上肢の解剖は「体幹に近い骨→遠い骨→局所の通り道→手を動かす筋」という一本の流れで覚えると国試での取りこぼしが激減します。この記事では鎖骨・肩甲骨(上肢帯)から上腕骨、橈骨・尺骨、手根骨・中手骨・指骨、さらに肋鎖間隙や手根管などの神経血管の通り道、母指球筋・小指球筋・中手筋までを、バラバラの単元としてではなくひとつながりの解剖ストーリーとして整理しました。
| 分野 | 解剖学(骨学・筋学・局所解剖) |
|---|---|
| 上肢帯を構成する骨 | 鎖骨・肩甲骨の2つ |
| 自由上肢の長骨 | 上腕骨(最大の長骨)・橈骨(親指側)・尺骨(小指側) |
| 手根骨の数 | 近位列4個+遠位列4個=8個 |
| 中手骨・指骨の数 | 中手骨5本/指骨は母指2節・他4指3節(合計14節) |
| 上肢の主な神経の通路 | 肋鎖間隙(腕神経叢・鎖骨下動脈)・腋窩・上腕筋間中隔・肘窩・手根管(正中神経) |
| 手背の腱区画 | 伸筋支帯の下を6区画(第1〜第6トンネル)に分かれて腱が通る |
| 手内筋の3グループ | 母指球筋・小指球筋・中手筋(虫様筋+骨間筋) |
上肢の骨は体幹に近い側から鎖骨・肩甲骨(上肢帯)→上腕骨→橈骨・尺骨→手の骨という順番でつながっています。まずはこの全体の流れを一本の線として頭に入れることが、細かい各論を覚える近道です。
国試では「鎖骨→肩甲骨→上腕骨」の流れで各部の名称と関節相手を問う設問が多く、上腕骨頭が肩甲骨の関節窩と関節をつくるという対応関係をセットで覚えると得点源になります。
| 骨 | 主な特徴 | 関節する相手 |
|---|---|---|
| 鎖骨 | S字状の長骨。上肢を体幹から離して支える支柱 | 肩甲骨(肩鎖関節)・胸骨(胸鎖関節) |
| 肩甲骨 | 三角形の扁平骨。肩甲棘で棘上窩・棘下窩に分かれる | 関節窩で上腕骨頭と肩関節 |
| 上腕骨 | 自由上肢最大の長骨。上腕骨頭・大結節・小結節をもつ | 近位=肩甲骨、遠位=橈骨・尺骨 |
| 橈骨 | 前腕の親指側。橈骨頭は上腕骨小頭と関節 | 近位=上腕骨小頭、遠位=手根骨 |
| 尺骨 | 前腕の小指側。上端は肘頭、滑車切痕で腕尺関節 | 近位=上腕骨滑車、遠位=橈骨 |
上肢帯は鎖骨と肩甲骨の2つの骨からなり、上肢を体幹から離して支えることで肩関節の可動域を大きく広げる役割を担います。肩関節そのものは肩甲骨の関節窩と上腕骨頭からつくられ、鎖骨はその土台を体幹側に固定するアンカーのような働きをします。
国試では「鎖骨=上肢を体幹から離す」「関節窩=上腕骨頭と関節」という機能と名称の対応がそのまま出題されるため、丸暗記より役割から逆算して名称を思い出す練習が有効です。
上腕骨は自由上肢の中で最も長く太い長骨で、近位端は肩関節、遠位端は肘関節の形成に関わります。国試では近位端・骨幹部・遠位端の3パートに分けて各部の名称と神経・血管との位置関係を問う問題が繰り返し出題されます。
特に外科頸は骨折の好発部位、橈骨神経溝を通る橈骨神経は上腕骨骨幹部骨折で麻痺しやすいという2点は臨床問題として繰り返し狙われるため、位置関係とセットで確実に押さえておきましょう。
| 部位 | 主な構造 | 国試での問われ方 |
|---|---|---|
| 近位端 | 上腕骨頭・大結節・小結節・結節間溝・外科頸 | 外科頸は骨折好発部位。結節間溝は上腕二頭筋長頭腱の通路 |
| 骨幹部 | 三角筋粗面・橈骨神経溝 | 骨幹部骨折で橈骨神経麻痺(下垂手)を起こしやすい |
| 遠位端 | 上腕骨小頭・上腕骨滑車・内側上顆・外側上顆 | 小頭は橈骨、滑車は尺骨とそれぞれ関節をつくる |
前腕の2本の骨は「親指側=橈骨、小指側=尺骨」という位置関係が基本です。近位側と遠位側で主役が入れ替わる点が国試の引っかけどころで、肘関節に近い側は尺骨(肘頭・滑車切痕)が主体、手関節に近い側は橈骨(手根骨との関節面)が主体になります。
「橈骨頭は上腕骨小頭と関節」「尺骨滑車切痕は上腕骨滑車と関節」という上下の対応関係の入れ替わりを混同しないことが得点のカギです。
| 骨 | 近位端の構造 | 遠位端の構造 | 手のどちら側か |
|---|---|---|---|
| 尺骨 | 肘頭・滑車切痕(腕尺関節)・鈎状突起 | 尺骨頭・茎状突起 | 小指側 |
| 橈骨 | 橈骨頭・橈骨粗面(橈骨切痕と連結) | 茎状突起・手根関節面(手根骨と関節) | 親指側 |
手の骨は近位から手根骨(8個)→中手骨(5本)→指骨(母指2節・他4指3節)の順に並びます。手根骨は近位列と遠位列に4個ずつ分かれ、それぞれの並び順を語呂で覚えるのが定石です。
国試チェックポイントとして、手根管には屈筋腱と正中神経が通り、豆状骨には尺側手根屈筋が停止する種子骨としての性質があることも合わせて押さえておくと、次章の局所解剖につながります。
| 部位 | 内訳 | 個数・節数 |
|---|---|---|
| 手根骨 近位列 | 舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨 | 4個 |
| 手根骨 遠位列 | 大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鈎骨 | 4個 |
| 中手骨 | 第1〜第5中手骨 | 5本 |
| 指骨(母指) | 基節骨・末節骨 | 2節 |
| 指骨(他4指) | 基節骨・中節骨・末節骨 | 3節 |
骨と骨の間や筋の隙間には、神経・血管が通過する狭い通路(トンネル)がいくつも存在します。この通路が絞扼(圧迫)されることで様々な神経障害が起こるため、国試では「どこを何が通るか」がセットで問われます。
| 通路 | 位置 | 通るもの | 国試ポイント |
|---|---|---|---|
| 肋鎖間隙 | 鎖骨下(鎖骨と第1肋骨の間) | 腕神経叢・鎖骨下動脈 | 胸郭出口症候群で圧迫されやすい |
| 腋窩 | 上腕近位内側 | 神経・血管・リンパ節 | 腋窩リンパ節は乳がん転移などでも重要 |
| 上腕筋間中隔 | 上腕の筋間 | 正中・尺骨・橈骨神経 | 神経の通路として国試頻出 |
| 肘窩 | 肘関節前面 | 上腕動脈・正中神経など | 前腕への入口 |
| 手根管 | 手根骨アーチ+屈筋支帯 | 正中神経・長母指屈筋腱・浅/深指屈筋腱 | 手根管症候群=母指球筋萎縮・感覚異常 |
| 伸筋支帯(6区画) | 橈骨・尺骨背側下部 | 手背の伸筋腱(6腱区画) | リスター結節=第2・第3区画の間の目印 |
手の中にある小さな筋(手内筋)は、母指球筋・小指球筋・中手筋(虫様筋+骨間筋)の3グループに分けて、動きと神経支配をセットで覚えるのが最も効率的です。母指球筋は正中神経支配が中心ですが、母指内転筋だけ尺骨神経支配という例外があり、ここが頻出の引っかけです。
| 筋群 | 構成筋 | 主な作用 | 神経支配 |
|---|---|---|---|
| 母指球筋 | 短母指外転筋・母指対立筋・短母指屈筋・母指内転筋 | 外転・対立・屈曲・内転 | 正中神経(母指内転筋のみ尺骨神経) |
| 小指球筋 | 短掌筋・小指外転筋・短小指屈筋・小指対立筋 | 外転・屈曲・対立 | すべて尺骨神経 |
| 虫様筋 | 第1〜第4虫様筋 | MP屈曲+IP伸展 | 第1・2=正中神経/第3・4=尺骨神経 |
| 骨間筋 | 掌側骨間筋・背側骨間筋 | 掌側=内転(PAD)/背側=外転(DAB) | 尺骨神経 |