このページは頸肩腕痛の全体像(なぜ痛むのか=不通則痛と不栄則痛)と、上肢痛(肩・肘・手指)の弁証と配穴を担当します。頸部外傷や神経圧迫そのものの各論は別ページに譲り、ここでは外邪・血瘀・痰湿・気血両虚という4つの病機と、行痺・痛痺・着痺・熱痺の四痺、そして局所穴・循経穴・弁証配穴の組み立て方を通しで押さえます。
| 読み方 | けいけんわんつう・じょうしつう |
|---|---|
| 定義 | 頸・肩・腕から手指にかけて生じる痛み・しびれ・筋力低下の総称。関節・筋・腱・靭帯・神経が原因となる |
| 東洋医学の病機 | 不通則痛(外邪・血瘀・痰湿などで経絡の気血が滞る)と不栄則痛(気血不足で上肢を滋養できない)の2本立て |
| 主な証(弁証) | 外感病(風寒湿・風熱湿=行痺・痛痺・着痺・熱痺)/血瘀/痰湿/気血両虚/傷筋(使いすぎ)/労損・久病 |
| 治法 | 祛風・散寒・除湿・清熱・活血(活血化瘀)・化痰(化痰除湿)・補気補血(補気養血) |
| 配穴の考え方 | 局所穴(痛む部位に直接)+循経穴(経絡の流れを整える)+弁証配穴(疏通経絡・活血化瘀・補気養血) |
| スライド記載の経穴 | 肩髃・曲池・手三里・合谷・外関 |
| 生活指導 | エアコンの直風を避ける、首肩を冷やさない、保温、暴飲暴食・睡眠不足を避ける、姿勢とデスクワーク環境の見直し、腹八分目、脂っこいもの・辛いもの・酒を控える |
| 国試での狙われ方 | 四痺(行痺=遊走性/痛痺=冷えて固定痛/着痺=重だるい/熱痺=熱感・発赤・腫脹)と治法の対応、血瘀=刺すような固定痛・夜間痛、痰湿=飲食不節・脾胃機能低下、末梢神経障害(下垂手・猿手・鷲手)の鑑別 |
東洋医学では頸肩腕痛・上肢痛を大きく2つの機序で説明します。スライドの中心テーマがこの2本立てです。
つまり「詰まって痛い」のか「足りなくて痛い」のかを見分けることが、治法(瀉すか補うか)を決める第一歩になります。
| 病機 | 原因 | 痛みの性質 | 治法の方向 |
|---|---|---|---|
| 不通則痛(外邪) | 風・寒・湿・熱の感受 | 移動する/冷えて悪化/重だるい/熱感 | 祛風・散寒・除湿・清熱 |
| 不通則痛(血瘀) | 外傷・打撲・慢性的な気血停滞 | 刺すような固定痛・夜間痛 | 活血化瘀 |
| 不通則痛(痰湿) | 飲食不節・脾胃機能低下 | 重だるい痛み・むくみ感 | 化痰・除湿 |
| 不栄則痛(気血両虚) | 過労・慢性疾患・労損・久病 | 慢性的な鈍い痛みと疲労感 | 補気補血(補気養血) |
外感病では風寒湿・風熱湿が経絡に侵入し、どの邪が主かによって痛み方が変わります。国試で最も問われるのがこの四痺の対応です。
| 痺証 | 主な邪 | 痛みの特徴 | 治法 |
|---|---|---|---|
| 行痺 | 風 | 遊走性の痛み。痛みがあちこちを移動する | 祛風(風を取り除く) |
| 痛痺 | 寒 | 冷えを伴う強い固定痛。冷えると悪化し鋭く強く痛む | 散寒(寒さを取り除く) |
| 着痺 | 湿 | 重だるく固定した痛み。動かすと重く痛む | 除湿(湿を取り除く) |
| 熱痺 | 熱 | 熱感・発赤・腫脹を伴う痛み。赤く腫れてズキズキ痛む | 清熱(熱を取り除く) |
上肢痛の原因は関節・筋・腱・靭帯・神経と幅広く、痛み・しびれ・筋力低下に注意します。問診(痛む場所・受傷機転)、誘発テスト、神経学的検査で原因を特定します。
| 疾患・部位 | ポイント | 検査・所見 |
|---|---|---|
| 野球肘 | 投球のくり返し・成長期に多い | フォームと投球量の見直し。オーバーユースに注意 |
| テニス肘(外側上顆炎) | 手首を反らす動作の反復負荷で肘の外側に炎症 | トムゼンテスト(手の甲を下に向けタオル等を持たせ抵抗を加え痛みを確認) |
| ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎) | 親指側の手首が痛い | フィンケルシュタインテスト(親指を握って小指側に倒すと親指側の手首が痛む=陽性) |
| ばね指 | 指が引っかかる・カクッと跳ねる(弾発現象) | 引っかかり・弾発現象の確認 |
| 橈骨神経麻痺 | 下垂手 | 手関節背屈・指の伸展ができない |
| 正中神経麻痺 | 猿手 | 母指の対立ができない(母指球の筋力低下) |
| 尺骨神経麻痺 | 鷲手 | 環指・小指のつめ状変形(骨間筋の麻痺) |
上肢痛の鍼灸は、病態に応じて局所穴・循経穴・弁証配穴を組み合わせます。
スライドに図示されている経穴は次の5つです(記載どおり)。
| 経穴 | スライド上の位置 | 運用 |
|---|---|---|
| 肩髃 | 肩関節部 | 肩の局所穴 |
| 曲池 | 肘外側 | 肘の局所穴・循経穴 |
| 手三里 | 前腕橈側(曲池の下方) | 前腕の循経穴 |
| 外関 | 前腕背側 | 循経穴 |
| 合谷 | 手背・第1〜2中手骨間 | 循経穴・遠隔取穴 |
東洋医学的生活指導では風寒を避け、身体を養い、気血の巡りを保つことが柱です。とくに行痺・痛痺は冷えで悪化しやすいため保温が重要になります。
最終的には、西洋医学(局所の治療で痛みや炎症を改善)+東洋医学(体全体のバランスを整える)+生活指導・フォーム改善・再発予防を組み合わせた総合的アプローチを目指します。