血液生化学検査の項目・基準値・臨床的意義けつえきせいかがくけんさ
血液生化学検査は、血清に含まれる蛋白・糖・脂質・含窒素成分(BUN、クレアチニン、尿酸)・胆汁色素・酵素・炎症蛋白などを測定し、肝臓・腎臓・膵臓・筋肉・炎症の状態を推し量る検査群です。国家試験では基準値の数字と、「どの項目がどの臓器・疾患で異常になるか」の組み合わせがそのまま問われます。ここでは17項目のスライド内容を、基準値表と異常値の原因リストに整理して解説します。
| 読み方 | けつえきせいかがくけんさ |
| 分類 | 臨床検査(血液検査)/臨床医学総論 |
| 検体 | 血清(静脈血を採血し遠心分離) |
| 目的・意義 | 肝機能・腎機能・糖代謝・脂質代謝・筋障害・炎症・感染の評価 |
| 主な項目 | 総蛋白、アルブミン、A/G比、血糖、HbA1c、コレステロール、トリグリセリド、BUN、クレアチニン、尿酸、ビリルビン、AST・ALT、ALP、γ-GTP、LDH、CK、CRP、ASO、ASK |
| 代表的な基準値 | 総蛋白6.5〜8.0g/dL/空腹時血糖60〜110mg/dL/HbA1c6.2%未満/BUN8〜20mg/dL/CRP0.3mg/dL以下 |
| 肝の指標 | AST・ALT・ALP・γ-GTP・LDH・ビリルビン・A/G比 |
| 腎の指標 | BUN、クレアチニン(腎糸球体機能のよい指標)、尿酸 |
| 筋の指標 | CK(骨格筋の酵素)、AST、LDH |
| 炎症・感染の指標 | CRP(急性期に上昇・疾患特異性なし)、ASO・ASK(溶連菌感染) |
血清蛋白・アルブミン・A/G比
血清蛋白の主な成分はアルブミン、α₁・α₂・β・γグロブリン、フィブリノーゲン、プロトロンビンなどです。A/G比=アルブミン÷グロブリンで、両者のバランスをみます。
- アルブミンが低下するもの:肝障害、ネフローゼ症候群、栄養不良、消化吸収不全、腹水
- γグロブリンが増加するもの:慢性肝炎、肝硬変、膠原病、多発性骨髄腫
- アルブミン低下+γグロブリン増加 → A/G比は低下(肝硬変の典型像)
| 項目 | 基準値 |
| 総蛋白 | 6.5〜8.0 g/dL |
| アルブミン | 55±5 % |
| γグロブリン | 15〜20 % |
総蛋白・アルブミン・蛋白分画・A/G比の基準値と異常
糖代謝:血糖とHbA1c
血糖は肝臓からのブドウ糖放出と末梢組織での利用のバランスで保たれます。血糖を下げるホルモンはインスリンのみ、上げるホルモンはグルカゴン・アドレナリン・成長ホルモン・副腎皮質ホルモン・甲状腺ホルモンと多数あるのが引っかけポイントです。
- 空腹時血糖の基準値:60〜110mg/dL
- 糖尿病の判定:空腹時血糖126mg/dL以上、随時血糖200mg/dL以上
- HbA1c=赤血球のヘモグロビンにブドウ糖が結合した糖化蛋白。過去1〜2か月の平均血糖を反映し、食事直後の影響を受けにくいため経過観察に用いる。基準値は6.2%未満
HbA1cは過去1〜2か月の血糖状態を反映する
脂質:コレステロールとトリグリセリド
脂質異常症の診断に用います。HDLは善玉で低いと問題、LDLは悪玉で高いと問題という向きの違いが頻出です。トリグリセリドは中性脂肪のことで、著しい高値では急性膵炎を起こすことがあります。
- トリグリセリドが高値になるもの:肥満・糖尿病・脂質異常症
- LDLが高いと動脈硬化を促進、HDLが低いと動脈硬化性疾患で問題
| 項目 | 基準値 |
| 総コレステロール | 150〜220 mg/dL |
| HDLコレステロール | 40 mg/dL 以上 |
| LDLコレステロール | 140 mg/dL 未満 |
| トリグリセリド(中性脂肪) | 150 mg/dL 未満 |
コレステロールの基準値とHDL・LDLの違い
含窒素成分:BUN・クレアチニン・尿酸
いずれも代謝の最終産物で、腎臓から排泄されるため腎機能低下で上昇します。
- BUN(尿素窒素):蛋白代謝の最終産物である尿素の量。高値=腎機能低下・消化管出血・うっ血性心不全(腎前性の要素も含む)
- クレアチニン(Cr):筋肉でクレアチンから産生され腎から濾過。腎糸球体機能をみるよい指標で、腎機能低下で上昇
- 尿酸:プリン体の最終産物。高値=痛風・高血圧・うっ血性心不全・腎機能低下
| 項目 | 基準値 |
| BUN(尿素窒素) | 8〜20 mg/dL |
| クレアチニン(男性) | 0.6〜1.1 mg/dL |
| クレアチニン(女性) | 0.4〜0.8 mg/dL |
| 尿酸(男性) | 3.0〜7.0 mg/dL |
| 尿酸(女性) | 2.0〜5.5 mg/dL |
クレアチニンは腎糸球体機能をみるよい指標
胆汁色素:ビリルビンと黄疸の鑑別
ビリルビンは赤血球中のヘモグロビンの分解産物で、肝臓で処理され胆汁へ排泄されます。黄疸の鑑別が国試頻出です。
- 閉塞性黄疸 → 直接ビリルビンが優位に上昇(胆管が詰まり胆汁の流れが障害)
- 溶血性黄疸 → 間接ビリルビンが高値(赤血球が壊れすぎる)
- 肝細胞障害でもビリルビン処理が低下して高値となる
| 項目 | 基準値 |
| 総ビリルビン | 0.2〜1.0 mg/dL |
| 直接ビリルビン | 0〜0.3 mg/dL |
| 間接ビリルビン | 0.1〜0.8 mg/dL |
閉塞性黄疸は直接、溶血性黄疸は間接ビリルビンが上昇
血清酵素:AST・ALT・ALP・γ-GTP・LDH・CK
酵素はどの臓器に多く分布するかで高値の意味が変わります。分布と上昇疾患をセットで覚えます。
- AST:肝臓・心筋・骨格筋・腎臓に分布。心筋梗塞や進行性筋萎縮症でも増加
- ALT:主に肝臓。肝障害の指標として特異性が高い
- ALP:骨・肝臓・腸・腎臓・胆管に分布。高値=閉塞性黄疸・骨の悪性腫瘍・小児(成長期は生理的高値)
- γ-GTP:肝臓・腎臓・膵臓に分布。アルコール性肝障害で特に上昇。閉塞性黄疸・慢性肝炎・肝硬変・肝癌でも高値
- LDH:心筋・骨格筋・腎臓・肝臓に広く分布。高値=肝疾患・悪性腫瘍・心筋梗塞・溶血性貧血
- CK:主に骨格筋の酵素。高値=進行性筋ジストロフィー・心筋梗塞・筋の変性壊死・過度な運動
| 酵素 | 基準値 | 高値の代表例 |
| AST | 13〜35 IU/L | 肝炎・肝硬変・肝癌・心筋梗塞・筋疾患 |
| ALT | 8〜48 IU/L | 急性肝炎・慢性肝炎・肝硬変(肝特異性が高い) |
| ALP | 86〜252 IU/L | 閉塞性黄疸・骨腫瘍・小児 |
| γ-GTP(男性) | 7〜60 IU/L | アルコール性肝障害・閉塞性黄疸 |
| γ-GTP(女性) | 7〜38 IU/L | 同上 |
| LDH | 109〜210 IU/L | 心筋梗塞・悪性腫瘍・溶血性貧血・肝疾患 |
| CK | 35〜175 U/L | 進行性筋ジストロフィー・心筋梗塞・筋壊死 |
ASTは肝臓以外にも多い、ALTは肝臓メイン
炎症・感染の指標:CRP・ASO・ASK
CRPは炎症や組織破壊で血中に出現する異常蛋白で、炎症の勢いを示します。急性期に上昇し回復すると速やかに消えるため、病変の活動状態や予後判定に有用ですが、疾患特異性はありません。
- CRP基準値:0.3mg/dL以下
- ASO(抗ストレプトリジンO)=A群溶血性連鎖球菌の外毒素に対する抗体。基準値166倍未満。高値=溶連菌感染症・リウマチ熱・急性糸球体腎炎
- ASK(抗ストレプトキナーゼ)=溶連菌が産生するストレプトキナーゼに対する抗体。急性扁桃炎・猩紅熱・リウマチ熱・急性糸球体腎炎で上昇
- ASO・ASKはいずれも「溶連菌感染のあと」をみる検査としてセットで覚える
CRPは炎症の急性期に上昇し疾患特異性はない
国試ポイント
① 総蛋白6.5〜8.0g/dL、アルブミン55±5%、γグロブリン15〜20%。A/G比=アルブミン÷グロブリン。肝硬変ではアルブミン低下+γグロブリン増加でA/G比が下がる。
② 血糖を下げるホルモンはインスリンだけ。上げるのはグルカゴン・アドレナリン・成長ホルモン・副腎皮質ホルモン・甲状腺ホルモン。
③ HbA1cは過去1〜2か月の平均血糖を反映(6.2%未満)。「直前の食事で変動する」は誤り。
④ HDLは低いと問題、LDLは高いと問題。トリグリセリド(中性脂肪)150mg/dL未満、著明高値で急性膵炎。
⑤ クレアチニンは腎糸球体機能のよい指標。尿酸はプリン体の最終産物で痛風と結びつく。
⑥ 閉塞性黄疸=直接ビリルビン優位、溶血性黄疸=間接ビリルビン高値。
・ ALTは肝特異性が高いが、ASTは心筋・骨格筋にも多く心筋梗塞や筋ジストロフィーで上昇。CKは筋障害の指標。
・ ALPは閉塞性黄疸・骨腫瘍のほか小児(成長期)で生理的に高値。γ-GTPはアルコール性肝障害で特に上昇。
・ CRP(0.3mg/dL以下)は炎症の活動性を反映するが疾患特異性はない。ASO・ASKは溶連菌感染の既往を示す。
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