切断部位が変わると、残る関節・支持部位・使う義肢部品・出やすい異常歩行がすべて変わります。下肢では下腿切断が最も多く、膝関節が残るため歩行予後が良いのに対し、上肢では前腕切断が最も多く、肘と前腕回旋を活かせるのが最大の特徴です。ここでは下腿・大腿・上肢・小児それぞれの特徴を、ソケットや異常歩行のポイントとあわせて一気に整理します。
| 読み方 | かくせつだんのとくちょう |
|---|---|
| 下肢で最多の切断 | 下腿切断(膝関節が残り歩行しやすい) |
| 上肢で最多の切断 | 前腕切断(肘・前腕回旋が使える) |
| 代表的ソケット | 下腿=PTBソケット(膝蓋腱で支持)/大腿=吸着四辺形ソケット(坐骨部で体重支持) |
| 断端の原則 | 断端は長いほど有利(歩行負担が少なく、膝コントロール良好、ソケット適合が安定) |
| 義肢作製の流れ | 断端の浮腫・筋萎縮が落ち着くまで仮義足で訓練し、その後に本義足を作製 |
| 主な異常歩行 | 体幹側方傾斜・外転歩行・ぶんまわし(回旋)歩行・初期接地での回旋・足打ち/膝突き上げ |
| 国試での狙われ方 | 最多部位、PTB=膝蓋腱支持、大腿=坐骨支持、仮義足→本義足の順、異常歩行とアライメント不良の関係 |
下肢切断のなかで最も多いのが下腿切断です。最大の利点は膝関節が温存されること。膝の屈伸・支持機能が残るため、大腿切断に比べて歩行の獲得が容易で、エネルギー消費も少なく済みます。
切断高位を決めるとき、機能面では断端はできるだけ長く残すほど有利です。断端が長いほどレバーアームが長くなり、義足を振り出す力が伝わりやすく、ソケット内の圧も分散されます。
| 項目 | 断端が長い | 断端が短い |
|---|---|---|
| 歩行時の負担 | 少ない(エネルギー消費が小さい) | 大きい(疲労しやすい) |
| 膝・義足のコントロール | 良好(テコが効く) | 不良(振り出しにくい) |
| ソケット適合 | 接触面積が広く安定 | ずれやすく不安定 |
| 断端痛・皮膚トラブル | 起こりにくい | 局所に圧が集中し起こりやすい |
下腿義足で代表的なのがPTBソケット(膝蓋腱支持式ソケット/Patellar Tendon Bearing)です。名前のとおり膝蓋腱で主に体重を支持し、断端全体を広い面積で包み込むことで荷重を分散します。
義足歩行がうまくいかない大きな原因がアライメント不良(ソケットや足部の角度・位置のズレ)です。アライメントが適切なら真っ直ぐスムーズに歩けますが、ズレがあるとぐらつく・つまずく・疲れやすいといった問題が生じます。原因の多くは仮合わせ(試歩行)の段階で修正できます。
異常歩行は「歩容から原因を考える」のが基本です。代表的なものを整理します。
| 異常歩行 | みられる現象 | 主な原因の考え方 |
|---|---|---|
| 体幹の側方傾斜 | 立脚期に体幹が義足側へ傾く | ソケット適合不良、義足が短い、外転筋力低下 |
| 外転歩行 | 義足を外側へ大きく振り出す | 義足が長い、内転が制限されるソケット、股関節外転拘縮 |
| ぶんまわし歩行(回旋歩行) | 義足を外側へ弧を描いて振り出す | 義足が長い、膝継手が屈曲しにくい、膝屈曲不足 |
| 初期接地での回旋 | 踵接地時に足部が外側/内側へ回る | 足部(足継手)の設定不良、ソケットの適合不良 |
| 足打ち・膝突き上げ | 踵接地後に足底が急に床を打つ、膝が突き上がる | 足部のクッション(ヒール)が硬すぎる/柔らかすぎる |
大腿切断では断端の浮腫と筋萎縮が起こりやすく、断端の形状が数か月かけて変化します。そのためいきなり本義足を作らず、まず仮義足で十分に訓練し、断端が成熟してから本義足を作製するのが原則です。
また、大腿義足は部品の組み合わせが機能を左右します。
| 構成部品 | 代表例 | ねらい・特徴 |
|---|---|---|
| ソケット | 吸着式四辺形ソケット | 主に坐骨部(坐骨結節)で体重を支持する |
| 膝継手 | 固定式・単軸・多軸・空気/油圧制御 | 立脚期の安定性と、遊脚期のスムーズな振り出しを両立させる |
| 足部 | SACH足部、単軸足部、エネルギー蓄積型 | 活動性に応じて選択。SACH足部は構造が単純で軽く耐久性が高い |
上肢切断では前腕切断が最も多く、肘関節の屈伸と前腕の回内・回外が残るため、手先具(ターミナルデバイス)を目的の位置へ運びやすく、両手動作がしやすいのが利点です。義手の操作は手先具の開閉が中心になります。
上腕義手では、8の字ハーネス+コントロールケーブルで肩の動きを操作力に変換します。
小児切断では、早期からの義肢装着が重要です。早期に使い始めることで機能の発達を促し、変形・拘縮を予防できます。ただし成長に伴い断端も体格も変わるため、成長に合わせた調整・交換が必須で、訓練は遊びを通じて楽しく行うのが基本です。