変形性股関節症は、股関節の関節軟骨がすり減り骨が変形することで、痛み・可動域制限・歩行障害をきたす疾患です。日本では臼蓋(寛骨臼)形成不全を基礎とする二次性が多いのが最大の特徴で、ここが国試の頻出ポイントになります。リハビリテーションでは、可動域と筋力(特に中殿筋=股外転筋)の評価を行い、関節への荷重を減らしながら筋力と可動域を保つことが基本方針です。
| 読み方 | へんけいせいこかんせつしょうのりはびりてーしょん |
|---|---|
| 病態 | 関節軟骨の摩耗・骨棘形成・関節裂隙狭小化などの変性性変化 |
| 分類 | 一次性(原因が特定しづらい加齢性変性)/二次性(臼蓋形成不全・骨折・関節炎などの明らかな原因あり)。日本では二次性が多い |
| 初期症状 | 荷重時痛・歩行時痛・歩き始めの痛み、こわばり、違和感(動き出すと楽になることが多い) |
| 進行期症状 | 自発痛・夜間痛・関節可動域制限・大腿部の筋萎縮、ADL低下 |
| 主な評価 | 股関節ROM(屈曲・伸展・内転・外転・内旋・外旋)、トーマステスト、パトリックテスト、トレンデレンブルグ徴候、MMT(中殿筋・大腿四頭筋)、ADL評価 |
| 保存療法 | 股外転筋(中殿筋)訓練・大腿四頭筋訓練・拘縮予防のROM訓練・温熱療法・全身運動・杖・減量 |
| 杖の持ち方 | 患側と反対側(健側)の手で持つ=患側への荷重を軽減 |
| 手術 | 寛骨臼回転骨切り術(RAO)、人工股関節全置換術(THA) |
| 国試での狙われ方 | 二次性が多いこと/初期=荷重時痛/トレンデレンブルグ徴候の意味/杖は健側/術後脱臼肢位(屈曲・内転・内旋)の回避 |
変形性股関節症は、股関節の関節軟骨がすり減り、骨が変形することで痛みや可動域制限が生じる疾患です。正常な股関節では軟骨がなめらかで動きがスムーズですが、変性が進むと軟骨が摩耗し、骨棘形成・関節裂隙狭小化・骨硬化などが起こり、痛みや歩行障害につながります。
原因による分類は国試頻出です。一次性は加齢などによる原因の特定しづらい変性、二次性ははっきりした原因があって起こる変性で、日本では臼蓋(寛骨臼)形成不全を基礎とした二次性が圧倒的に多い点をおさえてください。
| 分類 | 定義 | 主な原因 |
|---|---|---|
| 一次性 | 明らかな基礎疾患がなく加齢などにより生じる変性 | 加齢・肥満・力学的過負荷 |
| 二次性 | はっきりした原因があって二次的に生じる変性 | 臼蓋形成不全(先天性股関節脱臼の遺残)、大腿骨頸部骨折などの外傷、化膿性・結核性関節炎、大腿骨頭壊死 |
| 日本での特徴 | 二次性が多い(欧米は一次性が多い) | 臼蓋形成不全が最多、中高年女性に多い |
初期は荷重時痛・歩行時痛が中心で、とくに歩き始めの痛み(始動時痛)が特徴です。動き出すと楽になることが多く、違和感・こわばり程度で見過ごされがちですが、進行すると痛みが強くなり日常生活へ影響します。
進行期には安静時にも痛む自発痛、睡眠を妨げる夜間痛、関節可動域制限、大腿部の筋萎縮が出現し、歩行・起き上がり・階段昇降といったADLが困難になります。
| 時期 | 主な症状 | 臨床的意味 |
|---|---|---|
| 初期 | 荷重時痛、歩行時痛、歩き始めの痛み、こわばり、違和感 | 動き出すと軽快することが多く、受診が遅れやすい |
| 中期 | 痛みが持続、可動域制限(特に内旋・外転・伸展)の出現 | 跛行が明らかになる |
| 進行期 | 自発痛、夜間痛、著明な可動域制限、筋萎縮(大腿四頭筋・中殿筋) | 歩行・起居動作・階段昇降が困難、ADL低下 |
評価の基本は股関節可動域(ROM)の測定です。屈曲・伸展・内転・外転・内旋・外旋の6方向を確認し、あわせて各運動での痛みの有無もチェックします。変形性股関節症では特に内旋・外転・伸展が早期から制限されやすく、可動域制限は機能障害に直結します。
| 運動方向 | 参考可動域(日本整形外科学会・日本リハ医学会) | 主動作筋 |
|---|---|---|
| 屈曲 | 0〜125° | 腸腰筋・大腿直筋 |
| 伸展 | 0〜15° | 大殿筋・ハムストリングス |
| 外転 | 0〜45° | 中殿筋・小殿筋 |
| 内転 | 0〜20° | 内転筋群(大内転筋・長内転筋など) |
| 外旋 | 0〜45° | 外旋六筋・大殿筋 |
| 内旋 | 0〜45° | 小殿筋・中殿筋前部線維 |
股関節の屈曲拘縮と疼痛の由来を見極める代表的な2つのテストです。名称と手技・陽性所見の組み合わせが国試で狙われます。
| テスト | 肢位・手技 | 陽性所見 | わかること |
|---|---|---|---|
| トーマステスト | 背臥位で片側股関節を最大屈曲 | 反対側の股関節(下肢)がベッドから浮き上がる | 屈曲拘縮・伸展制限 |
| パトリックテスト | 背臥位で足を反対側大腿に乗せ、膝を外方へ開く(屈曲・外転・外旋) | 股関節部・鼠径部の疼痛 | 股関節痛、仙腸関節痛 |
| トレンデレンブルグ徴候 | 患側での片脚立位 | 遊脚側(反対側)の骨盤が下降 | 中殿筋(股外転筋)の筋力低下 |
筋力評価で最重要なのが股外転筋=中殿筋です。中殿筋は片脚立位で骨盤を水平に保つ働きをもち、筋力が低下するとトレンデレンブルグ徴候が陽性となります。
| 筋 | 作用 | 支配神経 | 低下時の所見 |
|---|---|---|---|
| 中殿筋 | 股関節外転(前部線維は内旋) | 上殿神経(L4〜S1) | トレンデレンブルグ徴候陽性、デュシェンヌ跛行 |
| 小殿筋 | 股関節外転・内旋 | 上殿神経 | 骨盤支持性の低下 |
| 大殿筋 | 股関節伸展・外旋 | 下殿神経(L5〜S2) | 立ち上がり・階段昇降困難 |
| 大腿四頭筋 | 膝関節伸展 | 大腿神経(L2〜L4) | 歩行不安定、膝折れ |
ADL評価では、股関節の深い屈曲や外転・外旋を要する動作で困難が生じます。歩行・和式トイレでのしゃがみ込み/立ち上がり・あぐら・靴下を履く動作・爪切り・浴槽のまたぎなどを具体的に聴取します。
保存療法の柱は筋萎縮と関節拘縮の予防で、症状が軽い早期から取り組むことが重要です。
| 困難になりやすい動作 | 要求される股関節運動 | 指導・工夫 |
|---|---|---|
| 和式トイレでのしゃがみ込み | 深い屈曲 | 洋式トイレ、補高便座 |
| あぐら | 屈曲+外転+外旋 | 椅子座位の生活へ変更 |
| 靴下を履く・爪切り | 深い屈曲+外旋 | ソックスエイド、リーチャー、長柄靴べら |
| 浴槽のまたぎ・入浴 | 屈曲+外転 | 手すり、シャワーチェア、バスボード |
| 歩行・階段昇降 | 荷重・伸展 | 健側手で杖、手すり使用、段差解消 |
保存療法で改善しない場合は手術が選択されます。代表は寛骨臼回転骨切り術(RAO)と人工股関節全置換術(THA)です。RAOは臼蓋形成不全のある比較的若年例で自己の関節を温存する術式、THAは進行例・高齢者に対して行われます。
術後リハビリは等尺性訓練 → 可動域訓練 → 移乗 → 立位 → 歩行の順に段階的に進めます。荷重管理は術式・医師の指示に従います。
THA後で最も重要な注意点が脱臼予防です。後方アプローチでは屈曲・内転・内旋の複合肢位(例:脚を組む、深くしゃがむ、低い椅子、横座り、和式トイレ)が脱臼肢位となるため禁止します。
| 段階 | 内容 | 目的・注意 |
|---|---|---|
| 術直後 | 等尺性訓練(大腿四頭筋セッティング、殿筋収縮) | 筋萎縮・深部静脈血栓症の予防 |
| 早期 | 可動域訓練 | 拘縮予防。ただし脱臼肢位はとらせない |
| 離床期 | 移乗動作訓練 → 立位 | 荷重量は指示に従う(部分荷重→全荷重) |
| 歩行期 | 平行棒→歩行器→杖歩行 | 杖は健側。転倒予防 |
| 生活期 | 自助具活用・体重管理・水中歩行 | 過度な荷重を避けて機能維持 |