アフロの手アフロの手

手と手指の運動学(運動方向・関与する筋・アーチ・良肢位)てとしゅしのうんどうがく

手は「動かす」と「安定させる」を同時に行う器官で、前腕から来る外在筋手内にある内在筋が役割分担しています。国家試験では、浅指屈筋=PIP屈曲・深指屈筋=DIP屈曲MP伸展=指伸筋/PIP・DIP伸展=虫様筋・骨間筋背側骨間筋=外転・掌側骨間筋=内転、そして手の良肢位が繰り返し問われます。ここでは10枚のスライドの内容を、運動方向ごとの筋の一覧表として整理します。

手と手指の運動学|手と手指の運動学 1
読み方てとしゅしのうんどうがく
分類上肢の運動学(手関節・手指)/外在筋と内在筋
手関節の運動背屈・掌屈・橈屈・尺屈の4方向
手指の主な運動屈曲・伸展・外転・内転・(母指と小指は)対立
関与する筋外在筋=浅指屈筋・深指屈筋・指伸筋など/内在筋=虫様筋・骨間筋・母指球筋・小指球筋
手の構造的特徴縦アーチ・横アーチによる把持機能(握ると第4・第5指側の横アーチが増強)
良肢位手関節軽度背屈・MP軽度屈曲・PIP/DIP軽度屈曲・母指対立位
国試での狙われ方浅指屈筋=PIP/深指屈筋=DIPの対応、背側骨間筋=外転/掌側骨間筋=内転、良肢位の角度・肢位、内在筋プラス/マイナス肢位

手関節の運動は「手関節筋」が担当する

手関節の運動は背屈(伸展)・掌屈(屈曲)・橈屈・尺屈の4方向で、主に前腕から起こる手関節筋が働きます。手指を動かすときにも手関節筋が同時に働き、手関節の位置を安定させることで指の筋が効率よく力を出せます(動かす+安定させる)。

運動方向主に働く筋
背屈(伸展)橈側手根伸筋(長・短)、尺側手根伸筋
掌屈(屈曲)橈側手根屈筋、尺側手根屈筋
橈屈橈側手根伸筋+橈側手根屈筋(橈側の筋が協同)
尺屈尺側手根伸筋+尺側手根屈筋(尺側の筋が協同)
手関節の4つの動き(背屈・掌屈・橈屈・尺屈)と担当する手関節筋
手関節の4つの動き(背屈・掌屈・橈屈・尺屈)と担当する手関節筋

手指の屈曲:浅指屈筋はPIP、深指屈筋はDIP

手指の屈曲で最重要なのが浅指屈筋深指屈筋です。国家試験では、どちらがどの関節を曲げるかがそのまま出題されます。

浅指屈筋腱は途中で二分し、その間を深指屈筋腱が貫いて末節骨に停止します。この位置関係が次項の「腱の交差」につながります。

主な作用関節停止支配神経
浅指屈筋PIP関節(第2〜第5指)中節骨底(腱が二分)正中神経
深指屈筋DIP関節(第2〜第5指)末節骨底橈側半=正中神経/尺側半=尺骨神経
長母指屈筋母指IP関節母指末節骨底正中神経
浅指屈筋=PIP屈曲、深指屈筋=DIP屈曲。強い握り込みでは両者が協働する
浅指屈筋=PIP屈曲、深指屈筋=DIP屈曲。強い握り込みでは両者が協働する

浅指屈筋腱と深指屈筋腱の交差と癒着

指内では浅指屈筋腱が二分し、その間を深指屈筋腱が通り抜ける(交差する)という特徴的な構造をとります。腱鞘という狭いトンネル内で2本の腱が接して滑走するため、外傷や手術のあとは腱同士・腱と腱鞘の癒着が起こりやすい部位です。

浅指屈筋腱と深指屈筋腱の交差部。癒着しやすく、血流への配慮も必要
浅指屈筋腱と深指屈筋腱の交差部。癒着しやすく、血流への配慮も必要

手指の伸展:指伸筋+虫様筋・骨間筋の協調

手指の伸展は1つの筋では完成しません。MP関節の伸展は指伸筋(総指伸筋など)PIP・DIP関節の伸展は虫様筋・骨間筋(内在筋)が主役です。伸筋腱は手指背側で広がって指背腱膜を形成し、内在筋の腱もここに合流して協調した伸展をつくります。

関節伸展に働く主な筋備考
MP関節(総)指伸筋、示指伸筋、小指伸筋内在筋麻痺でもMP伸展は残る
PIP関節虫様筋、骨間筋指背腱膜を介して作用
DIP関節虫様筋、骨間筋終止腱に移行して末節骨へ
MP伸展は指伸筋、PIP・DIP伸展は虫様筋・骨間筋。指背腱膜が全体をつなぐ
MP伸展は指伸筋、PIP・DIP伸展は虫様筋・骨間筋。指背腱膜が全体をつなぐ

外転・内転と母指・小指の対立運動

手指の左右方向の動きは骨間筋が中心です。覚え方は「背側=外転(DAB)/掌側=内転(PAD)」。母指と小指には母指球筋・小指球筋があり、両者が向き合う対立運動によって物をつまむ・握る動作が成立します。

運動母指小指・その他の指
屈曲長母指屈筋・短母指屈筋浅指屈筋・深指屈筋、小指屈筋
伸展長母指伸筋・短母指伸筋(総)指伸筋、小指伸筋
外転母指外転筋(長・短)背側骨間筋、小指外転筋
内転母指内転筋掌側骨間筋
対立母指対立筋小指対立筋
背側骨間筋=外転、掌側骨間筋=内転(DAB / PAD)
背側骨間筋=外転、掌側骨間筋=内転(DAB / PAD)

手のアーチと良肢位・内在筋プラス/マイナス肢位

手のひらには縦アーチ(手のひらを上下につなぐ)横アーチ(指のつけ根を左右につなぐ)があり、把持機能を支えます。握るときは第4・第5指側の横アーチが増強して、物の形に手が包み込むように適合します。

固定や装具では、拘縮が起きても機能が残る良肢位をとります。また内在筋と外在筋のバランスは肢位に現れ、内在筋プラス肢位内在筋マイナス肢位として区別されます。

部位手の良肢位
手関節軽度背屈(約20〜30°)
MP関節軽度屈曲
PIP・DIP関節軽度屈曲
母指対立位
手の良肢位:手関節軽度背屈・MP軽度屈曲・PIP/DIP軽度屈曲・母指対立位
手の良肢位:手関節軽度背屈・MP軽度屈曲・PIP/DIP軽度屈曲・母指対立位
国試ポイント
① 浅指屈筋=PIP関節屈曲、深指屈筋=DIP関節屈曲。DIPを曲げられるのは深指屈筋だけ。
② MP関節の伸展=指伸筋、PIP・DIP関節の伸展=虫様筋・骨間筋。伸展は「外在筋+内在筋の協調」で完成する。
③ 骨間筋は「背側=外転(DAB)/掌側=内転(PAD)」。逆にした選択肢が定番の引っかけ。
④ 手の良肢位は手関節軽度背屈・MP軽度屈曲・PIP/DIP軽度屈曲・母指対立位。手関節を掌屈位で固定するのは誤り。
⑤ 内在筋プラス肢位=MCP軽度屈曲(約20〜30°)+IP伸展、内在筋マイナス肢位=MCP過度屈曲+IP屈曲。
⑥ 浅指屈筋腱と深指屈筋腱の交差部は癒着しやすく、腱損傷後は癒着予防のための早期可動域管理が重要。
・ 対立運動ができるのは母指と小指(母指対立筋・小指対立筋)。握ると第4・第5指側の横アーチが増強する。
📖 手と手指の運動学をスライドで学ぶ(国試辞書) 図解スライドでサクッと復習