腰から膝まで、下肢の徒手検査は「どの姿勢で・どこを動かし・どこが痛むか」の3点セットで整理すると一気に覚えられます。このページでは大腿神経伸展テスト(L2〜L4神経根)、ガワース・ブラガード徴候(L4〜S1神経根)、上殿神経域圧迫テスト(腰椎椎間板ヘルニア)、膝の靱帯検査(側方動揺性・前方引き出し・ラックマン)を、神経根由来か靱帯由来かで分けて対比します。国試では手技と陽性所見の組み合わせが入れ替えられて出題されるので、表で丸ごと押さえましょう。
| 含まれる検査 | 大腿神経伸展テスト(FNST)/ガワース・ブラガード徴候/上殿神経域圧迫テスト/膝側方動揺性検査/前方引き出しテスト/ラックマンテスト |
|---|---|
| 検査体位 | 腹臥位(FNST)・背臥位(ブラガード徴候/膝検査)・腹臥位または立位で殿部を触診(上殿神経域圧迫テスト) |
| 主な目的 | 腰椎神経根障害(高位の鑑別)・腰椎椎間板ヘルニア・坐骨神経痛の評価と、膝靱帯損傷の責任靱帯の特定 |
| 代表的な手技 | 膝屈曲+股関節伸展/SLR+足関節背屈/殿部外上方1/4中央部の圧迫/外反・内反ストレス/膝90°屈曲位で下腿を前方へ引き出す |
| 陽性所見 | 大腿前面痛(FNST)・下肢放散痛の増強(ブラガード)・殿部の圧痛(上殿神経域)・側方動揺の増大/下腿の前方引き出し(膝) |
| 対応する神経根・組織 | L2〜L4(大腿神経)/L4〜L5・L5〜S1(坐骨神経)/上殿神経(梨状筋上孔)/内側・外側側副靱帯、前十字靱帯 |
| 国試の狙われ方 | 「腹臥位で行うのはどれか」「陽性なら損傷靱帯はどれか」「SLRに足背屈を加える徴候名は」など、体位・手技・責任組織の組み合わせ問題 |
| 共通の注意点 | 健常者にもある程度の可動性・動揺があるため、必ず健側と患側を比較して判断する |
下肢の徒手検査はバラバラに暗記すると必ず混乱します。まずは大きく2つのグループに分けてください。
さらに神経根系は「前か後ろか」で二分できます。大腿神経は身体の前面(大腿前面)を支配し、坐骨神経は後面(下肢後面)へ放散します。したがって腹臥位で股関節を伸ばして前面が痛めば大腿神経(L2〜L4)、背臥位で脚を上げて後面が痛めば坐骨神経(L4〜S1)という対応関係で覚えると、体位まで自然に思い出せます。
| グループ | 検査名 | 体位 | 陽性で疑うもの |
|---|---|---|---|
| 神経根(前面) | 大腿神経伸展テスト(FNST) | 腹臥位 | L2〜L4神経根障害(大腿神経の伸張痛) |
| 神経根(後面) | ガワース・ブラガード徴候 | 背臥位 | L4〜L5・L5〜S1神経根刺激、坐骨神経痛 |
| 神経(圧痛) | 上殿神経域圧迫テスト | 殿部を触診 | 腰椎椎間板ヘルニア(患側でより顕著) |
| 膝靱帯 | 側方動揺性検査 | 背臥位・膝伸展 | 内側/外側側副靱帯損傷 |
| 膝靱帯 | 前方引き出しテスト・ラックマンテスト | 背臥位・膝屈曲 | 前十字靱帯(ACL)損傷 |
大腿神経伸展テスト(Femoral Nerve Stretch Test)は、大腿神経を意図的に引き伸ばしてL2〜L4神経根障害を評価する検査です。上位腰椎椎間板ヘルニアの検出に重要で、SLRテストが陰性でも本テストが陽性になることがあります。
大腿神経はL2・L3・L4から出て、鼠径部を通り大腿前面へ分布します。膝を曲げて股関節を伸ばすと大腿神経が最大限に引き伸ばされ、神経根が障害されていると伸張痛として大腿前面に放散するわけです。支配領域=痛む場所、と結びつけて理解しましょう。
一発暗記:うつ伏せで膝を曲げて、股関節を伸ばして大腿前面痛!
ガワース・ブラガード徴候は、SLR(下肢伸展挙上)テストの上乗せ検査です。SLRだけでは筋の緊張や関節の問題との区別が難しいため、さらに足関節を背屈して坐骨神経を追加で伸張し、神経由来かどうかを確かめます。
覚え方:SLR+足首背屈で痛み増強 → ブラガード陽性。「大腿神経伸展テストは腹臥位・前面」「ブラガードは仰向け・後面」と、必ずセットで対比して記憶してください。
| 比較項目 | 大腿神経伸展テスト | ガワース・ブラガード徴候 |
|---|---|---|
| 体位 | 腹臥位(うつ伏せ) | 背臥位(仰向け) |
| 膝関節 | 屈曲させる | 伸展したまま |
| 加える操作 | 股関節を伸展 | 股関節屈曲+足関節背屈 |
| 痛みの部位 | 大腿前面 | 下肢(後面)への放散痛 |
| 対象神経 | 大腿神経 | 坐骨神経 |
| 神経根高位 | L2〜L4 | L4〜L5・L5〜S1 |
上殿神経域圧迫テストは、器具も特別な肢位も要らない圧痛の検査です。腰椎椎間板ヘルニアの補助的評価として用いられます。
上殿神経は梨状筋上孔から骨盤外へ出て、腸骨稜に沿って殿部深層を外下方へ走行します。だからこそ圧痛の好発点が殿部の外上方1/4に来るわけです。「梨状筋上孔=上殿神経」「梨状筋下孔=下殿神経・坐骨神経」という対比は国試頻出なので、この検査とセットで覚えると取りこぼしません。
一発暗記:お尻の外上を押して、上殿神経の圧痛をみる!
膝の側方動揺性検査は、膝を伸ばした状態で下腿に外反・内反のストレスを加え、横方向のグラつき(側方動揺)を確認する検査です。目的は原因靱帯の特定にあります。
ここは方向と靱帯を逆に覚えてしまう人が非常に多い場所です。「靱帯は引き伸ばされる側が壊れている」——外反すると内側が開くので内側側副靱帯、内反すると外側が開くので外側側副靱帯、と力学で考えれば取り違えません。
一発暗記:横にグラつく=側副靱帯。
| 加えるストレス | 開く側 | 損傷が疑われる靱帯 |
|---|---|---|
| 外反ストレス | 膝の内側 | 内側側副靱帯(MCL) |
| 内反ストレス | 膝の外側 | 外側側副靱帯(LCL) |
前方引き出しテストは、膝を90°屈曲位にして下腿を前方へ引き出す検査です。下腿が前方へ大きく引き出されれば前十字靱帯(ACL)損傷を疑います。ACL評価の基本手技です。
膝の靱帯検査は「動く方向=壊れた靱帯」で整理できます。横にグラつけば側副靱帯、前に出れば前十字靱帯。この2行で膝の靱帯問題の大半に対応できます。
| 検査名 | 膝の屈曲角度 | 操作 | 陽性で疑う靱帯 |
|---|---|---|---|
| 前方引き出しテスト | 90°屈曲位 | 下腿を前方へ引き出す | 前十字靱帯(ACL) |
| ラックマンテスト | 20〜30°屈曲位 | 下腿を前方へ引き出す(有用性が高い) | 前十字靱帯(ACL) |
| 外反ストレステスト | 伸展位 | 下腿を外反させる | 内側側副靱帯(MCL) |
| 内反ストレステスト | 伸展位 | 下腿を内反させる | 外側側副靱帯(LCL) |
最後に、このページで扱った下肢の徒手検査をひとつの表に集約します。試験直前はここだけ見返せば十分です。
| 検査名 | 体位・肢位 | 手技 | 陽性所見 | 示唆される病態 |
|---|---|---|---|---|
| 大腿神経伸展テスト(FNST) | 腹臥位 | 膝屈曲+股関節伸展 | 大腿前面の痛み | L2〜L4神経根障害 |
| ガワース・ブラガード徴候 | 背臥位 | 膝伸展のまま股関節屈曲→足関節背屈 | 下肢痛・放散痛の増強 | L4〜L5・L5〜S1神経根刺激、坐骨神経痛、腰椎椎間板ヘルニア |
| 上殿神経域圧迫テスト | 殿部を4等分 | 外上方1/4の中央部を圧迫 | 圧痛(患側でより強い) | 腰椎椎間板ヘルニア |
| 側方動揺性検査(外反) | 背臥位・膝伸展 | 外反ストレス | 側方動揺の増大 | 内側側副靱帯損傷 |
| 側方動揺性検査(内反) | 背臥位・膝伸展 | 内反ストレス | 側方動揺の増大 | 外側側副靱帯損傷 |
| 前方引き出しテスト | 背臥位・膝90°屈曲 | 下腿を前方へ引き出す | 下腿が前方へ大きく引き出される | 前十字靱帯損傷 |
| ラックマンテスト | 背臥位・膝20〜30°屈曲 | 下腿を前方へ引き出す | 前方移動の増大 | 前十字靱帯損傷(有用性が高い) |