アフロの手アフロの手

バイタルサインと身体計測|脈拍・BMI・肥満とやせ・食欲・鼻翼呼吸まで全身状態の診かたばいたるさいんとしんたいけいそく

患者さんの体に触れる前から始まっているのが全身状態の把握です。脈をとる、身長・体重を測る、食欲や呼吸のようすを見る——どれも特別な機械を使わずに、体の内側で起きていることを教えてくれる情報源です。このページでは脈拍・身体計測・体重(BMI/肥満・やせ)・食欲・鼻翼呼吸を1本にまとめ、国試で問われる数値と基準をまるごと整理します。数字は「覚える」よりどの状態を示すサインかとセットで理解するのが最短ルートです。

バイタルサインと身体計測|バイタルサインと身体計測 1
含まれる項目脈拍/身長・体重・胸囲・座高/四肢長・周径/標準体重とBMI/肥満・やせ・悪液質/食欲/睡眠・便通・排尿/鼻翼呼吸
主な手技橈骨動脈の触診、身長計・体重計、メジャーによる周径測定、視診・問診
目的循環動態の把握、発育・体格・栄養状態の評価、左右差や筋萎縮の検出、全身疾患のスクリーニング
脈拍の正常値成人65〜85回/分、3歳頃約100回/分、乳幼児約120回/分(加齢とともに減少)
異常の基準頻脈=成人100回/分以上、徐脈=60回/分以下、肥満=標準体重+20%以上、やせ=標準体重−20%以下
代表的な陽性所見不整脈(洞性・期外収縮・心房細動・心ブロック・交互脈・奇脈)、中心性肥満、悪液質、鼻翼呼吸
確定診断の検査不整脈は心電図検査で確定診断する
国試の狙われ方脈拍の正常値と頻脈・徐脈の原因疾患、BMI=体重(kg)÷身長(m)²とBMI22、大腿周径=膝蓋骨上縁から約10cm上、下腿周径=最大部、鼻翼呼吸=努力呼吸

脈拍――手首だけで循環がわかる基本のバイタルサイン

脈拍は橈骨動脈を触れるだけで測定でき、心臓と血管の状態をもっとも手軽に反映します。回数だけを数えて終わりにせず、次の4点をセットで確認するのが基本です。

正常な脈拍数は成人で65〜85回/分。年齢によって大きく変わり、乳幼児は約120回/分3歳頃で約100回/分と、加齢とともに減少していきます。生理的な変動も押さえておきましょう。運動後・発熱・緊張や興奮では増加し、逆にスポーツ選手では50回/分以下になることもあります(スポーツ心臓)。

確認項目何がわかるか
脈拍数頻脈・徐脈の判定。発熱、運動、緊張、貧血などで変動
リズム(調律)不整脈の有無。乱れがあれば心電図へ
強さ・大きさ心拍出量や血管の状態。弱い脈はショックなどを示唆
左右差動脈の狭窄・閉塞、大動脈疾患などの手がかり
脈拍の確認ポイントと年齢別の正常脈拍数
脈拍の確認ポイントと年齢別の正常脈拍数

異常脈拍――頻脈・徐脈・不整脈を数字と原因で覚える

脈拍の異常は数の異常(頻脈・徐脈)リズムの異常(不整脈)に分けて整理します。境界となる数値は国試でそのまま問われます。

甲状腺は亢進で頻脈、低下で徐脈と正反対に出るので、対で覚えると取りこぼしません。不整脈は脈のリズムが乱れた状態で、心電図検査で確定診断します。

不整脈の種類特徴
洞性不整脈呼吸に合わせて脈が変化する
期外収縮脈が飛ぶ
心房細動完全に不規則
心ブロック刺激伝導障害による
交互脈脈の強弱が交互に現れる
奇脈吸気で脈が弱くなる
頻脈・徐脈の基準値と原因、代表的な不整脈6種
頻脈・徐脈の基準値と原因、代表的な不整脈6種

身体計測①――身長・体重・胸囲・座高と四肢の長さ・周径

身体計測は体格・発育・栄養状態をまるごとチェックする手段です。基本の4項目に加えて、四肢の長さと太さを測ることで局所の変化まで拾えます。

四肢の測定項目は、長さが上肢長・前腕長・手長・下肢長・大腿長・足長、周径が上腕周径・前腕周径・大腿周径・下腿周径。目的は①左右差の確認、②筋萎縮・筋肥大の評価、③むくみ(浮腫)の評価、④骨や筋肉の発育状態の確認です。

測定部位測定の基準(国試頻出)
大腿周径膝蓋骨上縁から約10cm上で測定
下腿周径下腿の最大部で測定
胸囲メジャーで水平に測定(胸郭の発育評価)
座高座位で測定(体幹と下肢のバランス評価)
四肢長・周径全般左右差や筋萎縮の評価に用いる
四肢の長さ・周径の測定項目と、大腿周径・下腿周径の基準
四肢の長さ・周径の測定項目と、大腿周径・下腿周径の基準

身体計測②――標準体重とBMIで栄養状態を数値化する

栄養状態は主観ではなくBMI(体格指数)と標準体重で数値評価します。計算式は必ず書けるようにしておきましょう。

BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m)²

もっとも病気になりにくいとされる理想値がBMI 22で、この値から求めた体重が理想体重(標準体重)です。BMIからは栄養状態、肥満リスク、やせの評価、生活習慣病リスクが読み取れます。判定は標準体重に対する増減率で行います。

判定標準体重からの増減
普通−10〜+10%
肥満傾向+10〜+20%
肥満+20%以上
やせ傾向−10〜−20%
やせ−20%以下
BMIの計算式・理想値22と、標準体重による肥満/やせの判定基準
BMIの計算式・理想値22と、標準体重による肥満/やせの判定基準

肥満とやせ――背景にある疾患まで押さえる

肥満とは体脂肪が過剰に蓄積した状態をいいます。主な原因は食べ過ぎ・運動不足・体質・内分泌疾患で、これらが重なって起こります。肥満は糖尿病・高血圧・動脈硬化など生活習慣病のリスクを高め、脂肪の蓄積→炎症・ホルモンバランスの異常→血管への負担(動脈硬化)→心筋梗塞・脳卒中という流れで重篤な病気につながります。

肥満の原因となる代表的疾患は次の3つ。とくにクッシング症候群の中心性肥満は頻出です。

一方やせ(るいそう)は体重が減少し栄養状態が低下した状態で、原因は摂食障害・消化器疾患・甲状腺機能亢進症・糖尿病・発熱・慢性疾患など。所見として体重減少、眼窩陥凹、頬がこける、皮膚乾燥がみられ、免疫力の低下・易疲労・創傷治癒の遅延・感染症リスク増大といった影響が出ます。悪性腫瘍や慢性疾患の末期にみられる重度の栄養障害状態を悪液質(カヘキシー)といい、高度のやせ・筋力低下・全身衰弱を特徴とします。

肥満やせ(るいそう)
定義体脂肪が過剰に蓄積した状態体重が減少し栄養状態が低下した状態
判定標準体重の+20%以上標準体重の−20%以下
代表的な内分泌疾患クッシング症候群、甲状腺機能低下症、性腺機能低下症甲状腺機能亢進症、糖尿病
特徴的所見中心性肥満、満月様顔貌眼窩陥凹、頬がこける、皮膚乾燥
合併するリスク糖尿病・高血圧・動脈硬化→心筋梗塞・脳卒中免疫力低下・創傷治癒遅延・感染症
末期像悪液質(高度のやせ・筋力低下・全身衰弱)
肥満の原因・特徴と、クッシング症候群にみられる中心性肥満
肥満の原因・特徴と、クッシング症候群にみられる中心性肥満

食欲・睡眠・便通・排尿――全身状態評価の基本4項目

問診で必ず聞く食欲・睡眠・便通・排尿は、全身状態評価の基本4項目です。とくに食欲は「食べたいという生理的欲求」であり、食欲低下(食欲不振)は全身疾患のサインとして重要視されます。

残り3項目の要点も数値ごと押さえます。

項目覚える数値・キーワード
食欲低下=全身疾患のサイン/亢進=甲状腺機能亢進症・ステロイド
睡眠90〜120分周期、一晩4〜5回、朝ほどレム睡眠が増える
便通直腸伸展→排便反射→排便。排便反射障害=便秘
排尿原尿180L/日 →99%再吸収 →最終尿1.5L/日
全身状態評価の基本4項目(食欲・睡眠・便通・排尿)の要点
全身状態評価の基本4項目(食欲・睡眠・便通・排尿)の要点

鼻翼呼吸と鼻の視診――呼吸の見た目でわかる重症サイン

鼻翼呼吸は、呼吸困難が強いときに鼻翼(小鼻)が大きく動いて吸気を助ける呼吸です。つまり努力呼吸の徴候であり、重症の呼吸困難を示します。原因となるのは肺炎・心不全・重症呼吸器疾患。呼吸数を数える前に、顔つきと小鼻の動きを見るだけで危険度が読めるという点で、視診の価値が高い所見です。

鼻の観察では、あわせて嗅覚と形の異常もチェックします。嗅覚検査は片側ずつ鼻孔を閉鎖して行い、コーヒー・タバコ・香水など刺激の弱い既知のにおいを用い、左右差も確認します。嗅覚障害の原因は鼻炎・副鼻腔炎・嗅神経障害・前頭葉病変です。

所見意味・原因
鼻翼呼吸努力呼吸=重症呼吸困難のサイン。肺炎・心不全・重症呼吸器疾患
嗅覚障害鼻炎・副鼻腔炎・嗅神経障害・前頭葉病変
鞍鼻(あんび)鼻梁が陥没。先天梅毒、ウェゲナー肉芽腫
鼻全体が大きくなる先端巨大症
鼻の変形外傷、先天奇形
鼻翼呼吸のしくみと、努力呼吸=重症呼吸困難というサイン
鼻翼呼吸のしくみと、努力呼吸=重症呼吸困難というサイン
国試ポイント
① 脈拍の正常値は成人65〜85回/分、3歳頃約100回/分、乳幼児約120回/分。加齢とともに減少する。
② 頻脈=成人100回/分以上、徐脈=60回/分以下。甲状腺は亢進で頻脈・低下で徐脈と正反対。
③ 不整脈は心電図検査で確定診断。奇脈=吸気で脈が弱くなる、交互脈=強弱が交互。
④ BMI=体重(kg)÷身長(m)²。BMI22が理想体重。肥満=標準体重の+20%以上、やせ=−20%以下。
⑤ 大腿周径は膝蓋骨上縁から約10cm上、下腿周径は最大部で測定する。
⑥ クッシング症候群=中心性肥満と満月様顔貌。悪液質=慢性消耗性疾患末期の高度やせ状態。
・ 食欲低下は全身疾患のサイン、食欲亢進は甲状腺機能亢進症とステロイド。鼻翼呼吸=努力呼吸=重症呼吸困難。
📖 バイタルサインと身体計測をスライドで学ぶ(国試辞書) 図解スライドでサクッと復習