アフロの手アフロの手

筋循環と鍼(筋血流量増加の機序)のしくみ・作用機序と国試ポイントきんじゅんかんとはり

鍼を刺すと、その局所の筋血流量が増加します。これが発痛物質の除去・疲労物質の洗い流し・筋緊張の緩和・筋疲労回復につながる、鍼灸理論の中心的な作用機序です。血流増加のルートは大きく2つ、①神経性ルート(軸索反射)②体液性ルート(筋細胞由来)で、どちらも最終的にはNO(一酸化窒素)を介して血管平滑筋を弛緩させます。

筋循環と鍼|筋循環と鍼 1
読み方きんじゅんかんとはり
定義鍼刺激により局所の筋血流量が増加する現象と、その作用機序
関与する受容器・神経ポリモーダル受容器(無髄C線維)
神経性ルート(軸索反射)鍼刺激→ポリモーダル受容器(C線維)→軸索反射→CGRP・サブスタンスP・VIP放出→血管拡張→筋血流↑
体液性ルート(筋細胞由来)鍼刺激→筋細胞損傷→ATP漏出→ATP→ADP→AMP→アデノシン→血管内皮受容体→NO産生→血管平滑筋弛緩→血管拡張→筋血流↑
最終共通経路NO(一酸化窒素)=血管拡張を起こすガス性メディエーター。血管内皮由来
主な血管拡張物質CGRP(主役)、サブスタンスP、VIP、ATP、ADP、AMP、アデノシン、CO2・乳酸などの代謝産物
刺激量依存性雀啄術では雀啄回数が多いほど筋血流量が増加(対照0回<1回<10回<30回)
鍼通電刺激(EA)筋収縮→筋ポンプ作用+CO2・乳酸などの代謝産物による血管拡張の相乗効果
臨床的意義発痛物質の除去・疲労物質の洗い流し・筋緊張の緩和・筋疲労回復
国試での狙われ方C線維/軸索反射/CGRP/NO=最終共通経路/アデノシン=末梢性鎮痛の組み合わせ

鍼刺激で筋血流量が増えると何が起こるか

鍼刺激によって局所の筋血流量が増加することは、鍼の効果を説明する最も基本的な生理学的根拠です。血流が増えることで次の4つの効果が得られます。

つまり「血流アップ=コリと痛みの改善」という流れが、鍼灸理論の出発点になります。

鍼刺激による筋血流量増加と、その4つの効果
鍼刺激による筋血流量増加と、その4つの効果

①神経性ルート ― 軸索反射による血管拡張

鍼が刺激するのは、皮膚・筋にあるポリモーダル受容器です。ポリモーダル受容器は侵害・温度・触覚など様々な刺激を感知する受容器で、無髄のC線維が関与します。ここから起こるのが軸索反射(中枢を介さず、神経終末から起こる反射)です。

軸索反射により神経終末から血管拡張物質が放出され、血管が拡張して筋血流が増加します。国試ではCGRPが血管拡張の主役という点が超重要です。

段階内容
1鍼刺激
2ポリモーダル受容器(C線維)が興奮
3軸索反射(神経終末からの反射)
4CGRP・サブスタンスP・VIP の放出
5血管拡張
6筋血流↑
軸索反射による血管拡張の流れ(CGRPが主役)
軸索反射による血管拡張の流れ(CGRPが主役)

②体液性ルート ― 骨格筋細胞由来の血管拡張(ATP→アデノシン)

もう一つのルートは、鍼による筋細胞損傷から始まります。損傷した筋細胞からATPが漏出し、これが段階的に分解されていきます。

ATP → ADP → AMP → アデノシン この4つはすべて血管拡張作用をもつのがポイントです。アデノシンは核酸の最終代謝産物です。

物質正式名称・位置づけ作用
ATPアデノシン三リン酸血管拡張作用あり
ADPアデノシン二リン酸血管拡張作用あり
AMPアデノシン一リン酸血管拡張作用あり
アデノシン核酸の最終代謝産物血管拡張作用あり
筋細胞損傷→ATP漏出→アデノシンまでの分解経路
筋細胞損傷→ATP漏出→アデノシンまでの分解経路

NO(一酸化窒素)は血管拡張の最終共通経路

CGRP・ATP・ADP・アデノシンなどの血管拡張物質は、それぞれ血管内皮受容体に結合し、内皮細胞からNO(一酸化窒素)を産生させます。NOが血管平滑筋を弛緩させることで血管が拡張し、血流が増加します。

「血管拡張の最終共通経路はNO」は国試頻出の言い回しです。

段階内容
1CGRP・ATP・ADP・アデノシン
2血管内皮受容体に結合
3NO(一酸化窒素)産生
4血管平滑筋の弛緩
5血管拡張 → 血流増加
NOを介した血管平滑筋弛緩=血管拡張の最終共通経路
NOを介した血管平滑筋弛緩=血管拡張の最終共通経路

刺激量依存性 ― 雀啄回数が多いほど血流は増える

雀啄術(じゃくたくじゅつ)は、鍼を上下に軽く速く動かす手技です。短時間でリズミカルに刺激することで、局所の血流を効率よく増加させることができます。

スライドでは、雀啄回数が多いほど筋血流量が有意に増加することが報告されています(相対値の例)。

条件筋血流量(相対値の例)
対照(0回)1
雀啄1回約1.5
雀啄10回約2.4
雀啄30回約3.3
雀啄回数と筋血流量の関係(刺激量依存性)
雀啄回数と筋血流量の関係(刺激量依存性)

アデノシンと鎮痛/鍼通電刺激(EA)と血流増加

アデノシンは筋血流改善だけでなく、末梢性鎮痛にも関与します。侵害受容器の興奮を抑え、痛みの信号を抑制するため、鍼鎮痛の重要物質とされます。

一方、鍼通電刺激(EA)では鍼に電気を流すことで筋収縮が起こり、以下の2つが相乗的に働いて血流が大きく増加します。

項目内容
アデノシンの作用①血管拡張作用により筋血流を改善
アデノシンの作用②侵害受容器の興奮を抑え末梢性鎮痛
鍼通電(EA)の流れ鍼に通電→筋収縮→筋ポンプ作用→血流増加
EAの代謝産物CO2・乳酸などが血管拡張作用をもつ
鍼通電刺激(EA)による筋ポンプ作用と代謝産物の血管拡張
鍼通電刺激(EA)による筋ポンプ作用と代謝産物の血管拡張

総まとめ ― 血流増加の2大ルート

最後に、国試直前に思い出すべき最重要の流れを整理します。

最重まとめは C線維 → CGRP → NO → 血管拡張 → 筋血流UP、そして ATP → ADP → AMP → アデノシン でも血管拡張 → 筋血流UP です。

血流増加の2大ルート総まとめ(神経性ルート/体液性ルート)
血流増加の2大ルート総まとめ(神経性ルート/体液性ルート)
国試ポイント
① ポリモーダル受容器=無髄C線維。侵害・温度・触覚など様々な刺激を感知する。
② 軸索反射は中枢を介さない神経終末からの反射。放出物質はCGRP・サブスタンスP・VIPで、血管拡張の主役はCGRP。
③ 筋細胞損傷で漏出したATPはADP→AMP→アデノシンと分解され、4つすべてに血管拡張作用がある。
④ 血管拡張の最終共通経路はNO(一酸化窒素)。血管内皮由来のガス性メディエーターで、血管平滑筋を弛緩させる。
⑤ アデノシンは筋血流改善に加え、侵害受容器の興奮を抑える末梢性鎮痛に関与する(鍼鎮痛の重要物質)。
⑥ 雀啄術は回数が多いほど筋血流量が増加する=刺激量依存性。0回<1回<10回<30回。
・ 鍼通電刺激(EA)は筋収縮による筋ポンプ作用+CO2・乳酸など代謝産物の血管拡張の相乗効果。
📖 筋循環と鍼をスライドで学ぶ(国試辞書) 図解スライドでサクッと復習