診察の基本手技は、視診・打診・測定法という「道具をほとんど使わずに情報を得る方法」が中心です。見る(視診・顔貌・体型)、叩く(打診・声音振盪)、測る(測定法)という3つの軸で整理すると、バラバラに見える知識が一本につながります。国家試験では打診音と疾患の組み合わせ、特徴的な顔貌の名前、体格異常の内分泌疾患が繰り返し問われます。
| 含まれる項目 | 視診/顔貌・顔色/体型・体格/打診法/声音振盪と肺の打診/呼吸音と副雑音/測定法 |
|---|---|
| 見る手技 | 視診(体格・表情・顔色・姿勢・歩き方・身だしなみ・動作・全身状態) |
| 叩く手技 | 打診(清音・濁音・鼓音・過共鳴音)、肺肝境界の確認 |
| 触れる・聴く手技 | 声音振盪(背部に手を当て振動の左右差を比較)、聴診(呼吸音・副雑音・音声聴診) |
| 測る手技 | 身長・体重・四肢長・周径・胸囲・腹囲・骨盤囲 |
| 目的 | 見ただけでは分からない変化を客観的・数値的にとらえ、臓器や組織の状態を推測する |
| 代表的な陽性所見 | 声音振盪減弱=気胸・胸水・肺気腫/過共鳴音=気胸・肺気腫/濁音=肺炎・無気肺・胸水 |
| 国試の狙われ方 | 打診音と臓器・疾患の対応、特徴的顔貌と疾患名、副雑音と疾患名、巨人症と先端巨大症の違い |
視診は患者が診察室に入ってきた時点から始まっています。歩き方や表情、身だしなみといった何気ない情報が、そのまま疾患の手がかりになります。
ただし視診だけで決めつけず、他の診察や検査で確認することが大切です。
顔貌・顔色は、顔の表情や色を観察して全身状態や疾患の有無を推測する診察法です。健常者は「表情が豊か・眼に活気がある・顔色が良い」の3つがそろいます。病気があると特徴的な顔貌が現れることがあり、国試では顔貌の名称と疾患の組み合わせがストレートに問われます。
| 顔貌 | 特徴 | みられる疾患・状態 |
|---|---|---|
| 無欲状顔貌 | 無表情、眼光が鈍い、周囲への反応が乏しい | 腸チフス・敗血症・粟粒結核・うつ病・脳疾患・中毒(高熱や重症疾患でみられる) |
| ヒポクラテス顔貌 | 意識混濁、眼がくぼむ、眼光が鈍い、頬がこける、鼻がとがる | 消耗性疾患・重症感染症・終末期患者(死期が近い=予後不良を示す重要所見) |
| 仮面様顔貌 | 顔面筋が硬い、まばたき減少、表情変化が少ない、脂っぽい顔になることも | パーキンソン病(国家試験頻出) |
| 満月様顔貌(ムーンフェイス) | 顔全体が丸い、頬が赤い、多毛を伴うことがある | クッシング症候群・副腎皮質ステロイド長期使用 |
体型=身体の形やバランス、体格=身長や体型を含めた身体全体の発育状態です。この定義の違い自体が問われます。評価ポイントは身長・手足の長さ・身体のバランス・発育状態の4つで、全身の発育状態を総合的に判断します。
| 疾患 | 発症のタイミング | 特徴 |
|---|---|---|
| 巨人症 | 成長期(骨端線閉鎖前)の下垂体機能亢進=成長ホルモン過剰 | 身長が著しく高い、四肢が長い、手足が大きい |
| 先端巨大症 | 骨端線閉鎖後に成長ホルモンが過剰になる | 鼻が大きい、口唇が厚い、下顎突出、額が突出 |
| 低身長症 | 同年代と比べて著しく身長が低い状態 | 知能や性発育が遅れることもある。原因=体質性発育遅延・骨疾患(くる病など)・全身性疾患・内分泌疾患・先天異常 |
| マルファン症候群 | 先天異常 | 高身長・四肢長大・くも指が特徴 |
打診は身体を指で軽く叩き、発生する音や振動を調べて臓器や組織の状態を判断する診察法です。
| 打診音 | 性質 | 聴かれる部位・状態 |
|---|---|---|
| 清音(せいおん) | 響きが大きく音量も大きい | 正常な肺(正常肺野) |
| 濁音(だくおん) | 空気が少ない場所で聞こえる。響きが小さく抵抗感が強い | 心臓・肝臓・肺炎部位 |
| 鼓音(こおん) | 太鼓のようによく響く。空気が多い場所で聞こえる | 胃・腸管 |
声音振盪(せいおんしんとう)は、患者の背部に手を当てて「ひとーつ、ひとーつ」と発声してもらい、振動の伝わり方を左右で比較する手技です。正常では左右差がありません。
| 異常所見 | 空気量 | 代表疾患 |
|---|---|---|
| 過共鳴音(かきょうめいおん) | 空気が増える | 気胸・肺気腫 |
| 濁音 | 空気が減る | 肺炎・肺腫瘍・無気肺・胸水貯留 |
| 声音振盪 減弱 | 音の伝導が悪化 | 気胸・胸水貯留・胸膜肥厚・肺気腫 |
打診・声音振盪とセットで問われるのが聴診です。まず正常呼吸音3種類を、聞き取れる場所とセットで覚えます。
| 呼吸音 | 性質 | 聴取部位 |
|---|---|---|
| 肺胞呼吸音 | 柔らかい・低調・吸気時によく聞こえる | 正常肺野 |
| 気管・気管支呼吸音 | 高調・呼気が長い | 喉頭・気管 |
| 気管支肺胞呼吸音 | 上記2つの中間 | 右肺尖・鎖骨下 |
副雑音は名称と疾患の組み合わせが定番の出題です。英語名と日本語名の両方を押さえましょう。音声聴診は声音振盪の聴診器版で、減弱する疾患も声音振盪と共通します。
| 副雑音・異常音 | 日本語名・特徴 | 代表疾患 |
|---|---|---|
| Wheezing | 笛声音 | 気管支喘息 |
| Rhonchi | いびき音 | 慢性気管支炎 |
| Coarse crackles | 水泡音 | 気管支拡張症 |
| Fine crackles | 捻髪音 | 肺線維症・肺炎 |
| 胸膜摩擦音 | きしむような音 | 胸膜炎 |
| 音声聴診 | 「ひとーつ、ひとーつ」を聴診器で聞く | 胸水・気胸・胸膜肥厚で減弱 |
測定法は身体の長さ・太さ・重さなどを数値で測り、左右差や異常の有無を確認する診察法です。見ただけでは分かりにくい変化を、感覚ではなく数字で客観的に確認します。