/100=0.01(1%)。0.05÷0.01=5 → RR=5なので、喫煙者は非喫煙者の5倍肺がんになりやすい。
特定の原因(暴露)があるために、病気のリスクがどのくらい増えたかを示す指標で、差(引き算)で求めます。
寄与危険(AR)=暴露群の発生率 - 非暴露群の発生率
例:暴露群(喫煙者)1,000人中50人発症 → 5%(50/1,000)。非暴露群(非喫煙者)1,000人中10人 → 1%(10/1,000)。5%-1%=4%。喫煙があることで、肺がんのリスクが4%増えていると考えられる。
| 指標 | 計算 | 意味 | スライドの例 |
|---|---|---|---|
| 相対危険(RR) | 暴露群の発生率 ÷ 非暴露群の発生率(比) | 何倍なりやすいか | 0.05÷0.01=5 → 5倍 |
| 寄与危険(AR) | 暴露群の発生率 - 非暴露群の発生率(差) | どれだけ増えたか | 5%-1%=4% |
疫学研究は次の3つのステップで進みます。
この3つの視点から病気の特徴を見つけることが、すべての疫学研究の出発点です。
病気は宿主要因・環境要因・病原因子が組み合わさって起こります。
生活習慣病では食事・喫煙・運動不足・肥満・ストレスが複雑に関与し合い、高血圧・糖尿病・脂質異常症・心疾患・脳卒中・がんなどを引き起こします。
| ステップ | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| ① 記述疫学 | 病気の発生や分布の状況を把握する | 「いつ・どこで・どんな人に」どれくらいの病気があるかを明らかにする |
| ② 分析疫学 | 病気の原因や危険因子を明らかにする | 病気と関連する要因(危険因子)を見つける |
| ③ 介入研究(実験疫学) | 原因や危険因子に対して対策を行い、効果を検証する | 対策や治療などの効果を科学的に確かめる |
分析疫学の代表は症例対照研究とコホート研究の2つです。この2つの対応をしっかり覚えることが国試対策の要です。
病気の人(症例)と病気でない人(対照)を比較して、過去の曝露(原因)の有無を調べる研究です。
オッズ比の計算式:症例群の曝露あり=a、対照群の曝露あり=b、症例群の曝露なし=c、対照群の曝露なし=dとすると、OR=(a/c)÷(b/d)=ad/bc。オッズとは「ある事象が起こる確率÷起こらない確率」です。
覚え方:「症例対照は 過去へさかのぼる オッズ比」
健康な集団を長期間追跡し、将来の病気の発生を比較する研究です。研究開始時に原因(曝露)の有無でグループ分けし、数年〜数十年追跡します。
RRの求め方:喫煙者の発生率(累積罹患率)Ie=a/(a+b)、非喫煙者の発生率 Iu=c/(c+d)。RR=Ie/Iu={a/(a+b)}÷{c/(c+d)}。
| 項目 | 症例対照研究 | コホート研究 |
|---|---|---|
| 対象 | 病気の人(症例)と病気でない人(対照) | 病気でない健康な集団 |
| 時間の向き | 後ろ向き(レトロスペクティブ) | 前向き(フォワード) |
| 調べること | 過去の曝露の有無 | 将来の発病の有無 |
| 指標 | オッズ比(OR=ad/bc) | 相対危険(RR) |
| 発生率 | 直接は求められない | 直接求められる |
| 向いている対象 | まれな病気・希少疾患・職業性疾患 | 一般的な疾患(例:喫煙と肺がん) |
| 長所 | 短期間・少ない対象でも実施しやすい | 原因と結果の時間的順序が明確・因果関係の検討に有用 |
| 短所 | 時間的順序があいまいになりやすい | 時間がかかる・費用が高い |
原因と結果に本当に因果関係があるかを判断する基準がHillの基準です。ひとつの基準だけでなく、複数の基準を総合的に評価することが大切です。国家試験では「Hillの基準」だけ覚えておけば十分とされています。
| № | 基準 | 内容 |
|---|---|---|
| ① | 時間的順序 | 原因(曝露)が先にあり、その後に結果(疾病)が起こること。 |
| ② | 一致性(一貫性) | 異なる研究や集団でも、同じような結果が得られること。 |
| ③ | 強い関連(強さ) | 原因と結果の関連が強いほど、因果関係の可能性が高い。 |
| ④ | 特異性 | 特定の原因が、特定の結果を引き起こすこと。 |
| ⑤ | 用量反応関係(量反応関係) | 原因の量が多いほど、結果の頻度や重症度が増加すること。 |
| ⑥ | 生物学的妥当性(生物学的合理性) | 原因と結果の間に、科学的・生物学的に合理的な説明がつくこと。 |
| ⑦ | 実験的証拠(実験的証明) | 実験や介入研究によって原因を取り除いたり操作したりすると、結果が変化すること。 |