顔面・頭部の筋は、大きく表情筋(表情をつくる皮筋)と咀嚼筋(食べ物をかみ砕く筋)の2グループに分けて覚えるのが最短ルートです。国家試験では作用そのものより、表情筋=顔面神経支配・咀嚼筋=三叉神経(下顎神経)支配という対比と、そこに紛れ込む例外が繰り返し問われます。ここでは10枚のスライドに沿って、各筋の作用・神経支配・引っかけポイントを表で一気に整理します。
| 読み方 | ひょうじょうきん・そしゃくきん |
|---|---|
| 分類 | 顔面・頭部の筋=表情筋(皮筋)+咀嚼筋(骨格筋)の2群 |
| 表情筋の特徴 | 一端が皮膚に停止する皮筋。関節をまたがず、皮膚を動かして表情をつくる |
| 咀嚼筋の特徴 | 下顎骨に付着し、下顎の挙上・下制・前突・側方運動を行う4筋 |
| 神経支配 | 表情筋=顔面神経(Ⅶ)/咀嚼筋=三叉神経第3枝・下顎神経(Ⅴ3) |
| 代表的な筋 | 前頭筋・皺眉筋・眼輪筋・口輪筋・大頬骨筋・笑筋・頬筋・広頸筋/側頭筋・咬筋・内側翼突筋・外側翼突筋 |
| 国試での狙われ方 | 筋と作用の組合せ、顔面神経麻痺で障害される筋、上眼瞼挙筋(動眼神経)の除外、開口に働く筋(外側翼突筋) |
顔面と頭部の筋は、はたらきで見ると2つしかありません。表情筋は皮膚に停止する「皮筋」で、眼のまわり・鼻のまわり・口のまわり・頸部に広がり、表情をつくります。咀嚼筋は下顎骨を動かして食べ物をかみ砕く筋で、側頭筋・咬筋・内側翼突筋・外側翼突筋の4つです。
最大の分かれ目は神経支配です。表情筋はすべて顔面神経、咀嚼筋はすべて三叉神経(下顎神経)が支配します。ここを間違えなければ、多くの設問は消去法で解けます。
| 項目 | 表情筋 | 咀嚼筋 |
|---|---|---|
| 別名 | 顔面表情筋・皮筋 | 下顎を動かす筋 |
| 停止 | 顔面の皮膚 | 下顎骨(筋突起・下顎枝・下顎頭など) |
| 神経支配 | 顔面神経(Ⅶ) | 三叉神経第3枝=下顎神経(Ⅴ3) |
| 主な作用 | 表情の形成、眼裂・口裂の開閉 | 下顎の挙上・下制・前突・側方 |
| 代表筋 | 前頭筋・眼輪筋・口輪筋・大頬骨筋・笑筋・頬筋・広頸筋 | 側頭筋・咬筋・内側翼突筋・外側翼突筋 |
| 障害されると | 顔面神経麻痺(閉眼不能・口角下垂) | 咀嚼障害・開口障害 |
額から鼻にかけての表情筋は、驚きと怒り・嫌悪という2種類の表情をつくるグループとして覚えると整理しやすくなります。
前頭筋は帽状腱膜から額の皮膚に向かい、収縮すると額の皮膚を上に引き上げ、額に横じわをつくります。驚いたとき・注意を向けたときに働く筋で、眉を挙上する作用もあります。
一方、皺眉筋は眉間を寄せて縦じわをつくり、鼻根筋は鼻根部に横じわをつくります。鼻筋は鼻孔を広げたり閉じたりします。この3筋がまとまって働くと、怒り・嫌悪の表情になります。
| 筋 | 作用 | つくられる表情 | 神経支配 |
|---|---|---|---|
| 前頭筋 | 額の皮膚を上に引き上げ、眉を挙げる | 額の横じわ(驚き・注意) | 顔面神経 |
| 皺眉筋 | 眉を内下方に引く | 眉間の縦じわ(怒り) | 顔面神経 |
| 鼻根筋 | 鼻根部の皮膚を上に引く | 鼻根の横じわ(嫌悪) | 顔面神経 |
| 鼻筋 | 鼻孔を広げる・狭める | 鼻翼の動き | 顔面神経 |
まぶたの開け閉めは2つの筋が担当します。眼輪筋は眼のまわりをぐるっと囲む輪状の表情筋で、収縮するとまぶたが閉じます(閉眼)。上眼瞼挙筋は上まぶたを持ち上げて目を開きます(開眼)。
ここが国試最大の引っかけどころです。眼輪筋は表情筋なので顔面神経支配ですが、上眼瞼挙筋は表情筋ではなく動眼神経(Ⅲ)支配です。したがって、
「目が閉じられない=顔面神経」「目が開かない=動眼神経」とセットで暗記してください。
| 筋 | 作用 | 神経支配 | 麻痺したときの所見 |
|---|---|---|---|
| 眼輪筋 | 眼裂を閉じる(閉眼) | 顔面神経(Ⅶ) | 閉眼不能・兎眼・流涙 |
| 上眼瞼挙筋 | 上眼瞼を挙上(開眼) | 動眼神経(Ⅲ) | 眼瞼下垂 |
| 前頭筋 | 眉を挙上し間接的に開瞼を助ける | 顔面神経(Ⅶ) | 額のしわが寄らない |
口のまわりには表情筋が最も密に集まっています。中心にあるのが口輪筋で、口裂をぐるっと囲み、収縮すると口をすぼめます。口笛・発音(あ・う・ぷ など唇音)・飲食時の口唇閉鎖に不可欠で、麻痺すると食物や水がこぼれます。
そこへ放射状に、口角を上げる筋と下げる筋が付着します。上げる側が笑顔の筋、下げる側が悲しみ・不快の表情をつくります。
これらもすべて顔面神経支配です。とくに頬筋は口腔の壁をつくり咀嚼を助けますが、咀嚼筋ではなく表情筋である点が引っかけとして頻出します。
| 筋 | 作用 | 表情・場面 |
|---|---|---|
| 口輪筋 | 口をすぼめる・口唇を閉じる | 口笛・発音・飲食 |
| 大頬骨筋 | 口角を上外方へ引く | 笑顔 |
| 小頬骨筋 | 上唇を上げる・前に出す | 笑顔・上唇の挙上 |
| 口角挙筋 | 口角を上げる | 微笑 |
| 笑筋 | 口角を真横に引く | 作り笑い・えくぼ |
| 頬筋 | 頬を歯列に圧縮する | 吹く・咀嚼補助(ラッパ筋) |
| 下唇下制筋 | 下唇を下方に引く | 不快・驚き |
| 口角下制筋 | 口角を下方に引く | 悲しみ・不満 |
表情筋は顔だけでなく頸部にも及びます。オトガイ筋はあご先の皮膚を上に引き上げて下口唇を突き出し、いわゆる「梅干しじわ」をつくります。広頸筋は頸部の皮下に薄く広がる皮筋で、口角を下方に引き、頸部の皮膚に縦のすじを浮き立たせます。
広頸筋は頸にあっても顔面神経(頸枝)支配の表情筋です。「頸の筋だから頸神経叢」と考えると誤答になるので注意してください。
| 筋 | 部位 | 作用 | 神経支配 |
|---|---|---|---|
| オトガイ筋 | あご先(オトガイ部) | オトガイの皮膚を挙上し下口唇を前突 | 顔面神経 |
| 広頸筋 | 頸部前面の皮下 | 口角を下方に引く・頸部皮膚を緊張させる | 顔面神経(頸枝) |
咀嚼筋は側頭筋・咬筋・内側翼突筋・外側翼突筋の4つだけです。すべて三叉神経第3枝(下顎神経)が支配します。
側頭筋はこめかみに扇状に広がり、下顎骨の筋突起に停止して下顎を挙上(歯をくいしばる)し、後部線維は下顎を後方に引きます。咬筋は頬骨弓から下顎角(咬筋粗面)に至る強力な筋で、咀嚼力の中心です。
深部の翼突筋2つが下顎の細かい動きを担当します。内側翼突筋は咬筋と挟み込むように働いて下顎を挙上し、外側翼突筋だけが下顎頭を前方に引いて下顎を前突・下制(開口)させます。左右交互に働くと側方(すりつぶし)運動になります。
| 筋 | 起始 | 停止 | 主な作用 | 神経支配 |
|---|---|---|---|---|
| 側頭筋 | 側頭窩(側頭骨など) | 下顎骨の筋突起 | 下顎の挙上(閉口)・後方移動 | 下顎神経(Ⅴ3) |
| 咬筋 | 頬骨弓 | 下顎角の咬筋粗面 | 下顎の挙上(閉口)・咀嚼力の中心 | 下顎神経(Ⅴ3) |
| 内側翼突筋 | 翼状突起翼突窩 | 下顎角内面(翼突筋粗面) | 下顎の挙上・前突・側方 | 下顎神経(Ⅴ3) |
| 外側翼突筋 | 蝶形骨大翼・翼状突起外側板 | 下顎頸(翼突筋窩)・関節円板 | 下顎の前突・下制(開口)・側方 | 下顎神経(Ⅴ3) |