高齢者の診察は、若年者と同じ物差しでは測れません。老化による生理的変化をふまえ、複数疾患を合併しやすい・回復が遅れやすい・症状が典型的に出にくいという3つの特徴を前提に診ることが求められます。ここでは高齢者の診察に必要な考え方を、国試の狙われ方まで含めて1ページに統合して解説します。
| テーマ | 高齢者の診察(老年医学的アプローチ) |
|---|---|
| 背景 | 医学の進歩・衛生環境の改善・感染症対策の向上により平均寿命が延伸 |
| 前提となる考え方 | 加齢による生理的変化(老化)をふまえて診察する |
| 特徴① | 複数の疾患を同時に合併しやすい(多疾患併存) |
| 特徴② | 若年者に比べ回復が遅く、経過が長引き合併症を起こしやすい |
| 特徴③ | 生理反応が起こりにくく、重症でも典型的な症状が出にくい(非定型症状) |
| 代表的な非定型例 | 重症感染症でも発熱しない/急性心筋梗塞でも胸痛がない/急性虫垂炎でも腹膜刺激症状に乏しい |
| 診察の要点 | 高齢者特有の病気の出方・経過を十分に理解しておくこと |
| 一発暗記 | 高齢者は「病気が多い・治りにくい・症状が出にくい」 |
医学の進歩、衛生環境の改善、感染症対策の向上によって平均寿命が延び、臨床の現場で高齢者を診る機会は年々増えています。鍼灸・あマ指・柔整の施術所でも主たる対象者は高齢者であり、高齢者の診察はますます重要になっています。
したがって施術者には、若年者とは異なる高齢者の身体の特徴を前提とした診察が求められます。
高齢者を診るときは、まず加齢による生理的変化(老化)をふまえる必要があります。老化は病気ではありませんが、各臓器の予備能が低下しているため、若年者なら問題にならない負荷でも容易に破綻します。
この「老化」という前提を置くことで、以下に述べる多疾患合併・回復遅延・非定型症状という3つの特徴が一本の線でつながって理解できます。
| 観点 | 若年者 | 高齢者 |
|---|---|---|
| 臓器の予備能 | 大きい | 小さい(余力が乏しい) |
| 罹患する疾患の数 | 単一のことが多い | 複数を同時に合併しやすい |
| 回復のスピード | 速い | 遅く、経過が長引きやすい |
| 合併症 | 起こりにくい | 次々に起こしやすい |
| 症状の出方 | 典型的 | 非定型・乏しいことがある |
高齢者では、1つの病気だけでなく、いくつかの疾患を同時に持っていることが多いのが特徴です。主訴だけを追うと背後の疾患を見落とすため、全身を広く診る姿勢が必要です。
高齢者は若年者に比べて回復が遅く、経過が長引いたり、次々に合併症を起こすことがあります。単純な疾患・外傷でも予後が読みにくい点に注意します。
よって高齢者では、原疾患の治療だけでなく合併症の予防という視点が診察の段階から必要になります。
国試で最も狙われるのがここです。高齢者では生理反応が起こりにくく、重い病気でも典型的な症状が出ないことがあります。「症状が軽い=病気が軽い」ではないと覚えてください。
これらは「症状の乏しさに引きずられて重症を見逃す」という危険に直結します。バイタル・全身状態・普段との違い(食欲低下、元気がない、意識がぼんやりする等)を手がかりに評価します。
| 疾患 | 若年者の典型症状 | 高齢者で起こりうる出方 |
|---|---|---|
| 重症感染症 | 高熱・悪寒戦慄 | 発熱せず平熱のことがある |
| 炎症性疾患 | 強い疼痛・発赤・腫脹 | 痛みなどの症状が乏しい |
| 急性心筋梗塞 | 激しい前胸部痛 | 胸痛を訴えないことがある |
| 急性虫垂炎 | 右下腹部痛・筋性防御などの腹膜刺激症状 | 腹膜刺激症状が乏しいことがある |
診察では、高齢者特有の病気の出方や経過を十分に理解しておくことが大切です。3つの特徴をひとつの標語にまとめると次のようになります。
高齢者は「病気が多い・治りにくい・症状が出にくい」
施術者としては、この3点を前提に危険な兆候があれば速やかに医療機関へつなぐ判断が最重要となります。