絞扼性・圧迫性ニューロパチーとは、末梢神経が骨折・脱臼・周囲組織などによって圧迫されて起こる神経障害です。このページでは「どの神経が・どこで絞扼され・どんな変形(下垂手/猿手/鷲手/下垂足)を呈するか」を疾患として部位別に整理します。障害される神経によって、筋力低下・感覚障害・特徴的な手足の変形が現れるのが特徴です。
| 読み方 | こうやくせいにゅーろぱちー(絞扼性ニューロパチー) |
|---|---|
| 定義 | 末梢神経が骨折・脱臼・周囲組織などによって圧迫・絞扼され、神経障害を生じた状態 |
| 主な原因 | 骨折・脱臼、長時間の圧迫(ギプス・松葉杖・手術体位など)、絞扼部位での周囲組織による圧迫 |
| 障害される神経 | 上肢=橈骨・正中・尺骨神経/下肢=総腓骨・脛骨神経 |
| 主な症状 | 障害神経に応じた筋力低下・感覚障害・特徴的な手足の変形(下垂手・猿手・鷲手・下垂足) |
| 検査・診断 | 筋力・感覚・腱反射の確認、画像検査(X線・MRI・CT)、電気生理学的検査(神経伝導検査・筋電図) |
| 治療 | 原因に応じた手術(骨折・腫瘍など明確な原因)または保存療法(安静・装具・リハビリ) |
| 国試での狙われ方 | 各神経の絞扼部位と特徴的変形・支配領域の組合せ(橈骨=下垂手、正中=猿手、尺骨=鷲手、総腓骨=下垂足) |
末梢神経が走行の途中で圧迫・絞扼されると、その神経が支配する領域に障害が現れます。原因は大きく次の3つです。
その結果、障害される神経によって「筋力低下」「感覚障害」「特徴的な手足の変形」が現れます。どの神経がどこで絞扼されるかによって症状のパターンが決まるのがポイントです。
上肢では橈骨・正中・尺骨の3神経が代表的です。絞扼部位・特徴的変形・感覚障害領域の組合せが国試の頻出ポイントです。
| 神経 | 主な絞扼・障害部位 | 特徴的な変形 | 感覚障害の領域 | 代表的な運動障害 |
|---|---|---|---|---|
| 橈骨神経 | 上腕骨中央部(橈骨神経溝)の骨折・圧迫 | 下垂手 | 手背〜前腕橈側 | 手関節・指の伸展ができない |
| 正中神経 | 手根管内(手根管症候群)/外傷・神経炎 | 猿手 | 母指〜環指橈側 | 母指の対立運動・つまむ動作が困難、母指球筋萎縮 |
| 尺骨神経 | 肘部管(肘内側・尺骨神経溝)/尺骨神経管(手関節尺骨側) | 鷲手(かぎ爪手) | 小指側(母指〜環指橈側以外の小指側) | 手指の細かい運動障害、骨間筋萎縮、環指・小指の屈曲位 |
橈骨神経は上腕骨の橈骨神経溝に沿って走行するため、上腕骨中央部の骨折や長時間の圧迫で障害されやすい神経です。
起こりやすいケース
障害されると手関節や指を伸ばせなくなり「下垂手」を呈します。手首が垂れ下がり、指の付け根(MP関節)を伸ばしにくくなります。感覚障害は手背〜前腕橈側にみられ、ドアノブを回す・ペットボトルのフタを開けるといった動作が困難になります。
正中神経麻痺は外傷・絞扼性神経障害・神経炎などで起こります。代表が手根管症候群で、手首の手根管内で正中神経が圧迫されます(横手根靭帯=手根靭帯と屈筋腱の間)。
母指の対立運動ができず、猿のような手の形(猿手)を呈することがあります。手根管症候群は女性に多く、早期発見・早期治療がカギです。
尺骨神経麻痺は肘部管症候群や尺骨神経管症候群などの絞扼で起こることが多い疾患です。尺骨神経は肘や手関節付近で圧迫を受けやすく、小指側の感覚や手指の細かな運動に障害が生じます。
症状は小指側のしびれ・感覚低下と手指の細かな運動障害。典型的には小指側の筋力低下と骨間筋の萎縮(手の甲のくぼみが目立つ)により、環指・小指が屈曲位となる「かぎ爪手(鷲手)」を呈します。母指の対立も困難になります。
下肢では総腓骨神経(下垂足)と脛骨神経(足根管症候群)が代表です。圧迫部位と障害される動きを対比で押さえます。
| 神経 | 主な絞扼・圧迫部位 | 特徴的な症状 | 感覚障害の領域 | できなくなる動き |
|---|---|---|---|---|
| 総腓骨神経 | 腓骨頭周囲の圧迫 | 下垂足(フットドロップ) | 下腿外側〜足背 | 足関節・足趾の背屈ができない(歩行時つまずきやすい) |
| 脛骨神経 | 足根管内での圧迫(足根管症候群) | 足底・下腿後面の感覚障害 | 足底・下腿後面 | 足関節の底屈・足の内転が困難(つま先立ちができない) |
診断は次の3本柱で行います。
治療は原因に応じて選択します。骨折や腫瘍など明確な原因があれば手術を検討し、軽症例では保存療法(安静・活動制限、装具の使用、リハビリテーション)を行います。回復の見通しは、軽い圧迫や神経炎では自然回復が期待でき、神経の断裂では機能回復が難しいこともあります。