物質の移動(膜輸送)とは、細胞膜や生体膜をはさんで物質が行き来するしくみのことです。国家試験では拡散・浸透・能動輸送・膜動輸送(サイトーシス)・濾過の5つが問われ、ATP(エネルギー)が必要なのは能動輸送と膜動輸送だけという区別が最大の得点源になります。「広がる=拡散、水だけ=浸透、逆走=能動輸送、包む=膜動輸送、ふるい=濾過」とゴロで覚えましょう。
| 読み方 | ぶっしつのいどう(拡散=かくさん/浸透=しんとう/能動輸送=のうどうゆそう/膜動輸送=まくどうゆそう/濾過=ろか) |
|---|---|
| 定義 | 細胞膜(半透膜)をはさんで物質や水が移動するしくみの総称 |
| 5つのしくみ | ①拡散 ②浸透 ③能動輸送 ④膜動輸送(サイトーシス) ⑤濾過 |
| エネルギー(ATP) | 不要=拡散・浸透・濾過/必要=能動輸送・膜動輸送 |
| 移動の向き | 拡散は高濃度→低濃度、浸透は水が溶質濃度の低い方→高い方、能動輸送は濃度勾配に逆らう(低濃度→高濃度) |
| 代表例 | 拡散=酸素・二酸化炭素/浸透=浸透圧の発生/能動輸送=ナトリウムポンプ/膜動輸送=食作用・飲作用・開口放出/濾過=腎糸球体 |
| 国試での狙われ方 | 「ATPを必要とするのはどれか」「濃度勾配に逆らうのはどれか」「腎糸球体でみられるのはどれか」の形で頻出 |
細胞膜をはさんだ物質の移動は、大きく5つに整理されます。まずは移動の向きとエネルギーの要否を表で押さえてください。ここが国試の直球問題になります。
| しくみ | 英語 | 移動の内容 | ATP | キーワード |
|---|---|---|---|---|
| ①拡散 | Diffusion | 濃度の高い方から低い方へ自然に広がる | 不要 | 広がる! |
| ②浸透 | Osmosis | 水が溶質濃度の低い方から高い方へ移動 | 不要 | 水だけ! |
| ③能動輸送 | Active Transport | 濃度の低い方から高い方へ逆らって移動 | 必要 | 逆走! |
| ④膜動輸送 | サイトーシス | 細胞膜が包み込んで取り込み・放出 | 必要 | 包む! |
| ⑤濾過 | Filtration | 圧力によって物質を押し出して通過させる | 不要 | ふるい! |
拡散は、物質が濃度の高い方から低い方へ自然に広がる現象です。濃度勾配に従うためエネルギー(ATP)は不要で、最終的に濃度が均一になります。
浸透は半透膜を介した「水」の移動です。動くのは溶質ではなく水だけという点が最大の引っかけポイント。水は溶質濃度の低い方から高い方へ引き寄せられ、このとき生じる圧力を浸透圧といいます。
能動輸送はATP(エネルギー)を使って濃度勾配に逆らう輸送です。自然には進まない「低濃度→高濃度」への移動を、ポンプがエネルギーを消費して行います。代表例はナトリウムポンプ(Na⁺-K⁺ポンプ)です。
一発暗記:能動輸送=ATPを使って濃度勾配に逆らう!
膜動輸送は細胞膜がくぼんだりふくらんだりして物質を運ぶしくみです。小胞(袋)を使うため、大きな物質も運べます。エンドサイトーシス(取り込み)とエキソサイトーシス(放出)に分かれます。
| 種類 | 別名 | はたらき | 例 |
|---|---|---|---|
| ①食作用 | エンドサイトーシス | 固体の物質を取り込む | 細菌、食べ物 |
| ②飲作用 | エンドサイトーシス | 液体の物質を取り込む | 水分、栄養素 |
| ③開口放出 | エキソサイトーシス | 物質を細胞外へ放出する | ホルモン、老廃物 |
濾過は圧力(血圧)によって物質を押し出すしくみで、体の中のふるい分けシステムです。腎糸球体でみられ、糸球体は血液を濾過するフィルターの役割をもちます。
大きさによるふるい分けは次のとおりです。
| 物質 | 通過するか | 具体例 |
|---|---|---|
| 水(H₂O) | 通過する | 水 |
| 小さな分子 | 通過する | 尿素・電解質など |
| 中くらいの分子 | 通過する | ブドウ糖・アミノ酸など |
| 大きな分子・血球 | 通過しない | タンパク質・赤血球など |