項部硬直(こうぶこうちょく)は、髄膜刺激症状があるかどうかを確かめる代表的な神経学的診察法です。仰臥位の患者の後頭部を支えて頭をゆっくり持ち上げ、頸部の前屈しやすさをみます。髄膜炎やくも膜下出血など、見逃すと命に関わる疾患のサインとして国家試験でも頻出です。
| 読み方 | こうぶこうちょく |
|---|---|
| 分類 | 神経学的診察/髄膜刺激症状の診察法 |
| 目的・意義 | 髄膜刺激症状の有無を確認する |
| 体位 | 仰臥位(患者を仰向けにする) |
| 手技・方法 | 後頭部に手を当て、頭を静かに持ち上げて頸部を前屈させる |
| 正常所見 | 抵抗なくスムーズに頸部前屈ができる |
| 陽性(異常)所見 | 筋の抵抗が強く、頸部前屈が不十分となる |
| 代表疾患 | 髄膜炎、くも膜下出血 |
| 関連する髄膜刺激症状 | ケルニッヒ徴候、ブルジンスキー徴候 |
項部硬直とは、髄膜刺激症状があるかどうかを確認するための診察法です。髄膜が炎症や出血などで刺激されると、反射的に頸部(項部)の筋が緊張してこわばり、首を前に曲げにくくなります。この状態を項部硬直と呼びます。
頸椎症などによる単なる「首のこり」とは異なり、項部硬直は中枢神経系の緊急疾患を示唆する危険な徴候として扱われます。
項部硬直の診察は、必ず仰臥位(仰向け)で行います。無理に力を加えず、やさしくゆっくり動かすことが原則です。
| 手順 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ① | 患者を仰向け(仰臥位)にする | 枕は低くし、全身の力を抜かせる |
| ② | 検者は後頭部に手を当てる | 頭部をしっかり支える |
| ③ | 頭を静かに持ち上げて頸部を前屈させる | ゆっくり・やさしく行う |
| ④ | 前屈のしやすさ・抵抗の有無を評価する | 抵抗の強さと前屈可動域をみる |
正常か異常かの判定は、前屈時の抵抗と前屈が十分にできるかの2点でみます。
| 判定 | 所見 | 意味 |
|---|---|---|
| 正常(陰性) | 抵抗なく、スムーズに頸部前屈ができる | 髄膜刺激症状なし |
| 異常(陽性) | 頭を持ち上げるときに筋の抵抗が強い | 髄膜刺激症状あり |
| 異常(陽性) | 首の前屈が不十分になる(顎が胸につかない) | 項部硬直あり=髄膜炎・くも膜下出血を疑う |
項部硬直が陽性であれば、髄膜に刺激を与える病態を強く疑い、速やかな医療機関への紹介が必要です。鍼灸・あん摩マッサージ指圧の施術現場でも、施術可否を判断するうえで極めて重要な危険徴候(レッドフラッグ)です。
あわせてケルニッヒ徴候やブルジンスキー徴候といった他の髄膜刺激症状も確認すると、より確実な評価ができます。
頸部の診察では、項部硬直以外にもさまざまな異常所見をみます。項部硬直は「硬さ・動きにくさ」を、他は「腫れ・変形」をみる点が違いです。国家試験では他の頸部所見と並べて出題されるため、対比で覚えておきましょう。
| 所見 | 主な特徴 | 疑う疾患 |
|---|---|---|
| 項部硬直 | 頸部の前屈制限、頸が硬くなる | 髄膜炎、くも膜下出血 |
| 甲状腺腫 | 前頸部の腫脹、嚥下で上下に動く | バセドウ病(軟らかい・血管雑音)、橋本病(硬い)、甲状腺癌(硬く可動性低下) |
| 唾液腺腫脹 | 耳下腺・顎下腺の腫大、圧痛を伴うことが多い | 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、炎症・腫瘍・結石 |
| リンパ節腫脹 | 頸部リンパ節の腫大 | 炎症、結核、悪性リンパ腫、癌の転移 |
| 斜頸・翼状頸 | 頸部の変形 | 斜頸=胸鎖乳突筋の短縮/翼状頸=ターナー症候群 |