内分泌系は視床下部を司令塔として、下垂体・甲状腺・副甲状腺・副腎・松果体・性腺がホルモンを介して連携する精密なネットワークです。個々の腺をバラバラに覚えると混乱しやすいですが、「どこから」「何が」「何のために」出るかを軸に整理すると国試の正誤問題にも強くなります。この記事では6つの内分泌腺を横断的にまとめます。
| 視床下部 | 下垂体前葉ホルモンの放出・抑制ホルモンを分泌し、腺性下垂体を調節する内分泌の最上位中枢 |
|---|---|
| 下垂体(前葉) | GH・TSH・ACTH・FSH/LH・PRLの5種を分泌する腺性下垂体 |
| 下垂体(後葉) | 視床下部で作られたオキシトシン・バソプレッシン(ADH)を貯蔵・放出する神経性下垂体 |
| 甲状腺 | 首前面のH字型(蝶形)器官。濾胞細胞からサイロキシン(T4)、傍濾胞細胞(C細胞)からカルシトニンを分泌 |
| 副甲状腺(上皮小体) | 甲状腺後面に上下左右計4個。主細胞からパラソルモン(PTH)を分泌し血中Ca濃度を上昇させる |
| 副腎皮質 | 球状帯=アルドステロン、束状帯=コルチゾール、網状帯=アンドロゲンを分泌 |
| 副腎髄質 | アドレナリン・ノルアドレナリンを分泌し交感神経作用を増強 |
| 松果体 | 第3脳室後方に位置。メラトニンを分泌し概日リズム(サーカディアンリズム)を調節 |
| 性腺(精巣) | ライディッヒ細胞からテストステロンを分泌し男性生殖器の発育・精子形成を促進 |
| 性腺(卵巣) | 卵胞からエストロゲン、黄体からプロゲステロンを分泌し女性周期・妊娠維持に関与 |
下垂体は脳の底部にあり、腺性下垂体(前葉・中間部)と神経性下垂体(後葉)に分けられます。視床下部が「放出ホルモン(リリースホルモン)」と「抑制ホルモン(インヒビションホルモン)」を分泌して前葉ホルモンの分泌量を調節するため、下垂体は単独の司令塔というより視床下部の指令を各末梢内分泌腺に中継する中間管制塔と捉えると理解しやすくなります。
| 区分 | 分泌されるホルモン | 主な働き |
|---|---|---|
| 前葉 | 成長ホルモン(GH) | 骨・筋肉の成長を促進 |
| 前葉 | 甲状腺刺激ホルモン(TSH) | 甲状腺を刺激しサイロキシン分泌を促す |
| 前葉 | 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH) | 副腎皮質を刺激しコルチゾールなどの分泌を促す |
| 前葉 | 性腺刺激ホルモン(FSH・LH) | 卵巣・精巣を刺激し性ホルモン分泌や生殖機能を調節 |
| 前葉 | プロラクチン(PRL) | 乳腺の発達・乳汁分泌を促進 |
| 中間部 | メラニン細胞刺激ホルモン(MSH) | メラニン色素生成を促進し皮膚の色を調節 |
| 後葉 | オキシトシン | 分娩時の子宮収縮・射乳を促進 |
| 後葉 | バソプレッシン(ADH・抗利尿ホルモン) | 腎集合管での水の再吸収を促進し尿量を減少させる |
副腎は左右の腎臓の上に乗る内分泌器官で、外側の皮質と内側の髄質で発生学的にも分泌ホルモンも全く異なります。皮質はさらに外側から球状帯・束状帯・網状帯の3層に分かれ、それぞれ異なるステロイドホルモンを分泌するのが最大のポイントです。
| 部位 | 層 | ホルモン | 主な働き |
|---|---|---|---|
| 皮質 | 球状帯(外層) | アルドステロン | Na再吸収を促進し血圧を維持 |
| 皮質 | 束状帯(中層) | コルチゾール | 糖代謝促進・抗炎症作用(ストレスへの抵抗) |
| 皮質 | 網状帯(内層) | アンドロゲン(副腎性) | 男性ホルモン様作用。性欲や体毛の発育に関与 |
| 髄質 | 中心部 | アドレナリン・ノルアドレナリン | 心拍数増加・血圧上昇・血糖上昇(交感神経作用を強化) |
甲状腺は首の前面にあるH字型(蝶形)の器官で、濾胞細胞がサイロキシン(T4)を、傍濾胞細胞(C細胞)がカルシトニンを分泌します。一方、副甲状腺(上皮小体)は甲状腺の後面に上下左右計4個あり、主細胞からパラソルモン(PTH)を分泌します。カルシトニンとパラソルモンは血中カルシウム濃度に対して正反対の作用を持つため、対比して覚えるのが国試対策の定石です。
| ホルモン | 分泌部位・細胞 | 血中Ca濃度への作用 | 作用機序 |
|---|---|---|---|
| サイロキシン(T4) | 甲状腺・濾胞細胞 | (代謝系ホルモン。Ca調節ではない) | 全身の細胞の代謝促進・エネルギー産生増加・成長発育を助ける |
| カルシトニン | 甲状腺・傍濾胞細胞(C細胞) | 低下させる | 骨へのCa沈着を促進、腎からのCa排泄を促進 |
| パラソルモン(PTH) | 副甲状腺(上皮小体)・主細胞 | 上昇させる | 骨からCaを動員(骨吸収)、腸管でのCa吸収促進、腎でのCa再吸収促進 |
松果体は第3脳室の後方にある小さな内分泌器官で、メラトニンを分泌して睡眠と覚醒のリズム(サーカディアンリズム、24時間周期)を調節します。メラトニンの分泌量は光の情報(視交叉上核からの情報)を受けて変化し、夜間に分泌が増加し、朝になると減少するという日内変動を示すのが特徴です。小児期によく発達し加齢とともに退縮していく点も押さえておきましょう。
性腺(精巣・卵巣)は下垂体前葉の性腺刺激ホルモン(FSH・LH)の支配を受けて働く末梢内分泌腺です。精巣は精細管で精子を作りながら、ライディッヒ細胞(間細胞)からテストステロンを分泌します。卵巣は卵胞からエストロゲン、排卵後に形成される黄体からプロゲステロンを分泌し、月経周期や妊娠維持に関与します。妊娠が成立すると胎盤からHCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が分泌され、黄体を維持してプロゲステロン分泌を継続させる点も国試で問われやすいポイントです。
| 性腺 | 分泌細胞・組織 | ホルモン | 主な働き |
|---|---|---|---|
| 精巣 | ライディッヒ細胞(間細胞) | テストステロン | 男性生殖器の発育、筋肉・骨の発達、男性らしい体つきの形成、性欲・性機能の調節 |
| 精巣 | 精細管(セルトリ細胞が支持) | (精子) | 精原細胞から約64〜74日かけて精子を産生 |
| 卵巣 | 卵胞 | エストロゲン | 女性性徴の発達、子宮内膜の増殖(妊娠準備) |
| 卵巣 | 黄体 | プロゲステロン | 子宮内膜の維持・分泌期化、妊娠の維持 |
| 胎盤(妊娠中) | 絨毛組織 | HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン) | 黄体を維持しプロゲステロン分泌を促進、妊娠を継続させる |