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麻痺肢の作業療法(脳卒中片麻痺の上肢訓練・ADL訓練・装具と注意点)まひしのさぎょうりょうほう

麻痺肢の作業療法とは、脳卒中などによる片麻痺の上肢・手指の機能回復と、ADL(日常生活活動)の自立を目的に行う作業療法です。回復の流れは「随意運動の誘発 → 共同運動 → 分離運動」と進み、その段階に応じて訓練内容を変えていきます。国試ではCI療法・肩関節亜脱臼への支持具・スプリントの目的・できるADLとしているADLの違いが繰り返し問われます。

麻痺肢の作業療法|麻痺肢の作業療法 1
読み方まひしのさぎょうりょうほう
主な対象脳卒中(脳梗塞・脳出血)による片麻痺、頭部外傷後の上肢麻痺
目的麻痺側上肢・手指の随意性向上、二次障害(拘縮・亜脱臼・痛み)の予防、ADL自立と社会参加
回復の段階弛緩期(随意運動なし)→ 共同運動出現 → 分離運動 → 巧緻動作
主な訓練上肢機能訓練(ペグ・ブロック・輪入れ)、CI療法、座位・立位バランス訓練、ADL訓練
用いる装具アームスリング(肩関節亜脱臼)、手指・手関節スプリント(痙縮抑制・拘縮予防)
禁忌・注意点麻痺側上肢の牽引による亜脱臼・肩手症候群、感覚障害部位の圧迫・熱傷、過用性筋力低下
国試での狙われ方共同運動と分離運動の違い、CI療法の定義、亜脱臼への対応、できるADL/しているADL

麻痺肢の作業療法とは(目的と全体像)

麻痺肢の作業療法は、脳卒中片麻痺の上肢・手指に対して、随意運動を引き出し、日常生活で「使える手」に近づけていく治療です。運動療法だけでなく、実際の作業活動(ペグ差し・輪入れ・積み木・書字・食事動作)を治療手段として用いる点が理学療法との大きな違いです。

麻痺肢の作業療法は手の動き・筋力・脳の活性化・できる喜びを引き出す
麻痺肢の作業療法は手の動き・筋力・脳の活性化・できる喜びを引き出す

回復初期は「動きを引き出す」ことが最優先

発症直後の弛緩性麻痺の時期は、まず随意運動そのものを引き出すことが目標です。他動運動・自動介助運動から始め、健側での代償や視覚・言語のフィードバックを使って麻痺側の運動を誘発します。

同時に、関節可動域訓練(ROM ex)とポジショニングで拘縮・浮腫・疼痛を予防することが欠かせません。麻痺側上肢を体の下敷きにしない、ベッド上でタオルやクッションで支えるといった配慮が急性期から必要です。

時期状態作業療法の中心
急性期(弛緩期)随意運動ほぼなし・筋緊張低下良肢位保持、ROM訓練、自動介助運動、亜脱臼予防
回復期前半共同運動が出現・筋緊張亢進共同運動の利用と抑制、リーチ動作、両手動作
回復期後半分離運動が可能巧緻動作訓練、CI療法、ADL訓練の実生活化
生活期機能はプラトー傾向しているADLの定着、自助具・環境調整、社会参加
回復初期はまず麻痺側の動きを引き出すことが大切
回復初期はまず麻痺側の動きを引き出すことが大切

共同運動から分離運動へ(ブルンストロームの考え方)

共同運動(連合運動的な定型パターン)とは、肩を動かそうとすると肘・手指まで一緒に曲がってしまうように、複数の関節が一塊りに動いてしまう状態です。一方分離運動は、必要な関節だけを選択的に動かせる状態で、実用的な手の使用にはこの分離運動が不可欠です。

作業療法では、共同運動が出た段階でそれを土台にしつつ、少しずつ関節を「分けて」動かす課題を与え、分離運動へと導きます。

項目共同運動分離運動
定義複数関節がパターンで一緒に動く必要な関節だけを選択的に動かせる
肩を挙げると肘・手指も屈曲する肩を挙げたまま手指だけ開閉できる
出現時期回復の中期(Brunnstrom stageⅡ〜Ⅲ)回復の後期(stageⅣ以降)
上肢の代表パターン屈筋共同運動・伸筋共同運動手を口へ運ぶ、背中に手を回す等
作業療法の目標出現した動きを利用して随意性を高める巧緻動作・ADL動作へ発展させる
共同運動(いっしょに動く)から分離運動(別々に動かせる)を目指す
共同運動(いっしょに動く)から分離運動(別々に動かせる)を目指す

CI療法(constraint-induced movement therapy)

CI療法は、健側上肢をミトンや三角巾で拘束(制限)し、麻痺側上肢を集中的・強制的に使わせる訓練法です。脳の可塑性(再学習)を促し、「使わないから使えなくなる」学習性不使用(learned nonuse)を打破することが狙いです。

CI療法は健側を軽く制限し、患側(麻痺側)を積極的に使う
CI療法は健側を軽く制限し、患側(麻痺側)を積極的に使う

肩関節亜脱臼とスプリント(装具による保護)

弛緩性麻痺では三角筋・棘上筋の緊張が失われ、上肢の重みで骨頭が下方へずれる肩関節亜脱臼が起こります。肩峰と骨頭の間に指が入る「陥凹(sulcus sign)」が特徴で、放置すると肩手症候群や疼痛につながります。

一方、痙縮期には手指・手関節のスプリントを用いて、痙縮の抑制と拘縮・変形の予防を図ります。手指が屈曲拘縮すると清潔保持も困難になるため、良肢位保持が重要です。

装具主な目的注意点
アームスリング(三角巾)肩関節亜脱臼の予防・疼痛軽減長時間装着で内転・内旋拘縮、浮腫に注意
ラップボード・アームレスト座位・車椅子での上肢支持前腕を水平に保ち上肢を下垂させない
手指・手関節スプリント痙縮抑制、屈曲拘縮・変形の予防感覚障害部位の圧迫・褥瘡に注意、装着時間を管理
把持用自助具・カフスプーン等の保持を補助本人の残存機能を奪わない範囲で使用
肩関節亜脱臼には支持具(アームスリング)が有効
肩関節亜脱臼には支持具(アームスリング)が有効

ADL訓練と失行・失認への環境調整

上肢機能訓練と並行して、座位バランス→立位バランス→上肢機能の順に土台を作り、ベッド上動作・移乗動作・トイレ動作といったADLの基本ステップを積み上げます。

高次脳機能障害を合併する場合、機能訓練だけでは動作が成立しません。失行(動作の手順が組み立てられない)・失認(対象を認識できない/半側空間無視)には、環境調整と手がかりの提示が有効です。

ADL訓練の段階内容到達目標
ベッド上動作寝返り・起き上がり・端座位保持座位バランスの獲得
移乗動作ベッド⇔車椅子の移乗、立ち上がり立位バランスと安全な移乗
トイレ動作移動・衣服の上げ下げ・後始末排泄の自立、QOL向上
上肢機能・セルフケア食事・更衣・整容・入浴セルフケアの自立
失行・失認では環境調整と手順の見える化が大切
失行・失認では環境調整と手順の見える化が大切

できるADL・しているADL・するADL

訓練室では自立していても、病棟や自宅でやっていなければ意味がありません。作業療法では次の3つを区別して評価します。

ゴールは「できるADL」を「しているADL」へ移行させ、病棟から家庭・社会へつなげることです。家事(調理・洗濯・掃除・金銭管理)などのIADL、さらに就労・趣味・地域交流といった社会参加まで見据えて支援します。

ADL訓練は病棟から家庭・社会へ。できるADLをしているADLへ
ADL訓練は病棟から家庭・社会へ。できるADLをしているADLへ
国試ポイント
① 共同運動=複数関節が一塊りに動く定型パターン、分離運動=必要な関節だけを選択的に動かせる。作業療法のゴールは分離運動の獲得。
② CI療法は「健側を拘束し麻痺側を集中使用する」訓練。学習性不使用の打破と脳の可塑性利用が目的で、ある程度随意運動が残る例が適応。
③ 弛緩性麻痺では肩関節亜脱臼が起こりやすい。座位・立位ではアームスリング、車椅子ではアームレストで支持し、麻痺側上肢を引っ張らない。
④ スプリントの目的は痙縮抑制と拘縮・変形の予防。感覚障害のある部位では圧迫・褥瘡・熱傷に注意する。
⑤ 失行・失認には機能訓練より環境調整。物品を使用順に並べる、手順を絵や写真で見える化する、指示は一度に一つが原則。
⑥ 「できるADL(能力)」と「しているADL(実行状況)」は別物。国試では両者の違いと、できる→しているへの移行がねらわれる。
・ 急性期から良肢位保持とROM訓練を行い、拘縮・浮腫・肩手症候群といった二次障害(廃用)を防ぐことが重要。
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