頸腕障害とは、頸部・肩・上肢に痛みやしびれをきたす多彩な疾患をまとめた総称です。頸椎椎間板ヘルニア、頸部脊柱管狭窄症、頸肩腕症候群、肩関節周囲炎、手根管症候群、胸郭出口症候群などが含まれ、原因も部位もさまざまですが「首から腕へ症状が広がる」という共通の特徴をもちます。
リハビリテーションでは、姿勢・関節可動域・筋力・神経症状の4つを評価したうえで、温熱療法・牽引療法・運動療法・装具療法を組み合わせます。とくに牽引は負荷量(kg)と施行時間の設定を誤ると症状を悪化させるため、国試でも狙われる重要ポイントです。
| 読み方 | けいわんしょうがい |
|---|---|
| 定義 | 頸部・肩・上肢に痛みやしびれなどの症状を生じる多彩な疾患の総称 |
| 含まれる疾患 | 頸椎椎間板ヘルニア、頸部脊柱管狭窄症、頸肩腕症候群(筋・筋膜性疼痛)、肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)、手根管症候群、胸郭出口症候群 など |
| 主症状 | 頸腕痛(首から肩・上肢に広がる痛み)、しびれ、感覚障害、筋力低下 |
| 主な誘因 | 円背・頭部前方位・顎を突き出した不良姿勢、長時間のデスクワークや反復動作 |
| 評価項目 | 姿勢/頸椎・肩関節・肩甲骨のROM/頸部・肩甲帯・上肢の筋力/神経症状(麻痺・感覚・深部反射・C5〜T1の支配領域) |
| 主な治療 | 温熱療法(ホットパック・温タオル)、牽引療法、運動療法(姿勢改善・筋力強化・上肢訓練・歩行訓練)、頸椎装具(フィラデルフィアカラー等) |
| 禁忌・注意点 | 牽引の負荷量が強すぎる・時間が長すぎると症状増悪。麻痺や筋力低下の進行例は医師へ紹介 |
頸腕障害は単一の疾患名ではなく、頸・肩・上肢に症状が出るさまざまな疾患をまとめた呼び名です。原因も病態も異なりますが、「首から腕にかけて症状が広がる」という共通点でグループ化されています。
国試では「頸腕障害に含まれる疾患はどれか」という形で問われるため、代表疾患を列挙できるようにしておきましょう。
| 疾患 | 主な病態 | 特徴的な症状 |
|---|---|---|
| 頸椎椎間板ヘルニア | 椎間板の突出による神経根・脊髄圧迫 | 頸部痛+一側上肢の放散痛・しびれ |
| 頸部脊柱管狭窄症 | 脊柱管の狭小化による脊髄・神経根圧迫 | 両側性のしびれ、巧緻運動障害、歩行障害 |
| 頸肩腕症候群 | 筋・筋膜性疼痛(明確な器質的異常に乏しい) | 頸肩のこり・重だるさ、圧痛点 |
| 肩関節周囲炎(四十肩・五十肩) | 肩関節周囲軟部組織の炎症・拘縮 | 夜間痛、肩の可動域制限 |
| 手根管症候群 | 手根管内での正中神経絞扼 | 母指〜環指橈側のしびれ、母指球萎縮 |
| 胸郭出口症候群 | 腕神経叢・鎖骨下動静脈の絞扼 | 挙上位での上肢のしびれ・だるさ |
主症状は頸腕痛、すなわち首から肩・上肢にかけて広がる痛みです。加えて、しびれ・感覚障害・筋力低下といった神経症状を伴うことがある点が重要で、これらがあれば単なる筋肉のこりではなく神経の関与を疑います。
神経症状は早期発見が鍵で、進行性の麻痺や膀胱直腸障害があれば緊急性が高く、速やかに医師へ紹介します。
評価の第一歩は姿勢のチェックです。不良姿勢は頸椎・肩甲帯への機械的ストレスを増やし、頸腕障害の大きなリスクとなります。
| 観察項目 | 良い姿勢 | 悪い姿勢(リスク) |
|---|---|---|
| 脊柱 | 背筋が伸び、生理的弯曲が保たれる | 円背(猫背)=胸椎後弯の増強 |
| 頭部の位置 | 頭が体幹の上に乗る(耳垂が肩峰の上) | 頭部前方位=頭が前方に偏位 |
| 下顎 | 顎が引けている | 顎を突き出した姿勢 |
| 結果 | 頸部への負担が少なく動きやすい | 頸部伸筋・肩甲帯筋の過緊張、頸椎への圧縮ストレス増大 |
次に頸椎・肩関節・肩甲骨の可動域と、頸部・肩甲帯・上肢の筋力を評価します。頸腕障害では肩甲骨の動きが制限され、代償的に頸部や肩関節に負担がかかっていることが少なくありません。
| 部位 | 確認する運動方向 | 主に評価する筋 |
|---|---|---|
| 頸椎 | 屈曲・伸展・側屈・回旋 | 胸鎖乳突筋、斜角筋、頸部伸筋群 |
| 肩関節 | 屈曲・外転・外旋・内旋 | 三角筋、棘上筋、棘下筋、肩甲下筋 |
| 肩甲骨 | 内転(寄せる)・上方回旋・下方回旋・前傾/後傾 | 僧帽筋(上部・中部・下部)、前鋸筋、菱形筋 |
| 上肢 | 肩外転・外旋、肘屈曲、手関節運動 | 三角筋、上腕二頭筋、手関節伸筋群 |
麻痺や感覚障害の有無は治療方針を決める最重要情報です。運動療法を進めてよいのか、医師の診察を優先すべきかがここで分かれます。
| 高位 | 代表的な筋(筋力低下) | 感覚障害の部位 | 腱反射 |
|---|---|---|---|
| C5 | 三角筋・上腕二頭筋 | 上腕外側 | 上腕二頭筋反射↓ |
| C6 | 上腕二頭筋・腕橈骨筋 | 前腕橈側〜母指 | 腕橈骨筋反射↓ |
| C7 | 上腕三頭筋・手関節屈筋 | 中指 | 上腕三頭筋反射↓ |
| C8 | 手指屈筋 | 前腕尺側〜小指 | (明瞭な反射なし) |
| T1 | 手内在筋(骨間筋) | 上腕内側 | (明瞭な反射なし) |
治療は評価結果に基づいて組み立てます。急性の強い痛みでは安静と物理療法が中心となり、痛みが落ち着くにつれて運動療法へ移行します。
| 治療法 | 目的 | 注意点 |
|---|---|---|
| 温熱療法(ホットパック・温タオル) | 疼痛緩和・筋緊張の軽減・血流改善 | 急性炎症期や感覚障害部位は熱傷に注意 |
| 牽引療法 | 椎間の除圧、頸部筋の弛緩 | 負荷量kgと施行時間を個別に設定。強すぎ・長すぎは悪化の原因 |
| 運動療法 | 姿勢改善・筋力強化・可動域拡大 | 疼痛やしびれが増強する範囲では行わない |
| 装具療法(頸椎装具) | 頸部の支持・局所安静 | 長期装着は筋萎縮・拘縮のリスク |