末梢神経障害のリハビリテーションは、「どの神経が・どの深さで傷んでいるか」を見極めてから訓練を組み立てるのが原則です。障害は局所性(1本の神経)と多発性ニューロパチー(左右対称・手袋靴下型)に大別され、重症度はSeddon分類(3段階)・Sunderland分類(5段階)で予後を予測します。国試では分類の順序、Tinel徴候の意味、麻痺と装具の組み合わせが繰り返し問われます。
| 読み方 | まっしょうしんけいしょうがいのりはびりてーしょん |
|---|---|
| 障害の型 | 局所性末梢神経障害(1本の神経)/多発性神経障害(ポリニューロパチー・左右対称) |
| 主な原因 | 外傷、圧迫・絞扼、糖尿病、薬剤・中毒、炎症(ギラン・バレー症候群)、遺伝(シャルコー・マリー・トゥース病)、腫瘍 |
| 病態 | 軸索変性/節性脱髄/ワーラー変性(損傷部より末梢が変性) |
| 重症度分類 | Seddon分類3段階(ニューラプラキシア・アクソノトメーシス・ニューロトメーシス)、Sunderland分類5段階 |
| 評価 | 運動(麻痺・筋力低下・筋萎縮)、感覚(表在・深部)、自律神経(起立性低血圧・排尿障害)、Tinel徴候、電気診断 |
| 主な治療・訓練 | 原因除去、神経縫合術、腱移行術、ROM訓練、装具療法、低周波電気刺激、感覚(知覚再教育)訓練、ADL訓練 |
| 禁忌・注意点 | 感覚脱失部の熱傷・外傷、拘縮と廃用の進行、過負荷、変形の放置 |
まず障害の広がりを整理します。局所性末梢神経障害は切断・牽引・圧迫などで1本の神経が傷むもの。多発性神経障害(ポリニューロパチー)は多くの神経が左右対称に障害され、手袋靴下型の感覚障害を示します。
| 原因 | 代表疾患・例 |
|---|---|
| 外傷 | 骨折・脱臼・切り傷による神経損傷 |
| 圧迫・絞扼 | 手根管症候群、肘部管症候群 |
| 糖尿病 | 糖尿病性末梢神経障害(多発性・左右対称) |
| 薬剤・中毒 | 抗がん剤、アルコール、ビタミン欠乏 |
| 炎症 | ギラン・バレー症候群(自己免疫性ニューロパチー) |
| 遺伝 | シャルコー・マリー・トゥース病 |
| 腫瘍 | 神経鞘腫、悪性腫瘍の浸潤 |
回復の見込みはどこまで壊れたかで決まります。軸索変性は軸索そのものの損傷、節性脱髄はミエリンが部分的に失われる状態、ワーラー変性は損傷部位より末梢側が変性していく現象です。
Seddon分類とSunderland分類は対応関係で覚えます。ニューラプラキシア=Stage1、アクソノトメーシス=Stage2〜3、ニューロトメーシス=Stage4〜5です。
| Seddon分類 | 病態 | 回復予後 | 治療方針 | Sunderland |
|---|---|---|---|---|
| ニューラプラキシア(神経伝導ブロック) | 軸索は保たれる | 良好 | 保存療法が中心 | Stage1(伝導ブロック)/Stage2(軸索は保たれミエリン障害) |
| アクソノトメーシス(軸索断裂) | 軸索は断裂・神経鞘は連続 | 中等度 | 保存療法+経過観察 | Stage3(軸索断裂・神経鞘は連続) |
| ニューロトメーシス(神経断裂) | 軸索・神経鞘とも断裂 | 不良 | 手術の適応 | Stage4(神経鞘も断裂)/Stage5(神経完全断裂) |
評価は運動・感覚・自律神経の3本柱で総合的に行います。
Tinel徴候は再生中の神経を叩打すると遠位へしびれ・痛みが放散する所見で、神経再生の進み具合を追えます。回復期には知覚再教育(触って・感じて・考えて脳に再学習させる)を行い、まず保護的知覚の回復を目指します。
| 検査 | みる内容 | 異常所見 |
|---|---|---|
| 神経伝導速度検査 | 神経の伝わる速さ | 伝導速度低下、伝導ブロック |
| 筋電図検査 | 筋の脱神経の有無 | 脱神経電位 |
| Tinel徴候 | 神経再生の先端位置 | 叩打部より遠位へ放散するしびれ・痛み |
治療は原因除去(原疾患・圧迫・薬剤の中止)が第一で、そのうえで外科的治療と運動療法を組み合わせます。麻痺が残る間は拘縮と廃用を防ぐことが最優先です。
国試最頻出は麻痺の名前と装具の組み合わせです。変形名(猿手・鷲手・下垂手・下垂足)から神経と装具を即答できるようにします。
| 障害神経 | 変形 | 主な装具 |
|---|---|---|
| 正中神経障害 | 猿手 | 対立副子(オポーネンススプリント) |
| 尺骨神経障害 | 鷲手 | ナックルベンダー |
| 橈骨神経麻痺 | 下垂手 | コックアップスプリント |
| 総腓骨神経障害 | 下垂足 | 短下肢装具 |
感覚が鈍い部位は本人が気づかないうちにケガ・やけどをするため、生活指導が治療の一部になります。