このページは疾患としての筋萎縮性側索硬化症(ALS)に絞り、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンが同時に障害される点と、眼球運動・感覚・膀胱直腸機能などが保たれる陰性四徴を中心に整理します。ALSは原因不明・進行性の神経変性疾患で、40〜60代に好発します。(上位・下位運動ニューロン障害の総論は別ページ「上位・下位運動ニューロン障害」を参照)
| 読み方 | きんいしゅくせいそくさくこうかしょう(ALS:Amyotrophic Lateral Sclerosis) |
|---|---|
| 定義 | 上位運動ニューロンと下位運動ニューロンがともに進行性に障害される神経変性疾患 |
| 原因・病態 | 原因は不明。運動神経(運動ニューロン)が脱落し、筋力低下・筋萎縮が進行する |
| 好発 | 40〜60代に多い。人口10万人あたり約2〜6人のまれな疾患。家族性ALSは全体の約5〜10%で、孤発例が大部分 |
| 主な症状 | 手指の筋力低下・歩行障害・球麻痺(ろれつが回らない/飲み込みにくい)などから始まり、進行とともに全身へ広がる |
| 障害されない機能(陰性四徴) | 眼球運動・感覚機能・膀胱直腸機能・褥瘡(は起こりにくい)=知能とともに比較的保たれることが多い |
| 検査・診断 | 神経学的診察+筋電図検査(EMG)で脱神経所見・神経原性変化を確認し、他の検査・除外診断も含めて総合的に診断 |
| 治療 | 進行を抑える薬物療法(リルゾールなど)+呼吸・栄養・リハビリテーションなどの支持療法が中心 |
| 国試での狙われ方 | 上位+下位運動ニューロン障害の同時出現、陰性四徴、家族性の割合、リルゾール、筋電図の脱神経所見が頻出 |
ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両方が進行性に障害される神経変性疾患です。原因は不明で、運動神経が脱落することで筋力低下・筋萎縮が進行します。
初発症状はさまざまで、手指の筋力低下→歩行障害→ろれつが回らない(球麻痺)→飲み込みにくいと広がり、進行とともに全身の筋、さらに呼吸にも影響が及びます。
ALSの最大の特徴は、同一の患者に上位・下位両方の運動ニューロン障害の症状が混在することです。国試では両者の症状の違いが問われます。
| 下位運動ニューロン障害 | 上位運動ニューロン障害 | |
|---|---|---|
| 麻痺のタイプ | 弛緩性麻痺 | 痙性麻痺(筋緊張が高まる) |
| 筋の変化 | 筋萎縮・筋力低下(舌や四肢の筋がやせる) | 筋の緊張が高まり動作が困難に |
| 特有の所見 | 筋線維束性収縮(ファシキュレーション=筋肉のけいれん様のぴくつき) | - |
| 腱反射 | 反射低下・消失 | 腱反射亢進(過剰に起こる) |
| 病的反射 | - | 出現(ホフマン反射:中指をはじくと親指が曲がる/バビンスキー徴候:足の裏を刺激すると親指が上に反る) |
ALSでは運動系が侵される一方、多くの患者で以下の機能は比較的保たれます。国試頻出の「陰性四徴」です。
加えて知能も保たれることが多いですが、一方で一部の患者では前頭側頭型認知症(性格の変化・社会的行動の異常・言語障害など)や精神症状(うつ・不安・易怒性など)を合併することがあります。
運動ニューロンの障害が進行すると、呼吸筋や嚥下筋も侵され、生命に関わる合併症を生じます。
これにより誤嚥性肺炎・栄養障害/体重減少・呼吸不全/窒息のリスクが生じるため、呼吸管理・栄養管理・嚥下ケア・多職種による支援が重要になります。
ALSの診断では神経学的診察と筋電図検査(EMG)が中心となり、他の検査や除外診断も含めて総合的に判断します。
神経学的診察で評価する項目
筋電図検査(EMG)で確認する脱神経所見・神経原性変化の例
臨床症状の評価+筋電図検査の結果+その他の検査・除外診断を合わせて「ALSの診断」に至ります。
ALSの治療は進行を抑える薬物療法と支持療法が中心です。根治は困難で、QOL(生活の質)の維持・向上が目標となります。
予後は進行性で厳しいものの、早期診断と多職種(医師・看護師・呼吸療法士・管理栄養士・理学療法士・作業療法士・医療ソーシャルワーカー・ケアマネジャーなど)による包括的な支援で、QOLや生存期間の改善が期待されます。