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神経麻痺による特徴的な手
神経麻痺による特徴的な手の見分け方・原因神経・鑑別のポイントしんけいまひによるとくちょうてきなて
手の形を見ただけで障害された神経や疾患を推定できるのが、視診の醍醐味です。国試では橈骨神経麻痺=下垂手、正中神経麻痺=猿手、尺骨神経麻痺=鷲手 の3対応がまず問われます。さらに関節リウマチの変形・変形性関節症の結節・太鼓ばち指・特殊な手の変形 を加えた5本柱で押さえると、鑑別問題にも強くなります。
読み方 しんけいまひによるとくちょうてきなて
分類 臨床医学総論/神経学的診察・視診(上肢の変形)
目的・意義 手の形態から障害神経・原疾患を推定する
観察法 手指・手関節の肢位、母指球/骨間筋の萎縮、爪と指先の形を視診
三大所見 下垂手(橈骨神経)・猿手(正中神経)・鷲手(尺骨神経)
鑑別すべき変形 関節リウマチ変形、変形性関節症の結節、太鼓ばち指、デュピュイトラン拘縮・鋤手・くも状指
国試での問われ方 「◯◯手をきたす障害神経は?」「変形と疾患の組合せで正しいのは?」
神経麻痺による3つの特徴的な手
上肢の末梢神経麻痺では、麻痺した筋の働きが失われることで拮抗筋が優位になった肢位 が固定して見えます。これが「特徴的な手」です。
下垂手(drop hand) =橈骨神経麻痺。伸筋群が麻痺し、手関節と手指を伸展できず、手がだらりと垂れる。猿手(ape hand) =正中神経麻痺。母指球筋が萎縮して手掌が平坦になり、母指対立ができない 。鷲手(claw hand) =尺骨神経麻痺。骨間筋・虫様筋が麻痺し、MP関節が過伸展、PIP・DIP関節が屈曲。とくに小指・環指 で目立つ。
特徴的な手 障害神経 主な所見 覚え方
下垂手 橈骨神経 手関節・手指が伸展できず垂れ下がる 橈骨=伸ばせない=垂れる
猿手 正中神経 母指球萎縮・母指対立不能・手掌が平ら 正中=サル(猿手)
鷲手 尺骨神経 骨間筋麻痺・小指/環指が屈曲しワシの爪状 尺骨=ワシ(鷲手)
橈骨=下垂手、正中=猿手、尺骨=鷲手の3対応
関節リウマチによる手指変形
関節リウマチ(RA)は滑膜の慢性炎症による関節破壊 のため、進行すると手指に特徴的な変形をきたします。神経麻痺の手との違いは、関節そのものの破壊・変形 である点です。
朝のこわばり、多発性・対称性の関節腫脹を伴う。 MP関節がゆるみ、指全体が小指側へずれていく(尺側偏位)。
変形名 関節の状態 イメージ
スワンネック変形 PIP過伸展+DIP屈曲 白鳥の首のようにしなる
ボタン穴(ボタンホール)変形 PIP屈曲+DIP過伸展 ボタン穴にくぼんで落ち込む
手指尺側偏位 MP関節で指が尺側(小指側)へ偏位 指が小指側に流れる
RAの三大手指変形:スワンネック・ボタン穴・尺側偏位
変形性関節症の結節(ヘバーデン・ブシャール)
変形性関節症では関節軟骨がすり減り、骨棘(骨の変形)ができて指の関節がコブのように膨らみます。中高年女性に多い のが特徴です。
ヘバーデン結節 =DIP関節 (指の一番先の関節)。「ヘバーデンは遠位」。ブシャール結節 =PIP関節 (指の第二関節)。「ブシャールは近位」。RAと違い、炎症性の全身症状や朝のこわばりは目立たない。
結節 部位 日本語 多い人
ヘバーデン結節 DIP関節 遠位指節間関節 中高年女性
ブシャール結節 PIP関節 近位指節間関節 中高年女性
ヘバーデン=DIP(遠位)、ブシャール=PIP(近位)
太鼓ばち指(ばち状指)と全身疾患
太鼓ばち指(ばち状指、クラビング) は、指先が膨隆して爪の角度が大きくなる状態です。手そのものの病気ではなく、心肺疾患のサイン として重要です。
正常の爪と皮膚のなす角度は約160度 。太鼓ばち指では180度近く まで増大する。 原因:チアノーゼを伴う先天性心疾患 、慢性肺疾患 (肺がん、慢性気管支炎、肺線維症、気管支拡張症など)。 慢性の低酸素状態が背景にあるため、全身の精査につながる所見。
項目 正常 太鼓ばち指
指先 膨隆なし 指先が膨隆する
爪の角度 約160度 180度近くまで増大
背景疾患 ― 先天性心疾患・慢性肺疾患など
爪の角度は正常約160度、太鼓ばち指では180度近くに増大
その他の代表的な手の変形
神経麻痺・RA・変形性関節症以外にも、原因疾患と結び付けて覚えるべき手の変形があります。
デュピュイトラン拘縮 :手掌腱膜が肥厚 し、小指・環指 が屈曲拘縮。手のひらのしこりやつっぱりが特徴。鋤手(すきて) :先端巨大症(下垂体からの成長ホルモン過剰) で手が大きくなり、広くて厚い手掌になる。くも状指 :マルファン症候群 でみられ、指が細長く蜘蛛の足のように見える。
変形 原因疾患 キーワード
デュピュイトラン拘縮 手掌腱膜の肥厚 小指・環指の屈曲拘縮
鋤手 先端巨大症 広く厚い大きな手掌
くも状指 マルファン症候群 細長い指・高身長
デュピュイトラン拘縮・鋤手・くも状指と原因疾患
国家試験に向けたまとめ(5本柱)
手の変形は①神経麻痺の手 ②リウマチの変形 ③変形性関節症の結節 ④太鼓ばち指 ⑤特殊変形 の5本柱で整理すると、組合せ問題に強くなります。
①橈骨=下垂手/正中=猿手/尺骨=鷲手 ②スワンネック(PIP過伸展+DIP屈曲)/ボタン穴(PIP屈曲+DIP過伸展)/尺側偏位 ③ヘバーデン=DIP/ブシャール=PIP ④心肺疾患で指先が膨隆し爪の角度が増大 ⑤デュピュイトラン=手掌腱膜/鋤手=先端巨大症/くも状指=マルファン症候群
5本柱で覚える手の変形の総まとめ
国試ポイント
① 橈骨神経麻痺=下垂手(手関節・手指が伸展できない)が最頻出。
② 正中神経麻痺=猿手。母指球萎縮と母指対立不能がキーワード。
③ 尺骨神経麻痺=鷲手。骨間筋麻痺で小指・環指がとくに屈曲する。
④ スワンネック変形はPIP過伸展+DIP屈曲、ボタン穴変形はその逆(PIP屈曲+DIP過伸展)。入れ替えの引っかけに注意。
⑤ ヘバーデン結節=DIP関節(遠位)、ブシャール結節=PIP関節(近位)。中高年女性に多い。
⑥ 太鼓ばち指は爪の角度が正常約160度から180度近くへ増大。先天性心疾患・慢性肺疾患を疑う。
・ デュピュイトラン拘縮は手掌腱膜の肥厚で小指・環指が屈曲。鋤手=先端巨大症、くも状指=マルファン症候群。
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