このページは頭痛の東洋医学的な弁証と配穴、そして補瀉手技を扱います(西洋医学的な一次性・二次性頭痛の鑑別は別ページが担当)。東洋医学では頭痛を外感性頭痛と内傷性頭痛に大別し、痛む部位(後頭部・側頭部・前頭部・頭頂部)に応じた局所穴と病証に応じた弁証穴を組み合わせます。さらに刺鍼では虚実を見極め、虚証には補法、実証には瀉法を用い、徐疾・開闔・呼吸・迎随などの手技で気の出入りを調整します。
| 読み方 | ずつうのしんちりょうとほしゃ |
|---|---|
| 大別 | 外感性頭痛(風寒・風湿・風熱などの外邪や外傷で頭部の経絡が阻滞)/内傷性頭痛(七情の失調・飲食不節・過労で臓腑や気血に異常) |
| 外感性の証 | 風寒・風湿・風熱 |
| 内傷性の証 | 肝火上炎・肝陽上亢/痰湿/瘀血/気血両虚/腎精不足・腎陰虚・腎陽虚 |
| 部位別の局所穴 | 後頭部=天柱・風池・後渓/側頭部=懸顱・率谷・太陽・外関/前頭部=印堂・陽白・合谷・内庭/頭頂部=百会・四神聡・太衝 |
| 配穴の考え方 | 局所穴 × 循経穴 × 弁証穴を組み合わせてオーダーメイドの治療を行う |
| 補瀉の基本 | 虚証(正気の不足)には補法、実証(邪気が盛ん)には瀉法。虚実が混在する場合は組み合わせる |
| 代表的な補瀉手技 | 徐疾補瀉・開闔補瀉・呼吸補瀉・迎随補瀉・平補平瀉 |
| 危険な頭痛(要受診) | 突然の激しい頭痛/いつもと異なる頭痛/神経症状を伴う頭痛/発熱・嘔吐・意識障害を伴う頭痛 |
| 国試での狙われ方 | 証と舌脈・配穴の対応、部位別の局所穴、補瀉手技(徐疾・開闔・呼吸・迎随)の操作方向 |
東洋医学では頭痛をまず外感性頭痛と内傷性頭痛に大別して病態を判断します。原因に応じて病態を見極め、適切な治療と生活指導を行うことが重要です。
外邪の性質によって痛み方・随伴症状・舌脈が変わります。舌脈の組み合わせは国試の定番なので表で覚えましょう。
| 証 | 痛みの特徴 | 随伴症状 | 舌 | 脈 |
|---|---|---|---|---|
| 風寒 | 急性に発症。後頭部〜項部を締めつけるような強い痛み | 悪寒が強い/発熱は軽度/汗が出にくい/項背部のこわばりを伴いやすい | 舌苔は薄白 | 浮緊 |
| 風湿 | 頭を布で包まれたような重い痛み・頭重感 | 身体の重だるさ/食欲不振・悪心・胸苦しさ/胃部の不快感 | 舌苔は白膩 | 濡または滑 |
| 風熱 | 頭が張るように痛む | 発熱/軽い悪寒/顔面紅潮/目の充血/口渇/咽頭痛/尿量の減少 | 舌質は紅・舌苔は薄黄 | 浮数 |
内傷性頭痛は臓腑・気血の失調によるもの。実(肝火・痰湿・瘀血)と虚(気血両虚・腎虚)を区別することが治療方針=補瀉の決定に直結します。
| 証 | 主な症状 | 舌 | 脈 |
|---|---|---|---|
| 肝火上炎・肝陽上亢 | 頭頂部・側頭部の張るような頭痛/めまい/耳鳴り/顔面紅潮/目の充血/口苦/胸脇部の張り/怒りっぽさ・イライラ | 舌質は紅・舌苔は薄黄 | 浮数 |
| 痰湿 | 頭重感/めまい/胸苦しさ/悪心/食欲不振/軟便 | (記載なし) | (記載なし) |
| 瘀血 | 痛む場所が固定し、刺されるような鋭い痛みが続く | (記載なし) | (記載なし) |
| 気血両虚 | 持続する鈍い頭痛(疲労で悪化)/倦怠感/息切れ/動悸/顔色不良/食欲不振/めまい | 舌質は淡白 | 細弱 |
| 腎精不足・腎陰虚・腎陽虚 | めまいを伴う空虚な頭痛/腰膝酸軟/耳鳴り・難聴/潮熱・盗汗/手足のほてり/冷え・むくみ/四肢の冷感 | 舌質は淡 | 細弱 |
頭痛の鍼灸治療では痛む部位と病証に応じてツボを選択します。局所穴 × 循経穴 × 弁証穴を組み合わせてオーダーメイドの治療を行うのが基本方針です。
| 病証 | 配穴 | ねらい |
|---|---|---|
| 風寒 | 風池・合谷・列欠 | 寒気、首肩のこわばりに |
| 風湿 | 豊隆・陰陵泉・中脘 | 頭重感、むくみ、胸のつかえに |
| 風熱 | 大椎・曲池・外関 | 発熱、のぼせ、目の充血に |
| 肝火 | 太衝・行間・合谷 | イライラ、のぼせ、目の充血に |
| 痰湿 | 豊隆・中脘・陰陵泉 | 頭重感、悪心、食欲不振に |
| 瘀血 | 膈兪・血海・三陰交 | 刺すような痛み、肩こり、しこり感に |
| 気血両虚 | 足三里・三陰交・脾兪 | 疲労、動悸、顔色不良、食欲不振に |
| 腎虚 | 太渓・腎兪・命門 | めまい、耳鳴り、腰膝のだるさに |
虚実は正気と邪気のバランスで判断します。虚=正気(せいき)が不足した状態(疲れやすい、だるい、元気が出ない)、実=邪気(じゃき)が盛んな状態(痛みが強い、熱っぽい、イライラする)。実際の病態は虚と実が同時にみられることが多いため、全体を総合的に評価して治療方針を決めます。
なお刺激への感じ方は人それぞれで、体調・皮膚の敏感さ・精神状態・信頼感によって変わります。表情や訴えを確認しながら安全に施術することが大切です。
古典には鍼の速度・鍼孔の処置・呼吸・鍼の向きなどを使い分ける補瀉手技が記載されています。ただし古典によって記載が異なる部分もあり、歴史的にさまざまな方法が存在します。方向・操作・呼吸・開闔を組み合わせる複合的手技もあります。
| 手技 | 補法 | 瀉法 |
|---|---|---|
| 徐疾補瀉(鍼の進退速度) | ゆっくり進めて、速く抜く | 速く進めて、ゆっくり抜く |
| 開闔補瀉(抜鍼後の処置) | 閉じる:鍼を抜いた後、鍼孔をすぐに押さえて気が漏れないようにする | 開ける:鍼孔を閉じずに、邪気を外へ出すように考える |
| 呼吸補瀉(刺入・抜鍼のタイミング) | 刺入は吸気に合わせて刺し、抜鍼は呼気に合わせて抜く | 刺入は呼気に合わせて刺し、抜鍼は吸気に合わせて抜く |
| 迎随補瀉(経脈の流れと鍼の向き) | 随:経脈の流れに沿う向き=補 | 迎:経脈の流れに逆らう向き=瀉 |
鍼灸の適応・不適応の判断として、西洋医学的な危険性の確認が必須です。以下のような頭痛は重大な疾患のサインである可能性があり、速やかに医療機関を受診させます(自己判断せず、早めの受診)。
日常生活での頭痛予防・改善のポイントは、ストレスや過労を避ける/十分な休養と睡眠をとる/身体を冷やしすぎない/暴飲暴食や偏食を避ける/カフェインなどの誘発因子を控える/適度な運動を行う/水分をしっかりとる(脱水は頭痛の原因になることも)/規則正しい生活リズムを保つ、の8点です。