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股関節の運動学と臨床(運動方向・関与筋・徒手検査・臨床応用)こかんせつのうんどうがくとりんしょう

股関節は球関節(臼状関節)で、屈曲・伸展・外転・内転・回旋のすべてが可能な、下肢で最も自由度の高い関節です。国試では各運動方向の主動作筋トーマステスト(腸腰筋短縮)トレンデレンブルグ徴候(中殿筋筋力低下)杖は患側の対側に持つという4点が繰り返し狙われます。

ここでは運動学の基礎から、片脚起立時の股関節反力・大腿骨頸部骨折・変形性股関節症といった臨床までを、スライド10枚の流れに沿って一気に整理します。

股関節の運動学と臨床|股関節の運動学と臨床 1
読み方こかんせつのうんどうがく
関節の分類球関節(臼状関節)/多軸性・3自由度
構成骨寛骨臼(腸骨・坐骨・恥骨)と大腿骨頭
主な運動方向と参考可動域屈曲125°・伸展15°・外転45°・内転20°・外旋45°・内旋45°
主動作筋伸展=大殿筋+ハムストリングス/屈曲=腸腰筋/外転=中殿筋/内転=内転筋群
主要な安定機構Y靱帯(腸骨大腿靱帯)=過伸展を制限し立位を安定させる人体最強の靱帯
代表的な徒手検査トーマステスト(腸腰筋短縮)・トレンデレンブルグ徴候(中殿筋筋力低下)
国試での狙われ方主動作筋と神経支配、テストの陽性所見、杖を持つ側、頸部骨折の骨頭壊死

股関節の運動方向と主動作筋(伸展・屈曲・外転・内転)

股関節の運動は4方向+回旋で整理します。国試では「主動作筋はどれか」「その神経支配は」という形が定番です。伸展の主役は大殿筋、屈曲の主役は腸腰筋(大腰筋+腸骨筋)、外転の主役は中殿筋、内転は内転筋群が担います。

運動方向主動作筋協力筋神経支配参考可動域
伸展大殿筋ハムストリングス(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)下殿神経/坐骨神経15°
屈曲腸腰筋(大腰筋+腸骨筋)大腿直筋・縫工筋・大腿筋膜張筋・長内転筋大腿神経・腰神経叢125°
外転中殿筋小殿筋・大腿筋膜張筋・大殿筋上部上殿神経45°
内転大内転筋・長内転筋短内転筋・恥骨筋・薄筋閉鎖神経20°
外旋大殿筋・深層外旋六筋縫工筋下殿神経ほか45°
内旋小殿筋・中殿筋前部大腿筋膜張筋上殿神経45°
股関節の伸展は大殿筋とハムストリングスが主役。登攀性起立・大殿筋歩行のキーワードもここ。
股関節の伸展は大殿筋とハムストリングスが主役。登攀性起立・大殿筋歩行のキーワードもここ。

腸腰筋の短縮とトーマステスト

腸腰筋は股関節を前方に引き上げる最強の屈筋であると同時に、短縮すると骨盤前傾を強め、腰椎前弯の増強から腰痛の原因になります。この短縮を見つける検査がトーマステストです。

紛らわしいテストと混同しないよう、目的をセットで覚えるのが得点源です。

検査名目的(何を見る)陽性所見
トーマステスト腸腰筋の短縮・股関節屈曲拘縮反対側を強く屈曲すると検査側の大腿が浮き上がる
トレンデレンブルグ徴候中殿筋の筋力低下(外転筋不全)片脚立ちで遊脚側(反対側)の骨盤が下がる
オーバーテスト大腿筋膜張筋・腸脛靱帯の短縮側臥位で挙上した下肢が内転して落ちない
エリーテスト大腿直筋の短縮腹臥位で膝を屈曲すると殿部が持ち上がる
トーマステスト。反対側を強く屈曲し、浮き上がる側が腸腰筋短縮あり。
トーマステスト。反対側を強く屈曲し、浮き上がる側が腸腰筋短縮あり。

骨盤前傾と腰椎骨盤リズム

骨盤と腰椎は連動して動きます(腰椎骨盤リズム)。適度な骨盤前傾ではスムーズな体幹運動が可能ですが、股関節屈曲拘縮があると骨盤前傾が過度になり、腰椎前弯が強まって腰部への機械的ストレスが増大します。

正常な軽度前傾と過度な骨盤前傾の比較。屈曲拘縮が腰痛につながる。
正常な軽度前傾と過度な骨盤前傾の比較。屈曲拘縮が腰痛につながる。

立位保持と片脚起立のバイオメカニクス

立位では筋活動を最小にしても姿勢が保てます。これはY靱帯(腸骨大腿靱帯)が股関節前面で緊張し、過伸展を制限して骨盤の後傾を抑えるためです。Y靱帯は人体で最も強い靱帯とされます。

一方、片脚起立では骨盤が遊脚側に傾かないよう中殿筋が強く働きます。中殿筋の力は短いレバーで長いレバー(体重)を支えるため、てこの原理により股関節反力は体重の数倍に達します。中殿筋が弱いと骨盤を保持できず、トレンデレンブルグ徴候が出現します。

項目内容国試ポイント
Y靱帯(腸骨大腿靱帯)股関節前面で腸骨と大腿骨を結ぶ過伸展を制限し立位を安定化。人体最強の靱帯
立位保持靱帯性の安定機構が主体筋活動が少なくても立位が保てる理由
片脚起立中殿筋が骨盤を水平に保持股関節反力は体重の数倍になる
トレンデレンブルグ徴候中殿筋筋力低下で陽性立脚側と反対(遊脚側)の骨盤が下がる
デュシェンヌ歩行代償として体幹を立脚側へ傾ける中殿筋不全の代償歩行
片脚起立のてこモデル。中殿筋の力が長いレバーを支えるため股関節反力は体重の数倍。
片脚起立のてこモデル。中殿筋の力が長いレバーを支えるため股関節反力は体重の数倍。

股関節の代表疾患と杖の使い方

股関節の臨床で頻出なのが大腿骨頸部骨折変形性股関節症です。頸部骨折は高齢者・骨粗鬆症で転倒により生じ、頸部を走る血流が途絶えやすいため大腿骨頭壊死偽関節のリスクが高いのが最大の特徴です。変形性股関節症では関節裂隙の狭小化・骨硬化・骨嚢胞・骨棘というX線4徴が問われます。

免荷の基本はです。杖は患側の対側(健側)の手に持ちます。こうすることで杖と患側が同時に接地し、体重を分散して中殿筋の活動と股関節反力を軽減できます。患側と同じ手に持つと免荷効果が乏しく、誤りとして出題されます。

大腿骨頸部骨折変形性股関節症
主な原因転倒(高齢者・骨粗鬆症)加齢・臼蓋形成不全・関節軟骨の摩耗
特徴頸部の血流途絶で骨頭壊死・偽関節を起こしやすいX線で関節裂隙狭小化・骨硬化・骨嚢胞・骨棘
症状股関節痛・荷重不能・患肢短縮と外旋位運動時痛・可動域制限・跛行
対応早期手術+早期離床でADL低下を防ぐ運動療法・減量・杖による免荷
杖の使い方対側の手で使用対側の手で使用(右股関節痛なら左手)
杖は患側の対側の手に持つ。中殿筋の負担を軽くし変形性股関節症の免荷に有効。
杖は患側の対側の手に持つ。中殿筋の負担を軽くし変形性股関節症の免荷に有効。
国試ポイント
① 股関節の伸展主動作筋は大殿筋(下殿神経)、屈曲は腸腰筋、外転は中殿筋(上殿神経)、内転は内転筋群(閉鎖神経)。
② 参考可動域は屈曲125°・伸展15°・外転45°・内転20°・外旋45°・内旋45°。伸展15°という小さい数値が引っかけになる。
③ トーマステストは腸腰筋の短縮(股関節屈曲拘縮)を見る検査。反対側を強く屈曲したとき検査側の大腿が浮けば陽性。
④ トレンデレンブルグ徴候は中殿筋の筋力低下で陽性。下がるのは立脚側ではなく反対(遊脚側)の骨盤。
⑤ Y靱帯(腸骨大腿靱帯)は股関節の過伸展を制限して立位を安定させる、人体最強の靱帯。
⑥ 杖は患側の対側(健側)の手に持つ。大腿骨頸部骨折は骨頭壊死・偽関節のリスクが高い。
📖 股関節の運動学と臨床をスライドで学ぶ(国試辞書) 図解スライドでサクッと復習