神経梅毒は、梅毒の病原体である梅毒トレポネーマが脳・脊髄などの中枢神経に感染して起こる病態です。障害される部位(髄膜・脳血管・脳実質)によって病型と症状が大きく変わり、晩期には脊髄癆や進行麻痺といった予後不良の病型に進行します。ペニシリンによる早期治療が何より重要です。
| 読み方 | しんけいばいどく(神経梅毒) |
|---|---|
| 分類 | 梅毒トレポネーマによる中枢神経感染症(性感染症・梅毒の第3〜4期病変) |
| 原因菌 | 梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum) |
| 障害部位 | 髄膜・脳血管・脳実質(脳・脊髄) |
| 主な病型 | 髄膜型/脳血管型(髄膜血管型)/実質型(脊髄癆・進行麻痺) |
| 潜伏期 | 髄膜炎・脳血管症状は3〜10年、脊髄癆は5〜20年、進行麻痺は10〜20年 |
| 主な症状 | 髄膜刺激症状、片麻痺、電撃性疼痛、失調性歩行、瞳孔異常、認知症・人格変化 |
| 診断 | 血清梅毒反応(RPR・TP抗体)+髄液梅毒反応(VDRL・TP抗体)の陽性 |
| 治療 | ペニシリン投与(早期治療で改善が期待できる) |
神経梅毒は、梅毒の病原体である梅毒トレポネーマが脳や脊髄などの中枢神経に感染して起こる病態です。感染で障害される部位によって症状が大きく変わるのが特徴で、大きく次の4つの部位が侵されます。
いずれも進行すると回復が難しくなるため、早期発見・早期治療が大切です。
神経梅毒は障害される部位によって病型が変わり、臨床像は非常に多彩です。代表的な3つの病型を整理します。
| 病型 | 障害部位 | 主な症状 |
|---|---|---|
| 脳・脊髄実質型 | 脳・脊髄の実質 | 認知機能低下、性格・行動の変化、麻痺・運動失調、感覚障害 |
| 髄膜型 | くも膜・軟膜などの髄膜の炎症 | 頭痛、発熱、項部硬直、嘔吐(髄膜炎様症状) |
| 脳血管型(髄膜血管型) | 脳血管の炎症・狭窄・閉塞 | 脳梗塞、一過性脳虚血発作、頭痛・めまい |
感染後3〜10年の潜伏期を経て、髄膜炎症状や脳血管症状が現れます。この時期の代表的な病態は次の通りです。
ポイントは片麻痺・脳血栓・ゴム腫への注意です。
脊髄癆は初感染後5〜20年で発症する晩期病型です。脊髄の後索(位置覚・振動覚などを伝える)が変性・脱落することで、信号がうまく伝わらなくなり感覚障害・歩行障害が起こります。
脊髄癆の主症状(4つ)は国試頻出です。
進行麻痺は発症から10〜20年で現れる神経梅毒の最終病態です。脳実質の慢性炎症により、次のように進行します。
10〜20年の経過でゆっくり重症化していくのが特徴です。
神経梅毒は症状だけでは他の疾患とまぎらわしいため、検査で確定診断します。血液検査と髄液検査の両方が重要です。
血清梅毒反応と髄液梅毒反応がともに陽性であれば神経梅毒と診断されます。
治療の基本はペニシリン投与です。強力な抗菌薬で梅毒トレポネーマを叩き、早期であれば頭痛・しびれ・記憶力低下などの症状の改善が期待できます。ペニシリンの普及により、髄膜血管型や進行麻痺といった重症型は減少しました。
予後は病型によって大きく異なります。