このページは「なぜ痛むのか」という東洋医学の基本原理(不通則痛・不栄則痛)と、痛みの性質から病証を読み解く手順を扱います(外傷や疼痛の分類は別ページの担当)。痛みは大きく、気血が通らないから痛む「不通則痛」と、気血が足りず養えないから痛む「不栄則痛」の2つに分かれます。痛みの質(張る・刺す・重い・冷える・熱い・鈍い)を聞き取れば、気滞・瘀血・湿邪・寒邪・熱証・虚証のどれかが見えてきます。
| 読み方 | ふつうそくつう・ふえいそくつう |
|---|---|
| 定義 | 痛みの発生機序を『通じざれば則ち痛む(不通則痛)』と『栄えざれば則ち痛む(不栄則痛)』の2原理でとらえる東洋医学の基本的な考え方 |
| 不通則痛(実の痛み) | 気血の流れが経絡でブロックされて起こる痛み。誘因はストレス・冷え・緊張・食べすぎなど |
| 不栄則痛(虚の痛み) | 気血不足・精不足で筋肉や関節が栄養されず起こる痛み。誘因は疲労・睡眠不足・食事の偏り・加齢など |
| 痛みの性質と病証 | 張る痛み→気滞/刺す痛み→瘀血/重い痛み→湿邪/冷える痛み→寒邪/熱をもつ痛み→熱証/鈍く続く痛み→虚証 |
| 主な疼痛の種類 | 脹痛・竄痛・遊走痛・刺痛・固定痛・重痛・酸痛・掣痛・灼痛・冷痛・隠痛 |
| 痺証 | 風・寒・湿・熱の邪気が経絡と関節をおそい、痛み・しびれ・重だるさ・運動制限を起こす病証 |
| 部位からの推論 | 痛む場所の経筋・経絡の走行をたどり、その経絡上のツボ(離れた部位も含む)を治療部位の候補にする |
| 国試での狙われ方 | 痛みの性質と病因(気滞・瘀血・湿邪・寒邪)の組合せ、不栄則痛の特徴(休むと軽い/疲れると悪化)、痺証を構成する邪気の名称 |
東洋医学では痛みの成り立ちを大きく次の2つに整理します。ここが弁証の出発点であり、実(詰まり)か虚(不足)かを最初に振り分ける作業になります。
原因が違えばケアも変わります。滞りなら通す、不足なら補うという方針の分岐が、そのまま治法につながります。
| 原理 | メカニズム | 主な誘因 | 痛みのイメージ |
|---|---|---|---|
| 不通則痛 | 気血の流れ(経絡)が滞りブロックされる | ストレス・冷え・緊張・食べすぎ | 通らないと痛む(実の痛み) |
| 不栄則痛 | 気血不足で筋肉や関節が栄養不足になる | 疲労・睡眠不足・食事の偏り・加齢 | 養われないと痛む(虚の痛み) |
問診で「どんな痛み方ですか」を聞き取ることが、そのまま病因の推定になります。スライドでは代表的な4つの対応が示されています。
特徴を見れば原因のヒントになる、というのが弁証論治の入口です。
| 痛みの性質 | 診断のヒント(病証) |
|---|---|
| 張る痛み | 気滞 |
| 刺す痛み | 瘀血 |
| 重い痛み | 湿邪 |
| 冷える痛み | 寒邪 |
| 熱をもつ激しい痛み | 熱証 |
| 鈍く続き場所がはっきりしない痛み | 虚証 |
痛みの名称は国試で頻出です。動く痛み・張る痛みは気滞や風邪(ふうじゃ)、一点にとどまる痛みは瘀血・寒邪・湿邪が背景になります。
ポイントは「場所が変わるか、一点にとどまるか」。移動性なら風邪・気滞、固定性なら瘀血・寒邪・湿邪と覚えます。
| 名称 | 痛みの特徴 | 背景となる病証 |
|---|---|---|
| 脹痛 | 張って膨らむような痛み | 気滞 |
| 竄痛 | 走るように移動する痛み | 気滞・風邪 |
| 遊走痛 | あちこち移動する痛み | 気滞・風邪 |
| 刺痛 | 刺すような鋭い痛み | 瘀血 |
| 固定痛 | 動いても動かしても痛みがその場にある | 瘀血(寒邪・湿邪でも出る) |
痛みの質が変われば原因も変わります。だるく重い系は湿邪と気血不足、引きつるような急な痛みは経脈の異常、そして熱・寒・虚の三区分は寒熱虚実の判断に直結します。
| 名称 | 痛みの特徴 | 対応する病証 |
|---|---|---|
| 重痛 | 重くだるくて動きたくない痛み | 湿邪 |
| 酸痛 | じわじわ痛む、だるくて重い痛み | 気血不足 |
| 掣痛 | 引っ張られるように急に起こる痛み | 経脈の異常 |
| 灼痛 | 熱をもつ激しい痛み(熱感・赤み・腫れ) | 熱証 |
| 冷痛 | 冷えると悪化し、温めると楽になる痛み | 寒証 |
| 隠痛 | 場所がはっきりせず鈍く続く痛み | 虚証 |
痺証は、風・寒・湿・熱の邪気が経絡と関節をおそって起こる病証です。症状として痛み・しびれ・重だるさ・運動制限が現れます。関節症状を東洋医学的に説明する代表的な枠組みで、国試では「痺証を構成する邪気」がそのまま問われます。
一方、不栄則痛は「体に必要なものが足りないと痛みは続く」タイプです。背景には気血不足(全身に栄養やエネルギーが届かない)と精不足(体を支える力や回復する力が足りない)があり、臨床像は次の3点が特徴です。
この「休むと軽い/疲れると悪化」は虚証を見抜く鑑別のカギで、実証(不通則痛)との引っかけによく使われます。
| 病証 | 邪気・背景 | 主な症状 |
|---|---|---|
| 痺証 | 風・寒・湿・熱の邪気が経絡と関節をおそう | 痛み・しびれ・重だるさ・運動制限 |
| 不栄則痛(気血不足) | 全身に栄養やエネルギーが届かない | 慢性的で重だるい痛み |
| 不栄則痛(精不足) | 体を支える力や回復する力が足りない | 疲れると悪化し、休むと軽くなる |
痛みの質で病証をつかんだら、次は部位です。経筋に沿って出る痛みは、疼痛・ひきつれ・しびれ・筋緊張・運動障害として経筋の走行に沿って現れるのが特徴です。
スライドに挙げられている経筋・経絡は次のとおりです(勝手に足さず、この一覧どおりに覚えます)。
治療部位を選ぶヒントは3つ。痛む部位から経絡の走行をたどる/関連する経絡上のツボを候補にする/離れた部位のツボも有効。局所だけを診ないのが東洋医学的アプローチです。
| 部位 | 該当する経筋・経絡 | 痛みの出る場所 |
|---|---|---|
| 上肢の経筋 | 手の太陰肺経/手の陽明大腸経/手の少陽三焦経/手の太陽小腸経/手の厥陰心包経 | 手・腕・肩・首の痛み |
| 下肢の経筋 | 足の太陰脾経/足の陽明胃経/足の少陽胆経/足の太陽膀胱経/足の少陰腎経/足の厥陰肝経 | 足・腰・膝・股関節・背中の痛み |