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体表・胸部の診察所見|爪・口唇・舌・咽頭・胸郭・姿勢・乳房でわかる全身疾患のサインたいひょう・きょうぶのしんさつしょけん

患者さんの体に触れる前から、診察はもう始まっています。爪・口唇・舌・咽頭・胸郭・姿勢・乳房といった「外から見える場所」には、貧血・低アルブミン血症・尿毒症・糖尿病・肝硬変・肺気腫・脳血管障害といった全身疾患のサインが必ず現れます。このページでは臨床医学総論の体表診察所見を、視診・触診・打診の流れに沿って1本にまとめました。「白い爪は貧血、横線は低アルブミン、へこんだらスプーン爪」のように、所見と疾患を1対1で結びつけて覚えるのが国試突破の最短ルートです。

体表・胸部の診察所見|体表・胸部の診察所見 1
含まれる項目爪の色・爪の形/口唇色・口臭/味覚・舌の異常/咽頭・扁桃・口蓋垂・喉頭/胸郭変形・肺肝境界/特徴的な姿勢・体位/乳房の診察
主な手技視診(見る)・触診(触る)・打診(叩く)
目的体表に現れた所見から、貧血・栄養障害・感染症・呼吸器疾患・肝疾患・神経疾患など全身の病態を推定する
代表的な陽性所見(爪)爪床蒼白=貧血/爪白線=低アルブミン血症/肥厚・混濁=爪真菌症/スプーン爪(匙状爪)=鉄欠乏性貧血
代表的な陽性所見(口・舌)口唇蒼白=貧血/暗紫色=チアノーゼ/暗赤色=多血症/アセトン臭=糖尿病性昏睡/尿臭=尿毒症/ハンター舌炎=ビタミンB12欠乏
代表的な陽性所見(胸部)鳩胸=くる病/漏斗胸=マルファン症候群/樽状胸=肺気腫/肺肝境界の下降=肺気腫、上昇=肝腫大(正常は右鎖骨中線上・第6肋骨付近)
代表的な陽性所見(姿勢)マン・ウェルニッケ肢位=脳卒中片麻痺/前かがみ=パーキンソン病/除脳硬直=中脳〜橋/除皮質硬直=大脳半球・内包/後弓反張=髄膜炎・破傷風/エビ姿勢=急性腹膜炎/起座位=心不全
代表的な陽性所見(乳房)圧痛=急性乳腺炎(炎症性乳癌でも出るので注意)/硬い乳腺組織を触れる男性=女性化乳房(肝硬変)
国試の狙われ方「所見→疾患」「疾患→所見」の一対一対応を問う四択が中心。似た所見の取り違え(爪白線と爪床蒼白、除脳と除皮質、鳩胸と漏斗胸)が最頻出の引っかけ

爪でみる全身状態 ― 色と形は「全身を映す鏡」

爪は皮膚の付属器でありながら、血液・栄養・感染の状態をそのまま映し出す数少ない体表の窓です。国試では「爪床蒼白といえば?」という単純な一問一答形式で繰り返し出題されます。まずは正常な爪の姿を押さえましょう。

とくに爪床蒼白爪白線は混同しやすい二大頻出所見です。爪全体が白っぽくなるのが爪床蒼白(ヘモグロビン低下=貧血)、横方向の白い線が出るのが爪白線(低アルブミン血症=ネフローゼ症候群など)と、線の有無で切り分けてください。

形の異常の代表がスプーン爪(匙状爪)です。鉄不足によって爪の形成が障害され、爪が薄く・もろくなり中央がへこむことでスプーンのような形になります。スプーン爪=鉄欠乏性貧血は単独で一問になる超頻出項目です。

所見特徴示唆する病態
正常爪淡紅色・透明感あり・縦のスジ健康な爪の色
爪床蒼白爪全体が白っぽい貧血(ヘモグロビン低下)
爪白線横方向の白い線低アルブミン血症(ネフローゼ症候群など)
爪の肥厚・混濁爪が厚くなる・濁る・縦線が目立つ爪真菌症(爪水虫)
スプーン爪(匙状爪)薄い・もろい・中央が陥凹しスプーン状鉄欠乏性貧血
爪の色・形の異常と対応疾患を一枚で整理した比較表。「白い爪は貧血、横線は低アルブミン、厚く濁れば爪真菌症、へこんだらスプーン爪」
爪の色・形の異常と対応疾患を一枚で整理した比較表。「白い爪は貧血、横線は低アルブミン、厚く濁れば爪真菌症、へこんだらスプーン爪」

口唇の色と口臭 ― においで疾患を当てる

口唇は毛細血管が透けて見える部位のため、血液の性状がそのまま色に出ます。さらに国試で強いのが口臭です。「特徴的なにおい=特定の疾患」というパターンで確実に得点できます。

口臭の原因には、局所要因として口内炎・歯槽膿漏・鼻腔/副鼻腔炎・肺化膿症・気管支拡張症があります。一方で全身疾患を示す特徴的な口臭は以下のとおりで、こちらが試験の本命です。

においの種類示唆する病態
アルコール臭飲酒
尿臭(アンモニア臭)尿毒症
アセトン臭(甘酸っぱい果実様)糖尿病性昏睡・高度アシドーシス
肝性口臭肝性昏睡
口唇色の3パターンと、口臭から疾患を推定する要点まとめ。唇の色と口臭は全身疾患のサイン
口唇色の3パターンと、口臭から疾患を推定する要点まとめ。唇の色と口臭は全身疾患のサイン

舌と味覚の異常 ― 白い舌・赤い舌・ブツブツの舌

正常な舌は赤みがあり湿潤しています。舌は脱水や栄養障害、感染症で真っ先に見た目が変わるため、体表診察のなかでも情報量の多い部位です。

味覚検査もセットで問われます。甘味=砂糖水、酸味=酢酸、塩味=食塩水、苦味=硫酸マグネシウムを用い、顔面神経障害では味覚が低下します(舌前2/3の味覚を顔面神経の枝である鼓索神経が支配するため)。

覚え方は「白い舌は舌苔、赤くツルツルはB12欠乏、ブツブツ赤いのはいちご舌」です。

舌の所見示唆する疾患・病態
舌苔(白い苔)脱水・消化器疾患・熱性疾患
ハンター舌炎(赤くツルツル)ビタミンB12欠乏
いちご舌(赤くブツブツ)猩紅熱
巨大舌先端巨大症・甲状腺機能低下症・アミロイドーシス
舌振戦アルコール中毒・甲状腺機能亢進症
味覚検査に用いる4つの溶液と、舌の異常所見5パターンのまとめ
味覚検査に用いる4つの溶液と、舌の異常所見5パターンのまとめ

咽頭・扁桃・口蓋垂・喉頭の診察 ― 口を開けさせて診る

口腔内をのぞくと、感染症だけでなく脳神経障害まで評価できます。とくに口蓋垂の偏りと嗄声は神経系の設問として頻出です。

軟口蓋・口蓋垂では迷走神経麻痺を評価します。麻痺があると鼻声になり、水を飲むと鼻へ逆流し、口蓋垂が健側へ偏位する「カーテン徴候」が出現します。喉頭は発声器官であり、炎症・腫瘍・反回神経麻痺嗄声(させい)をきたします。

まとめると「偽膜ならジフテリア、口蓋垂偏位なら迷走神経、声がかれるなら反回神経」。この3点セットで確実に取り切りましょう。

所見対応する疾患・障害
偽膜ジフテリア
高熱+咽頭痛+膿栓扁桃炎
強い発赤猩紅熱
カーテン徴候(口蓋垂が健側へ偏位)・鼻声・水の鼻への逆流迷走神経麻痺
嗄声反回神経麻痺(喉頭の炎症・腫瘍でも)
咽頭・扁桃・軟口蓋/口蓋垂・喉頭の所見と疾患の対応表
咽頭・扁桃・軟口蓋/口蓋垂・喉頭の所見と疾患の対応表

胸郭変形と肺肝境界 ― 見て・触って・打診する

胸部診察は見て・触って・打診して異常を見逃さないことが基本です。まずは胸の形(胸郭変形)を3パターンで押さえます。

覚え方は「出れば鳩胸、へこれば漏斗胸、丸ければ樽状胸」です。

次に打診で調べるのが肺肝境界。肺と肝臓の境目のことで、打診音が清音(ポンポン)から濁音(ドンドン)へ変化する部位右鎖骨中線上で確認します。正常では第6肋骨付近にあり、肺気腫では下降(肺が過膨張するため)、肝腫大では上昇します。樽状胸と肺肝境界の下降がどちらも肺気腫の所見である点は、まとめて覚えると強力です。

項目所見示唆する疾患
胸郭変形鳩胸(胸骨突出)くる病
胸郭変形漏斗胸(胸骨陥凹)マルファン症候群
胸郭変形樽状胸(前後径↑)肺気腫
肺肝境界正常=右鎖骨中線上・第6肋骨付近
肺肝境界下降肺気腫
肺肝境界上昇肝腫大
胸郭変形3パターンと肺肝境界の打診所見の超要約
胸郭変形3パターンと肺肝境界の打診所見の超要約

特徴的な姿勢・体位 ― 姿勢を見ただけで病態がわかる

姿勢の観察は診断の重要な手がかりです。とくに神経疾患では、障害された部位によって取る姿勢が決まっています

マン・ウェルニッケ肢位は脳血管障害による片麻痺で出現する代表的姿勢で、上肢は屈曲・手関節は内側へ曲がる・下肢は伸展・足先は内側へ向くのが特徴。脳の損傷により筋緊張のバランスが崩れて起こります。パーキンソン病では頭部前屈・背中が丸くなる・肘を曲げる前かがみ姿勢となり、小刻み歩行・すくみ足・振戦・筋強剛を伴います。

重症脳障害でみられる異常姿勢が除脳硬直除皮質硬直です。どちらも意識障害の重い患者でみられますが、障害部位と上肢の肢位、そして予後が異なります。覚え方のコツは「脳=まっすぐ伸びる(伸展)、皮=曲がって守る(屈曲)」

さらに、病態によって特徴的な体位を自らとることがあります。「こう(後弓)で反り、エビで丸くなり、起きて座ると楽になる!」と唱えて覚えましょう。

姿勢・体位特徴原因となる病態
マン・ウェルニッケ肢位上肢屈曲・手関節内側・下肢伸展・足先内側脳卒中による片麻痺
前かがみ姿勢頭部前屈・背中が丸い・肘屈曲、小刻み歩行を伴うパーキンソン病
除脳硬直四肢伸展・手関節屈曲・全身硬直、予後不良中脳〜橋の障害
除皮質硬直上肢屈曲・下肢伸展・全身の筋緊張亢進、予後は比較的良い大脳半球・内包の障害
後弓反張背中が強く反り、頭と踵が後方へ反る髄膜炎・破傷風
エビ姿勢股関節・膝関節屈曲で丸くなる急性腹膜炎・強い腹痛
起座位(起座呼吸)座位・前かがみで呼吸が楽になる心不全・重症肺疾患
後弓反張・エビ姿勢・起座位と、国試頻出の異常姿勢まとめ
後弓反張・エビ姿勢・起座位と、国試頻出の異常姿勢まとめ

乳房の診察 ― 圧痛・腫瘤・女性化乳房

乳房は視診+触診で評価し、座位と仰臥位の両方で触診するのが原則です。体位を変えることで、乳腺の落ち方が変わり触れにくい腫瘤も拾えます。

圧痛があれば急性乳腺炎をまず考えますが、炎症性乳癌でも圧痛が出るため「痛い=炎症だから良性」と決めつけないことが重要です。ここは国試の引っかけポイントでもあります。

腫瘤(しこり)を触れたら、以下の項目を系統的に確認します。

女性では乳腺症や乳癌で腫瘤を認めることがあります。一方、男性の乳房が女性のように腫脹し、硬い乳腺組織を触れる状態を女性化乳房といいます。原因として重要なのが肝硬変で、肝でのホルモン代謝異常によりエストロゲンが相対的に過剰となって生じます。男性+乳房腫脹+硬い乳腺=女性化乳房=肝硬変という流れで覚えてください。

所見確認事項・示唆する病態
診察法視診+触診。座位と仰臥位の両方で触診する
圧痛あり急性乳腺炎。ただし炎症性乳癌でも圧痛が出るため注意
腫瘤の確認項目部位・大きさ・硬さ・表面性状・可動性・圧痛の有無・深さ・形・弾性・境界・波動性
女性の腫瘤乳腺症・乳癌で認めることがある
女性化乳房男性の乳房が女性のように腫脹し硬い乳腺組織を触れる。肝硬変によるホルモン代謝異常
女性化乳房のメカニズム。肝硬変→ホルモン代謝異常→男性の乳房腫脹と硬い乳腺組織
女性化乳房のメカニズム。肝硬変→ホルモン代謝異常→男性の乳房腫脹と硬い乳腺組織
国試ポイント
① 爪床蒼白=貧血、爪白線(横線)=低アルブミン血症、肥厚・混濁=爪真菌症、スプーン爪(匙状爪)=鉄欠乏性貧血。正常爪は淡紅色・透明感・縦のスジ。
② 口唇は蒼白=貧血、暗紫色=チアノーゼ、暗赤色=多血症。口臭はアセトン臭=糖尿病性昏睡、尿臭=尿毒症、肝性口臭=肝性昏睡。
③ 舌苔=脱水、ハンター舌炎=ビタミンB12欠乏、いちご舌=猩紅熱、巨大舌=先端巨大症など、舌振戦=アルコール中毒・甲状腺機能亢進症。味覚は顔面神経障害で低下。
④ 口腔内は偽膜=ジフテリア、高熱+咽頭痛+膿栓=扁桃炎、カーテン徴候(口蓋垂が健側へ偏位)=迷走神経麻痺、嗄声=反回神経麻痺。
⑤ 胸郭変形は鳩胸(突出)=くる病、漏斗胸(陥凹)=マルファン症候群、樽状胸(前後径↑)=肺気腫。
⑥ 肺肝境界は右鎖骨中線上で打診し、清音→濁音に変わる部位。正常は第6肋骨付近で、肺気腫では下降・肝腫大では上昇する。
・ 異常姿勢はマン・ウェルニッケ肢位=脳卒中片麻痺(上肢屈曲・下肢伸展)、除脳硬直=中脳〜橋・四肢伸展・予後不良、除皮質硬直=大脳半球/内包・上肢屈曲、後弓反張=髄膜炎/破傷風、エビ姿勢=急性腹膜炎、起座位=心不全。
・ 乳房は座位と仰臥位で視診+触診。圧痛は急性乳腺炎だけでなく炎症性乳癌でもみられる。男性の女性化乳房は肝硬変によるホルモン代謝異常が原因。
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