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呼吸器疾患のリハビリテーション(評価・訓練・注意点)こきゅうきしっかんのりはびりてーしょん

呼吸器疾患のリハビリテーション(呼吸リハ)は、効率的な換気を取り戻し、ADL・QOLを向上させることを目的とした包括的な介入です。国家試験では、閉塞性・拘束性・混合性という換気障害の3タイプ呼吸困難(主観)と呼吸不全(客観的な検査所見)の区別、そしてヒュー・ジョーンズ分類やMRC息切れスケールの段階が繰り返し狙われます。

ここでは訓練法(腹式呼吸・口すぼめ呼吸・体位ドレナージ)から、CO2ナルコーシスや肋骨骨折などのリスク管理まで、10枚のスライドの内容を体系的に解説します。

呼吸器疾患のリハビリテーション|呼吸器疾患のリハビリテーション 1
読み方こきゅうきしっかんのりはびりてーしょん(呼吸リハ)
目的効率的な換気の獲得(しっかり吸ってしっかり吐ける)/ADL・QOLの向上
対象疾患COPD・気管支喘息などの閉塞性疾患、間質性肺炎・肺線維症・胸郭変形などの拘束性疾患、術後・廃用など
障害の特徴労作時呼吸困難、喀痰貯留、運動耐容能低下、低栄養・体力低下による活動量低下の悪循環
主な評価ヒュー・ジョーンズ分類、MRC息切れスケール、6分間歩行テスト(6MWT)、肺機能検査(VC・1秒率)、SpO2、動脈血ガス分析
主な訓練腹式呼吸、口すぼめ呼吸、体位ドレナージなどの排痰法、呼吸筋トレーニング、全身調整運動(ウォーキング・ストレッチ)、在宅での自主訓練
禁忌・注意点CO2ナルコーシス(高濃度酸素投与に注意)、SpO2低下、普段と違う息切れ、咳や深呼吸で痛む肋骨骨折、喘鳴を伴う喘息発作

換気障害の3タイプと呼吸リハの目的

呼吸器疾患のリハビリテーションを理解する第一歩は、なぜ肺の換気がうまくいかないのかという病態の分類です。換気障害は肺機能検査の結果から、閉塞性・拘束性・混合性の3つに分けられます。

そのうえで呼吸リハの目的は大きく2つ。①効率的な換気の獲得(しっかり吸ってしっかり吐ける呼吸へ)と、②ADL・QOLの向上(毎日の生活動作を楽に、活動範囲を広げる)です。呼吸リハは「肺そのものを治す」治療ではなく、残された機能を最大限に使って生活を取り戻す包括的な介入である点を押さえましょう。

タイプ病態肺機能検査の特徴代表疾患
閉塞性気道が狭くなり呼出が障害される1秒率(FEV1%)低下COPD(慢性気管支炎・肺気腫)、気管支喘息、びまん性汎細気管支炎
拘束性肺・胸郭がふくらみにくい%肺活量(%VC)低下間質性肺炎、肺線維症、胸郭変形、神経筋疾患、胸水
混合性閉塞+拘束の両要素1秒率・%VCともに低下進行したCOPD+肺線維症の合併など
換気障害は閉塞性・拘束性・混合性の3タイプに分けられる
換気障害は閉塞性・拘束性・混合性の3タイプに分けられる

呼吸困難と呼吸不全のちがい(頻出の区別)

国試で最も引っかかりやすいのが、呼吸困難と呼吸不全の混同です。この2つはまったく別の概念で、評価法も対応も変わります。

呼吸不全はさらに、PaCO2の値によってI型(PaCO2正常~低下)II型(PaCO2 45 mmHg超の高炭酸ガス血症を伴う)に分類されます。II型呼吸不全では後述のCO2ナルコーシスに注意が必要です。

項目呼吸困難呼吸不全
性質主観的な「苦しさ」(自覚症状)客観的なガス交換異常(検査所見)
判定本人の訴え・スケールで段階評価動脈血ガス分析(ABG)で判定
指標ヒュー・ジョーンズ分類、MRCスケール、修正BorgスケールPaO2低下、PaCO2上昇、pH低下
原因呼吸器疾患のほか心疾患・貧血・不安など肺のガス交換障害・換気障害
注意点検査値が正常でも起こる自覚症状が乏しくても存在しうる
呼吸困難は主観的症状、呼吸不全は検査で確認できる客観的異常
呼吸困難は主観的症状、呼吸不全は検査で確認できる客観的異常

喀痰貯留とCO2ナルコーシス

呼吸器疾患のリハビリで必ず観察すべき2大トラブルが、喀痰(かくたん)貯留CO2ナルコーシスです。

喀痰貯留は、痰が気道につまることで①痰がからんで呼吸が苦しくなる、②酸素が取り込みにくくなる(無気肺)、③細菌が繁殖して感染(肺炎)のリスクが高まる、という悪循環を招きます。そのため痰を出しやすくするケア(排痰法・加湿・水分補給・体位変換)が重要になります。

CO2ナルコーシスは、体内に二酸化炭素が蓄積して中枢神経が抑制される状態です。慢性的にPaCO2が高いII型呼吸不全の患者に高濃度酸素を漫然と投与すると、低酸素刺激による呼吸中枢の駆動が失われて自発呼吸が抑制され、さらにCO2が溜まって発症します。

「酸素を吸わせているのに眠そうになった」は危険サイン。呼吸状態の観察が最重要です。

喀痰貯留とCO2ナルコーシス — 早期発見・早期対応が命を守る
喀痰貯留とCO2ナルコーシス — 早期発見・早期対応が命を守る

呼吸困難の評価法(ヒュー・ジョーンズ分類・MRCスケール・6MWT)

呼吸リハでは、症状の重症度運動耐容能の両面から評価します。段階の数字と内容の組み合わせは国試の定番出題です。

ヒュー・ジョーンズ(Hugh-Jones)分類は日本で広く使われる5段階の重症度分類で、I度が最も軽く、V度が最重症です。同年齢の健常者と比べた歩行能力を基準に判定します。

MRC息切れスケールは0〜4の5段階(数字が大きいほど重症)で、両者は段階の数字の向きと開始番号が異なるため混同に注意してください。

6分間歩行テスト(6MWT)は、平坦な直線コースを6分間で歩ける距離(6分間歩行距離)を測定するもので、運動耐容能・全身持久力の指標として、また治療効果判定にも用いられます。歩行中のSpO2低下(運動誘発性低酸素血症)も同時に確認できます。

段階ヒュー・ジョーンズ分類MRC息切れスケール
最軽度I度:同年齢の健常者と同様の労作・歩行ができる(激しい運動で息切れ)0:息切れなし
軽度II度:平地では同年齢者と同様に歩けるが、坂道・階段では息切れ1:息切れは軽度(急ぎ足や坂道で)
中等度III度:平地でも健常者並みには歩けないが、自分のペースなら1.6km以上歩ける(平地歩行で息切れ)2:平地歩行で息切れし、同年代より遅い
高度IV度:休みながらでないと50m以上歩けない(少しの動作で息切れ)3:平地を数分歩くと立ち止まって息を整える
最重度V度:会話・着替えでも息切れ、安静時にも息切れがあり外出できない4:息切れで外出できない・着替えでも息切れ
ヒュー・ジョーンズ分類(I〜V度)とMRC息切れスケール(0〜4)、6分間歩行テスト
ヒュー・ジョーンズ分類(I〜V度)とMRC息切れスケール(0〜4)、6分間歩行テスト

肺機能検査・SpO2・血液ガス分析

客観的評価の柱が、肺機能検査(スパイロメトリー)・SpO2モニタリング・動脈血ガス分析の3つです。

訓練の可否や中止基準の判断は、これらの数値と自覚症状をあわせて行います。

指標基準値の目安異常時の意味
%肺活量(%VC)80%以上80%未満で拘束性換気障害
1秒率(FEV1%)70%以上70%未満で閉塞性換気障害
SpO296〜99%90%未満は呼吸不全の疑い(運動時は88%以下で中止を検討)
PaO280〜100 mmHg60 mmHg以下で呼吸不全
PaCO235〜45 mmHg45 mmHg超で高炭酸ガス血症(II型呼吸不全)
pH7.35〜7.45低下=アシドーシス、上昇=アルカローシス
肺機能検査・SpO2モニタリング・血液ガス分析で呼吸状態を総合評価する
肺機能検査・SpO2モニタリング・血液ガス分析で呼吸状態を総合評価する

呼吸訓練と全身調整運動(腹式呼吸・口すぼめ呼吸・排痰法)

呼吸リハの実技の中心は、呼吸法の再教育排痰全身調整運動の3本柱です。

また、呼吸器疾患では「疲れやすい→体力低下→食事量が減り栄養低下→活動量低下」という悪循環がADL・QOLの低下を招きます。運動療法とあわせた栄養管理(高エネルギー・高蛋白)も呼吸リハの重要な要素です。

腹式呼吸・口すぼめ呼吸・体位ドレナージによる排痰の工夫
腹式呼吸・口すぼめ呼吸・体位ドレナージによる排痰の工夫

リスク管理と中止基準

安全に呼吸リハを進めるため、以下のサインを毎回チェックします。

「確認・記録・対応」を徹底し、安全第一で進めることが呼吸リハの原則です。

息切れ・SpO2・肋骨骨折・喘息発作の4つを毎回チェックする
息切れ・SpO2・肋骨骨折・喘息発作の4つを毎回チェックする
国試ポイント
① 換気障害は閉塞性(1秒率70%未満)・拘束性(%VC 80%未満)・混合性の3タイプ。COPDは閉塞性、間質性肺炎・肺線維症は拘束性。
② 呼吸困難は主観的な自覚症状、呼吸不全は動脈血ガスで判定する客観的病態(PaO2 60mmHg以下)。この区別は最頻出の引っかけ。
③ ヒュー・ジョーンズ分類はI〜V度(数字が大きいほど重症・I度が最軽度)、MRC息切れスケールは0〜4。開始番号と段階数の違いに注意。
④ 口すぼめ呼吸は呼気時の気道内圧を高めて末梢気道の虚脱を防ぐ。COPDに有効で、吸気:呼気=1:2〜3。
⑤ CO2ナルコーシスはII型呼吸不全患者への高濃度酸素投与で誘発される。頭痛・傾眠・意識障害が特徴で、酸素投与=常に安全ではない。
⑥ 運動中止の目安はSpO2 88〜90%未満、強い息切れ、喘鳴、胸痛。COPD高齢者では排痰手技や咳で肋骨骨折を起こしうる。
・ 6分間歩行テスト(6MWT)は運動耐容能・全身持久力の評価と治療効果判定に用いる。歩行中のSpO2低下も同時に確認できる。
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