顔・耳・ことばの診察は、「見て・聞いて・話させる」だけで脳神経と感覚器の障害部位を絞り込める、国家試験でも臨床でも頻出の領域です。このページでは顔面神経麻痺と顔面腫脹(丹毒・流行性耳下腺炎)、聴力検査と難聴の型、構音障害と失語症、高次脳機能検査を1本につないで解説します。「どこが障害されるとどの所見が出るか」という視点で読むと、バラバラの暗記が一気につながります。
| 含まれる項目 | 顔面神経麻痺/顔面腫脹(丹毒・流行性耳下腺炎)/聴力・難聴/構音障害・失語症/高次脳機能検査 |
|---|---|
| 主な手技 | 顔貌の視診・閉眼/口笛などの表情筋テスト、耳下腺部の触診、オージオメーターまたは時計音による聴力検査、会話による発語・理解の観察、高次脳機能検査 |
| 目的 | 脳神経(顔面神経・聴神経など)と感覚器、および大脳皮質の高次機能に障害があるかどうかを判定し、障害部位を推定する |
| 代表的な陽性所見 | 麻痺側の閉眼不能・鼻唇溝消失・口角下垂・口笛で空気漏れ/耳下腺の腫脹と圧痛/低音性・高音性耳鳴り/ろれつが回らない・言葉が理解できない/記憶・注意・遂行機能の低下 |
| 障害部位の目安 | 顔面表情筋=顔面神経、外耳・中耳=伝音性難聴、内耳・聴神経・中枢=感音性難聴、発声発語器官・小脳・錐体路=構音障害、大脳皮質言語野=失語症、大脳新皮質=高次脳機能 |
| 鑑別のポイント | 顔が赤く腫れて痛い→丹毒、耳の下が腫れて痛い→おたふくかぜ、低音性耳鳴り→伝音性、高音性耳鳴り→感音性、理解できて話せない→ブローカ失語、話せるが理解できない→ウェルニッケ失語 |
| 国試の狙われ方 | 顔面神経麻痺の症状の組み合わせ、破傷風の痙笑・開口障害、丹毒の起炎菌(A群β溶血性レンサ球菌)、おたふくかぜの合併症(膵炎・精巣炎・卵巣炎)、難聴の型と耳鳴りの高さ、失語症の型、高次脳機能障害の原因と代表症状 |
顔面神経麻痺は、麻痺側の表情筋が動かなくなることで特徴的な顔貌をつくります。診察では患者に「目を閉じて」「口笛を吹いて」と指示するだけで判定できるため、視診+簡単な動作テストが決め手になります。
国家試験では、この「閉眼不能+鼻唇溝消失+口角下垂+口笛で空気漏れ」という組み合わせがそのまま出題されます。1つずつ覚えるより、4点セットで丸ごと押さえるのが最短ルートです。
同じ「顔の異常」でも、麻痺(動かない)と痙攣(勝手に強く縮む)はまったく別物です。破傷風では顔面筋が痙攣して、引きつった笑顔のように見える痙笑(けいしょう)を示します。
覚え方は「顔が動かない=顔面神経麻痺/顔がひきつる=破傷風」。破傷風は開口障害・痙笑・刺激で悪化の3点で判断します。
| 顔面神経麻痺 | 破傷風 | |
|---|---|---|
| 顔の状態 | 麻痺側が動かない(弛緩) | 顔面筋が痙攣して強くこわばる |
| 特徴的所見 | 閉眼不能・鼻唇溝消失・口角下垂・口笛で空気漏れ | 痙笑(引きつった笑顔)・開口障害 |
| 左右差 | 麻痺側のみ(非対称) | 全身の筋強直を伴う |
| 悪化因子 | 特になし | 音・光などの刺激で悪化 |
顔面の診察では「腫れ」も重要な所見です。腫れている場所と原因微生物で鑑別します。
おたふくかぜは合併症も頻出です。膵炎、思春期以降の男性における精巣炎、女性の卵巣炎をセットで覚えましょう。合言葉は「顔が赤く腫れて痛い→丹毒/耳の下が腫れて痛い→おたふくかぜ」です。
| 丹毒 | おたふくかぜ(流行性耳下腺炎) | |
|---|---|---|
| 原因 | 細菌感染(A群β溶血性レンサ球菌など) | ウイルス感染(ムンプスウイルス) |
| 主な症状 | 発赤・腫脹・疼痛・高熱 | 耳下腺の腫脹・圧痛・発熱(中等度) |
| 部位 | 顔面・下肢などの皮膚 | 耳下腺部(耳の下あたり) |
| 痛みの特徴 | 持続する疼痛・熱感 | 咀嚼や運動で痛みが増強 |
| 合併症 | ― | 膵炎・精巣炎・卵巣炎 |
聴力の診察は、正確にはオージオメーターで検査します。簡便法としては時計の音などを利用し、耳からどのくらい離れて聞こえるかを確認します。
一発暗記は「伝音は外耳・中耳、感音は内耳・神経」「低音なら伝音、高音なら感音」。この2行で国家試験の難聴問題はほぼ処理できます。
| 伝音性難聴 | 感音性難聴(神経性難聴) | |
|---|---|---|
| 障害部位 | 外耳・中耳 | 内耳(蝸牛)・聴神経・中枢神経 |
| 代表的原因 | 外耳道閉塞・中耳炎 | 内耳障害・聴神経障害・中枢神経障害 |
| 聞こえ方 | 音が伝わりにくい | 音を感じにくい |
| 耳鳴り | 低音性耳鳴り(ド〜ミ) | 高音性耳鳴り(シ〜高音域) |
| 検査 | オージオメーター(簡便法は時計の音など) | オージオメーター(簡便法は時計の音など) |
「うまくしゃべれない」患者を診たら、発音の問題(構音障害)なのか言語そのものの問題(失語症)なのかを分けます。ここが最大の分岐点です。
構音障害は「話したい内容は分かっているが、うまく発音できない」状態です。
失語症は「発音はできるが、言葉の理解や表現ができない」状態です。
合言葉は「理解はできるが、うまく発音できない=構音障害」「発音はできるが、言葉が分からない=失語症」です。
| 構音障害 | ブローカ失語 | ウェルニッケ失語 | |
|---|---|---|---|
| 本質 | 発音(構音)の障害 | 運動性失語 | 感覚性失語 |
| 理解 | 保たれる | 保たれる | 障害される |
| 発語 | 不明瞭・ろれつが回らない | 話せない(非流暢) | 流暢だが支離滅裂 |
| 主な原因 | 重症筋無力症・球麻痺・パーキンソン病・小脳疾患・脳血管障害 | 脳梗塞・脳出血・脳腫瘍・脳炎・頭部外傷 | 脳梗塞・脳出血・脳腫瘍・脳炎・頭部外傷 |
高次脳機能とは、感覚情報をまとめて処理し、目的に合った行動を計画・実行する働き、すなわち情報を統合・処理して行動する能力のことです。
一発暗記は「高次脳=考える・覚える・注意する・行動する脳の力」。ここに前節の失語症(言語)もぶら下がっていると理解すると、脳神経の診察全体が1本につながります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 感覚情報を統合・処理し、目的に合った行動を計画・実行する能力 |
| 中枢 | 主に大脳新皮質(並列的・階層的に処理) |
| 含まれる機能 | 言語・計算・音楽・記憶・注意・行動のコントロール |
| 障害の原因 | 脳外傷・脳血管障害の後遺症 |
| 代表的症状 | 記憶障害・注意障害・遂行機能障害・行動障害 |
| 検査の意義 | 障害の有無の判定、リハビリテーション医学で重要 |
脳神経・感覚器の診察は、特別な機器がなくても顔を見る・耳で聞かせる・話させるだけで多くの情報が得られます。国家試験対策としては、次の流れで頭の中を整理しておくと解答が速くなります。
症状名を単独で暗記するのではなく、「所見→障害部位」の矢印で覚えると、初見の問題文にも対応できるようになります。