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食道疾患
食道疾患の病態・分類・症状・診断・治療しょくどうしっかん
食道疾患は消化器分野の中でも国家試験で頻出のテーマです。食道癌 ・食道炎/食道潰瘍 ・逆流性食道炎(GERD) ・食道静脈瘤 はいずれも内視鏡検査(胃カメラ)による診断が共通して重要ですが、原因や治療は疾患ごとに大きく異なります。本記事では4つの代表的な食道疾患を整理して解説します。
読み方 しょくどうしっかん
主な疾患 食道癌/食道炎・食道潰瘍/逆流性食道炎(GERD)/食道静脈瘤
好発部位・臓器の特徴 食道(咽頭〜胃の入口までの管状臓器、成人で約25cm)
主な原因 喫煙・飲酒・熱い飲食物(食道癌)、胃酸逆流・感染・薬剤(食道炎)、下部食道括約筋の機能低下(GERD)、肝硬変による門脈圧亢進(食道静脈瘤)
共通する主症状 嚥下障害・胸やけ・呑酸・胸痛・吐血/下血など
最重要検査 内視鏡検査(胃カメラ)による直接観察が全疾患共通で最重要
主な合併症 食道狭窄・バレット食道・出血・穿孔(食道炎系)、リンパ節/肺/肝転移(食道癌)、大量吐血・出血性ショック(食道静脈瘤)
治療の基本 内視鏡治療/手術/放射線/化学療法(食道癌)、PPI・粘膜保護薬(食道炎・GERD)、EVL・EIS(食道静脈瘤)
特に注意すべき点 食道静脈瘤の破裂は致死率が高い緊急疾患
食道癌 ― 高齢男性に多い扁平上皮癌
食道癌は食道粘膜から発生する悪性腫瘍で、日本人では組織型として扁平上皮癌が約90%以上 を占める。中高年男性、喫煙者、飲酒者に多く、好発部位は胸部中部食道 である。
危険因子 :喫煙(発癌物質が粘膜を傷つける)、飲酒(アセトアルデヒドが粘膜を障害)、熱い飲食物、栄養不足、逆流性食道炎による慢性炎症など病態 :初期は粘膜表面に限局するが、進行すると筋層や周囲臓器へ浸潤し、リンパ節・肺・肝臓などへ転移しやすい主な症状 :嚥下障害(固形物から始まり進行すると水分も通りにくくなる)、体重減少、胸痛・背部痛、嗄声(声のかすれ、反回神経浸潤による) 、咳・肺炎(気管浸潤・食道気管瘻による誤嚥性肺炎)診断 :内視鏡検査(胃カメラ)による病変観察・生検(組織採取)で確定診断。CT検査で転移や浸潤範囲を確認、バリウム検査で食道の狭窄や形態を確認治療 :早期癌には内視鏡治療(EMR・ESDなど)、進行例には手術(食道切除術+胃を用いて再建)、高齢者や手術困難例には放射線療法、進行癌・転移例には化学療法(放射線と併用することもある)
分類 深達度の目安 特徴
早期癌 粘膜・粘膜下層まで 比較的予後良好
進行癌 筋層より深く浸潤 転移リスクが高い
食道癌の原因・病態・症状・診断・分類・治療の全体像
食道炎・食道潰瘍 ― 胃酸逆流や感染で食道粘膜に炎症
食道の粘膜に炎症が起こった状態が「食道炎」、さらに粘膜がえぐれて深い傷になったものが「食道潰瘍」である。食道は胃酸や熱、薬剤などの刺激に弱く、障害を受けやすい。
主な原因 :①胃酸逆流(逆流性食道炎)、②感染(カンジダ、ヘルペスウイルス、CMVなど、特に免疫低下時)、③薬剤性(抗菌薬、NSAIDs、骨粗鬆症薬などが食道に停滞し粘膜を障害)、④熱・化学刺激(熱すぎる飲食物、強酸・強アルカリ、アルコールなど)主な症状 :胸やけ、呑酸(どんさん)、嚥下痛(えんげつう)、嚥下障害、胸痛、吐血・下血診断 :内視鏡検査(胃カメラ)が最も重要。発赤・びらん・潰瘍・出血などを観察し、必要に応じて生検を行う。CT検査(重症例で周囲臓器への影響や合併症を確認)、血液検査(炎症反応や貧血の有無を確認)合併症 :食道狭窄、バレット食道(慢性逆流で粘膜が変化し食道腺癌のリスクとなる)、出血、穿孔治療 :胃酸を抑える(PPIが基本)、H2受容体拮抗薬、粘膜保護薬、感染治療(原因微生物に応じ抗真菌薬・抗ウイルス薬)、生活改善(食後すぐ横にならない、暴飲暴食を避ける、禁煙・節酒)逆流性食道炎の重症度は内視鏡所見によりロサンゼルス分類で評価される。
Grade 内視鏡所見
Grade N 正常
Grade M 粘膜障害なし(軽度発赤など)
Grade A 長さ5mm未満のびらんが1つ以上
Grade B 長さ5mm以上のびらんが1つ以上
Grade C びらんが粘膜の75%未満
Grade D びらんが粘膜の75%以上
食道炎・食道潰瘍の原因・病態・症状・診断・合併症
逆流性食道炎(GERD) ― 胃酸が食道へ逆流して発症
胃酸や胃内容物が食道へ逆流し、食道粘膜に炎症を起こす病気。GERDは「胃食道逆流症」ともいう。下部食道括約筋の働きが弱くなると胃酸が食道へ逆流しやすくなり、食道粘膜が障害される。
主な原因・危険因子 :加齢、肥満、食べすぎ、食後すぐ横になる、脂っこい食事、アルコール、喫煙、妊娠、胃の手術後、食道裂孔ヘルニアなど。特に高齢者では食道と胃の境目の機能が弱くなりやすい主な症状 :胸やけ、呑酸、胸痛、喉の違和感・声がれ、咳(夜間に悪化しやすい)、嚥下痛・嚥下障害。体が横になる夜間は胃酸が逆流しやすく症状が悪化しやすい診断 :内視鏡検査(胃カメラ)で発赤・びらん・潰瘍などの粘膜障害を確認。問診(症状や生活習慣)、必要に応じてpH検査合併症 :食道潰瘍、食道狭窄、出血、バレット食道(食道腺癌のリスクとなる粘膜の変化)治療 :①薬物療法(PPIが治療の中心、H2受容体拮抗薬、粘膜保護薬、消化管運動改善薬)、②生活改善(食後すぐ横にならない、寝る前の食事を避ける、暴飲暴食を避ける、アルコールを控える、禁煙、体重管理)、③感染が原因の場合は抗真菌薬・抗ウイルス薬多くは治療で改善するが再発しやすいため、薬物療法だけでなく生活習慣の改善を続けることが重要である。
逆流性食道炎(GERD)の原因・症状・診断・治療
食道静脈瘤 ― 肝硬変による門脈圧亢進で発生する緊急疾患
食道の静脈が門脈圧の上昇により異常に拡張してこぶ状になった状態。特に食道下部 にできやすく、破裂すると大量出血を起こし命に関わる緊急疾患である。
原因 :肝硬変(最も多い)による門脈圧亢進。肝硬変の原因にはB型肝炎、C型肝炎、アルコール性肝障害、NASH(脂肪肝)などがある。肝硬変により門脈の流れが悪くなると側副血行路が発達し、食道の静脈に血液が流れ込んで拡張し静脈瘤となる病態 :最初は無症状だが、静脈瘤が大きくなると血管壁が薄くなり破裂しやすくなる。赤色所見(red color sign) があると破裂リスクが高い主な症状 :破裂前は多くが無症状(内視鏡検査で偶然発見されることもある)。破裂すると大量吐血、下血・黒色便、血圧低下・意識障害などのショック症状が出現し、命に関わる診断 :内視鏡検査が最も重要(静脈瘤の大きさ・色・形、破裂リスク、出血部位を確認)。CT検査(門脈圧亢進や肝硬変の評価)、血液検査(貧血、肝機能、凝固能などを確認)治療 :出血していない場合(破裂予防)は内視鏡的結紮術(EVL、第一選択)、内視鏡的硬化療法(EIS)、薬物療法。出血した場合(緊急治療)は緊急内視鏡止血、輸血・点滴、バルーンタンポナーデ、手術・シャント術破裂時は死亡率が高く非常に危険なため、早期発見・予防、定期的な内視鏡検査による早期発見が生命を守る鍵となる。
食道静脈瘤の原因(門脈圧亢進の仕組み)・症状・診断・治療
食道疾患のまとめ比較
4つの代表的な食道疾患の原因・症状・診断・治療の要点を比較すると以下のようになる。
疾患名 主な原因 特徴的な症状 診断 治療の基本
食道癌 喫煙・飲酒(扁平上皮癌が多い) 嚥下障害・体重減少・嗄声 内視鏡検査+生検 内視鏡治療/手術/放射線/化学療法
食道炎・食道潰瘍 胃酸逆流・感染・薬剤・熱刺激 胸やけ・呑酸・嚥下痛 内視鏡検査 胃酸を抑える薬・粘膜保護薬
逆流性食道炎(GERD) 下部食道括約筋の機能低下 胸やけ・呑酸・咳(夜間悪化) 内視鏡検査(ロサンゼルス分類) PPI+生活改善
食道静脈瘤 肝硬変による門脈圧亢進 無症状→破裂で大量吐血 内視鏡検査 EVL・EIS、緊急時は止血治療
国試ポイント
① 食道癌は日本人では扁平上皮癌が約90%以上を占め、高齢男性・喫煙・飲酒が危険因子である
② 食道癌が進行すると反回神経浸潤により嗄声(声のかすれ)が生じる点は国試で狙われやすい
③ 逆流性食道炎(GERD)の内視鏡的重症度はロサンゼルス分類(Grade N〜D)で評価する
④ 食道静脈瘤は肝硬変による門脈圧亢進が原因で、破裂すると大量吐血をきたす致死的な緊急疾患である
⑤ 食道疾患全般で内視鏡検査(胃カメラ)による直接観察・生検が診断の基本となる
⑥ バレット食道は慢性的な胃酸逆流により食道粘膜が変化した状態で、食道腺癌のリスク因子となる
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