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歩行・起立の観察の手順とポイント|異常歩行の種類と原因疾患ほこう・きりつのかんさつ

歩行・起立の観察は、特別な器具を使わず「立ち上がり方」と「歩き方」を見るだけで病変部位を推測できる、臨床医学総論でも効率の高い診察法です。国家試験では「異常歩行の名前」と「原因疾患」をセットで問う問題が繰り返し出題されます。ここでは代表的な異常歩行に加え、登はん性起立(ガワーズ徴候)や継足歩行・つま先歩行・踵歩行・ロンベルグ徴候まで一気に整理します。

歩行・起立の観察|歩行・起立の観察 1
読み方ほこう・きりつのかんさつ
分類臨床医学総論/神経学的診察・視診(運動系の診察)
目的・意義歩き方・立ち上がり方の異常から、錐体路・小脳・深部感覚・末梢神経・筋・骨関節のどこに障害があるかを推測する
観察項目姿勢、腕の振り、足の運び方、歩幅、左右差、歩行の規則性、急停止、方向転換
代表的な異常歩行突進歩行/痙性片麻痺歩行(分回し歩行)/痙性対麻痺歩行(はさみ脚歩行)/失調性歩行/鶏歩/動揺性歩行/間欠性跛行/トレンデレンブルグ歩行/疼痛性跛行/随意性跛行/ヒステリー性歩行
負荷をかけた歩行検査継足歩行(つぎ足歩き)・つま先歩行・踵歩行
起立の観察登はん性起立(ガワーズ徴候)=下肢近位筋の筋力低下。代表はデュシェンヌ型筋ジストロフィー
立位の平衡検査ロンベルグ徴候:閉眼で著明に動揺すれば陽性=感覚性(脊髄性)失調

歩行・起立の観察とは?何を見るのか

歩行・起立の観察は、患者が診察室に入ってくる瞬間から始まっている診察です。運動失調では「立つ」「歩く」動作にも異常が現れるため、静止した姿勢だけでなく動きの中で評価することが重要になります。

歩行障害は神経疾患だけでなく、骨・関節・筋の疾患でも起こる点に注意しましょう。「歩き方の特徴 → 原因の推測」という流れが診察の本体です。

起立と歩行の観察で見るべきポイント(姿勢・腕の振り・足の運び方・歩幅・左右差)
起立と歩行の観察で見るべきポイント(姿勢・腕の振り・足の運び方・歩幅・左右差)

国試頻出!異常歩行の種類と原因疾患

国家試験では「歩行の名前 ↔ 原因疾患」を結びつける問題が最頻出です。特に混同しやすいのが、痙性片麻痺歩行(分回し歩行=片側)痙性対麻痺歩行(はさみ脚歩行=両側)の区別、そして鶏歩(腓骨神経麻痺・足下垂)動揺性歩行(筋ジストロフィー・近位筋)の区別です。

異常歩行原因疾患・病態特徴
突進歩行パーキンソン病前かがみ姿勢・小刻み歩行・歩くほど速くなる・止まりにくい(前方突進現象)
痙性片麻痺歩行(分回し歩行)脳卒中後の片麻痺麻痺側下肢が伸展し足先を引きずり、外側へ半円を描いて運ぶ。ウェルニッケ・マン肢位を伴う
痙性対麻痺歩行(はさみ脚歩行)両側の錐体路障害(脳性麻痺など)両膝が交差し、つま先歩行で歩幅が狭い
失調性歩行小脳障害・深部感覚障害ふらつく・千鳥足・左右へよろめく・不安定
鶏歩腓骨神経麻痺(足下垂)足関節・足趾の背屈ができず、膝を高く上げて足先を引きずる
動揺性歩行(アヒル歩行)筋ジストロフィーなど近位筋の筋力低下骨盤が左右に揺れ、腰椎前弯(反り腰)、体幹が左右へ動揺
トレンデレンブルグ歩行股関節疾患・中殿筋機能低下(先天性股関節脱臼で有名)遊脚側の骨盤が下がり、患側へ体幹を傾けてバランスをとる跛行
間欠性跛行閉塞性動脈硬化症歩行中に下肢痛が出て歩けなくなる→休むと改善し再び歩ける
疼痛性跛行下肢の痛み患側への荷重を避ける・接地時間が短い・健側へ早く体重移動
随意性跛行股関節結核など(精神的要素が関与)意識すると正常歩行、時間が経つと跛行が出現
ヒステリー性歩行心因性疾患歩き方が一定せず誇張的。他人が見ていないと正常。器質的異常なし
異常歩行と原因疾患の対応まとめ(疼痛性跛行と随意性跛行の鑑別表つき)
異常歩行と原因疾患の対応まとめ(疼痛性跛行と随意性跛行の鑑別表つき)

神経疾患による歩行の見分け方(錐体路・小脳・末梢神経)

異常歩行は「どこが壊れているか」で系統立てて覚えると忘れません。

失調が疑われるときは、継足歩行(つぎ足歩き)で誇張して確認します。左右の足を一直線上にそろえて歩かせると、運動失調では著しく不安定になります。つま先歩行・踵歩行も同様に負荷をかけた検査で、つま先歩行ができなければ下腿三頭筋・脛骨神経系、踵歩行ができなければ前脛骨筋・腓骨神経系のチェックになります。

継足歩行(つぎ足歩き)。運動失調では開脚歩行になりやすく継足は不安定になる
継足歩行(つぎ足歩き)。運動失調では開脚歩行になりやすく継足は不安定になる

起立の観察 ― 登はん性起立(ガワーズ徴候)

床から立ち上がる動作にも重要な情報があります。登はん性起立(ガワーズ徴候)は、床から立ち上がるときに膝や太ももに手をつき、自分の体をよじ登るようにして立ち上がる所見です。

観察のポイントは「起立時に手を使っているか」「太ももを触りながら立つか」「左右差はあるか」の3点です。

登はん性起立(ガワーズ徴候)の4ステップ。下肢近位筋の筋力低下を示す
登はん性起立(ガワーズ徴候)の4ステップ。下肢近位筋の筋力低下を示す

立位の平衡検査 ― ロンベルグ徴候で失調を分ける

立位の安定性を見る代表がロンベルグ徴候です。両足のつま先をそろえて立たせ、開眼時と閉眼時の動揺を比較します。

「閉眼で急に悪くなる=感覚性」「開眼でもふらつく=小脳性」と覚えると混乱しません。

ロンベルグ徴候。小脳性失調と脊髄性失調の開眼・閉眼での違い
ロンベルグ徴候。小脳性失調と脊髄性失調の開眼・閉眼での違い
国試ポイント
① 突進歩行=パーキンソン病。前かがみ・小刻み・歩くほど速くなり止まりにくい(前方突進現象)
② 分回し歩行=痙性片麻痺(脳卒中後・片側)、はさみ脚歩行=痙性対麻痺(両側錐体路障害)。片側か両側かで区別する
③ 鶏歩=腓骨神経麻痺(足下垂・背屈不能)、動揺性歩行=筋ジストロフィーなど近位筋の筋力低下。原因の筋・神経が違う引っかけに注意
④ トレンデレンブルグ歩行=中殿筋機能低下・股関節疾患。先天性股関節脱臼が有名で、患側へ体幹を傾けてバランスをとる
⑤ 間欠性跛行=閉塞性動脈硬化症。歩くと痛い→休むと改善し再び歩ける、が決め手
⑥ 登はん性起立(ガワーズ徴候)=下肢近位筋の筋力低下。代表はデュシェンヌ型筋ジストロフィー
・ ロンベルグ徴候陽性=閉眼で著明に動揺=感覚性(脊髄性)失調。小脳性失調は開眼でも動揺するため陽性とはしない
・ 随意性跛行は意識すると正常に歩けるが時間が経つと跛行が出現(股関節結核など・精神的要素)、ヒステリー性歩行は器質的異常なしで他人が見ていないと正常
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