肩甲帯は鎖骨・肩甲骨と、それらをつなぐ胸鎖関節・肩鎖関節・肩甲上腕関節から成り、上肢を体幹につなぎながら人体で最も大きな可動域を生み出す部位です。肩甲上腕関節は球関節で関節窩が浅く不安定なため、関節唇と回旋筋腱板(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)が安定性を補っています。国試では骨の突起名、運動と主動筋の組み合わせ、そして肩甲上腕リズム=肩甲骨上方回旋1:肩関節外転2が頻出です。
| 読み方 | けんこうたいとじょうしのこつ・かんせつ・うんどう |
|---|---|
| 構成する骨 | 鎖骨(S字状)・肩甲骨(三角形の扁平骨)・上腕骨 |
| 構成する関節 | 胸鎖関節・肩鎖関節・肩甲上腕関節(+機能的に肩甲胸郭連結) |
| 肩甲上腕関節の分類 | 球関節(多軸性)/関節窩は浅く可動域大・安定性低 |
| 安定化機構 | 関節唇(浅い関節窩を補う)・回旋筋腱板4筋・関節包靱帯 |
| 肩甲骨の運動 | 挙上・下制・内転(内方移動)・外転(外方移動)・上方回旋・下方回旋の6方向 |
| 主な骨指標 | 肩甲棘・肩峰・烏口突起・上角・下角・内側縁・外側縁/大結節・小結節・結節間溝 |
| 国試での狙われ方 | 結節間溝を通る腱(上腕二頭筋長頭腱)、運動と主動筋の組合せ、回旋筋腱板4筋、肩甲上腕リズム1:2 |
肩甲帯は鎖骨と肩甲骨で構成され、上肢と体幹をつなぐ唯一の骨性連結が鎖骨です。鎖骨はS字状に彎曲し、内側端は胸骨に、外側端は肩甲骨の肩峰に接します。皮下に位置し全長を触知できるため、体表解剖の基準線としても重要です。
肩甲骨の主な骨指標は、背面を横走する肩甲棘、その外側端が高まった肩峰、前方に突出する烏口突起、そして上角・下角・内側縁・外側縁です。上腕骨近位部では、大結節と小結節の間の結節間溝を上腕二頭筋長頭腱が通る点が最重要で、この部位は肩の障害(長頭腱炎など)と直結します。
| 部位 | 骨指標 | おさえるポイント |
|---|---|---|
| 鎖骨 | 内側端(胸骨端)/外側端(肩峰端) | S字状・皮下で触知しやすい・上肢と体幹の連結 |
| 肩甲骨 | 肩甲棘・肩峰・烏口突起 | 体表解剖の目印。肩峰は肩鎖関節をつくる |
| 肩甲骨 | 上角・下角・内側縁・外側縁 | 肩甲骨の位置・回旋の評価基準になる |
| 上腕骨 | 上腕骨頭 | 関節窩とともに肩甲上腕関節をつくる(球関節) |
| 上腕骨 | 大結節・小結節 | 回旋筋腱板の停止部(棘上・棘下・小円→大結節/肩甲下→小結節) |
| 上腕骨 | 結節間溝 | 上腕二頭筋長頭腱が通る(国試頻出) |
肩の動きは一つの関節だけで起こるのではなく、胸鎖関節・肩鎖関節・肩甲上腕関節が協調して生じる複合運動です。加えて肩甲骨と胸郭の間の滑走(肩甲胸郭連結、機能的関節)も加わり、広い可動域と滑らかな動きが実現します。
肩甲上腕関節は球関節(多軸性)で、屈曲・伸展、外転・内転、外旋・内旋、水平屈曲・水平伸展と全方向に動けます。一方で関節窩は上腕骨頭に対して浅く、骨性の安定は乏しいのが特徴です。この不安定さを関節唇が縁を深くすることで補い、さらに回旋筋腱板が動的に安定化しています。可動域が大きい代償として脱臼が起こりやすい関節であることも押さえましょう。
| 関節 | 連結する骨 | 分類・役割 |
|---|---|---|
| 胸鎖関節 | 鎖骨 - 胸骨 | 上肢帯と体幹をつなぐ唯一の骨性関節。大きな動きを支える |
| 肩鎖関節 | 鎖骨 - 肩甲骨(肩峰) | 平面関節。肩甲骨の傾き・微調整 |
| 肩甲上腕関節 | 肩甲骨関節窩 - 上腕骨頭 | 球関節。可動域最大だが関節窩が浅く不安定 |
| 肩甲胸郭連結 | 肩甲骨 - 胸郭 | 機能的関節。肩甲骨の滑走で挙上動作を補助 |
肩甲骨は胸郭上を滑るように動き、挙上・下制・内転(内方移動)・外転(外方移動)・上方回旋・下方回旋の6方向に運動します。これらは多くの筋の協調で成立し、姿勢や上肢挙上の効率にも直結します。
| 肩甲骨の運動 | 動きの内容 | 主に働く筋 |
|---|---|---|
| 挙上 | 肩をすくめる方向へ上げる | 僧帽筋上部、肩甲挙筋、菱形筋 |
| 下制 | 肩甲骨を下げる | 僧帽筋下部、小胸筋、鎖骨下筋 |
| 内転(内方移動) | 脊柱に寄せる | 菱形筋、僧帽筋中部 |
| 外転(外方移動) | 脊柱から離し外側へ開く | 前鋸筋、小胸筋 |
| 上方回旋 | 関節窩が上を向く(上肢挙上時) | 僧帽筋上部・下部、前鋸筋 |
| 下方回旋 | 関節窩が下を向く | 菱形筋、肩甲挙筋、小胸筋 |
肩関節(肩甲上腕関節)の運動は屈曲・伸展・外転・内転・外旋・内旋が基本で、運動ごとに主動筋が異なります。国試では「この運動の主動筋はどれか」という形で頻出するため、下表はセットで暗記しましょう。
| 運動 | 参考可動域(日本整形外科学会・日本リハ医学会) | 主動筋 |
|---|---|---|
| 屈曲(前方挙上) | 0〜180° | 三角筋前部、烏口腕筋(+大胸筋鎖骨部) |
| 伸展(後方挙上) | 0〜50° | 三角筋後部、広背筋、大円筋 |
| 外転(側方挙上) | 0〜180° | 三角筋(中部)、棘上筋 |
| 内転 | 0°(水平位から0〜75°) | 大胸筋、広背筋、大円筋 |
| 外旋 | 0〜60° | 棘下筋、小円筋 |
| 内旋 | 0〜80° | 肩甲下筋、大胸筋、広背筋(+大円筋) |
| 水平屈曲/水平伸展 | 0〜135°/0〜30° | 大胸筋/三角筋後部・棘下筋 |
回旋筋腱板は棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4筋の腱が上腕骨頭を包むように付着したもので、上腕骨頭を関節窩の中心に保持(求心位に保つ)する働きを持ちます。浅い関節窩の不安定さを動的に補う、肩の要となる構造です。
| 筋 | 停止 | 主な作用 | 支配神経 |
|---|---|---|---|
| 棘上筋 | 上腕骨大結節 | 外転(特に初期) | 肩甲上神経 |
| 棘下筋 | 上腕骨大結節 | 外旋 | 肩甲上神経 |
| 小円筋 | 上腕骨大結節 | 外旋 | 腋窩神経 |
| 肩甲下筋 | 上腕骨小結節 | 内旋 | 肩甲下神経 |
上肢を外転・挙上するとき、肩甲上腕関節の外転と肩甲骨の上方回旋が一定の比率で連動します。これを肩甲上腕リズム(Codmanのリズム)といい、比率は肩甲上腕関節2:肩甲骨上方回旋1です。
| 上肢の外転角 | 肩甲上腕関節の外転 | 肩甲骨の上方回旋 |
|---|---|---|
| 0° | 0° | 0° |
| 90° | 60° | 30° |
| 180° | 120° | 60° |