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脊髄損傷の機能障害(運動麻痺・感覚障害・自律神経障害と合併症)せきずいそんしょう(きのうしょうがい)

脊髄損傷では損傷高位より下位に運動麻痺・感覚障害が現れ、さらに反射・自律神経・膀胱直腸・呼吸・消化器など全身に多彩な機能障害が波及します。国試では頸髄損傷=四肢麻痺/胸髄損傷=対麻痺急性期は脊髄ショックで弛緩性麻痺・反射低下、その後痙性麻痺・反射亢進へ移行という時間経過と、自律神経過反射・呼吸障害・褥瘡・深部静脈血栓といった命に関わる合併症が繰り返し狙われます。ここでは10テーマを1枚ずつ順に整理します。

脊髄損傷(機能障害)|脊髄損傷(機能障害) 1
読み方せきずいそんしょう(きのうしょうがい)
主な原因・病態交通外傷・転落・スポーツ外傷などによる脊髄の圧挫・断裂。損傷高位より下位の伝導路が遮断される
障害の特徴損傷高位より下の運動麻痺・感覚障害・反射障害・自律神経障害。頸髄=四肢麻痺、胸髄=対麻痺
時間経過急性期は脊髄ショックで弛緩性麻痺・反射低下 → 回復期以降は痙性麻痺・深部反射/屈曲反射の亢進
急性期の対応呼吸管理(C3以上は自発呼吸著減)、ストレス潰瘍・消化管出血、褥瘡・DVT予防、良肢位保持と体位変換
回復期の訓練早期からのROM訓練(異所性骨化・拘縮予防)、残存筋の筋力増強、車椅子・移乗・ADL訓練、装具療法
主な合併症起立性低血圧、自律神経過反射、呼吸器合併症(肺炎・無気肺)、褥瘡、DVT、骨萎縮、脊髄空洞症
禁忌・注意点自律神経過反射は収縮期血圧200mmHg超もあり緊急対応が必要。膀胱充満・便塊・褥瘡など誘因の除去が最優先
国試での狙われ方損傷高位と麻痺型の対応、脊髄ショック期の反射所見、自律神経過反射の誘因と症状、C3以上の呼吸障害

① 運動麻痺 ― 損傷高位より下位に出現

脊髄損傷では損傷部位より下位に運動麻痺が生じます。麻痺の範囲は「どこで損傷したか」で決まるため、脊髄の高位区分と麻痺型の対応は必ず暗記します。

経過としては、初期は弛緩性麻痺(筋がゆるむ・力が入らない・反射が低下〜消失)で、時間が経つと痙性麻痺(筋がこわばる・つっぱる・反射亢進)へ移行します。

損傷高位麻痺の型特徴
頸髄 C1〜C7四肢麻痺上下肢すべてに麻痺。高位ほど呼吸障害・自律神経障害が重い
胸髄 T1〜T12対麻痺下肢に麻痺、上肢は保たれる
腰髄 L1〜L5対麻痺(下位)下肢の部分麻痺、膀胱直腸障害を伴う
仙髄 S1〜S5・馬尾膀胱直腸障害中心弛緩性麻痺・排尿困難をきたしやすい
①運動麻痺:頸髄損傷=四肢麻痺、胸髄損傷=対麻痺。初期は弛緩、のち痙性へ
①運動麻痺:頸髄損傷=四肢麻痺、胸髄損傷=対麻痺。初期は弛緩、のち痙性へ

② 感覚障害と ③ 反射障害

感覚障害も損傷高位より下位に出現し、触覚・痛覚・温度覚・位置覚(深部感覚)などが障害されます。程度は鈍麻から脱失までさまざまで、損傷部位の近くでは異常感覚(しびれ・灼熱感)が出ることもあります。

反射障害は時期による変化が最大のポイントです。急性期は脊髄ショックにより深部反射が低下〜消失し、麻痺も弛緩性となります。脊髄ショックから回復すると、深部反射や屈曲反射が亢進し、痙性麻痺の像となります。「急性期は静か、回復すると過剰に反応」と覚えます。

時期麻痺の性状深部腱反射筋緊張
急性期(脊髄ショック期)弛緩性麻痺低下〜消失低下
回復後(慢性期)痙性麻痺亢進亢進(痙縮)
③反射障害:脊髄ショック期は反射低下、回復後は深部反射・屈曲反射が亢進
③反射障害:脊髄ショック期は反射低下、回復後は深部反射・屈曲反射が亢進

④ 痙縮・ROM障害 ― 拘縮を作らせない

痙縮は筋の過剰な緊張で、他動的に動かそうとすると強い抵抗が生じます。痙縮が続き不動が長期化すると関節可動域(ROM)が制限され、拘縮へ進行し、食事や移乗などADLの大きな妨げとなります。

④痙縮・ROM障害:不動が続くと拘縮が進行し可動域が狭くなる
④痙縮・ROM障害:不動が続くと拘縮が進行し可動域が狭くなる

⑤ 膀胱直腸障害

排尿・排便のコントロールが障害されます。損傷高位が仙髄より上(核上型)では反射性膀胱・反射性直腸となり、馬尾・仙髄損傷(核・核下型)では弛緩性となって排尿困難・残尿が問題となります。尿意・便意の感覚も低下し、たまっても気づきにくい点が重要です。

部位主な症状注意点
膀胱反射性膀胱(勝手に尿が出る)、失禁、排尿困難残尿→尿路感染・腎機能障害に注意。間欠導尿が基本
直腸反射性直腸(勝手に便が出る)、便秘、失禁排便習慣の確立、便塊は自律神経過反射の誘因
感覚尿意・便意の低下〜消失尿・便が貯留しても自覚できない
馬尾損傷排尿困難(弛緩性膀胱)早期の評価と対応が重要
⑤膀胱直腸障害:反射性膀胱・直腸、失禁、馬尾損傷では排尿困難
⑤膀胱直腸障害:反射性膀胱・直腸、失禁、馬尾損傷では排尿困難

⑥ 自律神経障害 ― 起立性低血圧と自律神経過反射

脊髄損傷では発汗障害・血管運動障害・体温調節障害が生じます。高位損傷ほど重篤で、次の2つは国試最頻出です。

また、体温調節障害により暑さ・寒さへの適応が難しく、うつ熱・低体温を起こしやすくなります。

障害主症状対応・注意
起立性低血圧立ちくらみ・めまい・失神、血圧低下ギャッジアップは段階的に。弾性ストッキング・腹帯
自律神経過反射血圧急上昇、頭痛、顔面紅潮、発汗、徐脈T6以上に多い。座位にして膀胱充満・便塊など誘因を除去
発汗障害損傷高位以下で発汗低下、代償性の多汗脱水・うつ熱に注意
体温調節障害うつ熱・低体温環境温の管理が必要
血管運動障害血管の拡張・収縮調節不能、浮腫下肢のむくみ・DVTに注意
⑥自律神経障害:発汗・血管運動・体温調節の障害と、起立性低血圧・自律神経過反射
⑥自律神経障害:発汗・血管運動・体温調節の障害と、起立性低血圧・自律神経過反射

⑦ 呼吸障害 ― C3以上は自発呼吸が著しく低下

呼吸筋(横隔膜・肋間筋)は頸髄〜胸髄に支配されるため、損傷高位で呼吸障害の重症度が決まります。横隔膜は横隔神経(C3〜C5)支配であり、C3以上の高位頸髄損傷では自発呼吸が著しく低下し人工呼吸管理を要します。

損傷高位呼吸への影響
C3以上横隔膜も働きにくく自発呼吸が著しく低下(人工呼吸器管理)
C4〜T1肋間筋の働きが低下し呼吸が浅くなる。咳嗽力低下
T2以下影響は比較的軽度
⑦呼吸障害:損傷レベルによる影響と、肺炎・無気肺のリスク
⑦呼吸障害:損傷レベルによる影響と、肺炎・無気肺のリスク

⑧ 消化器障害と ⑨ 異所性骨化

消化器障害は自律神経障害が原因で、蠕動運動の低下・通過障害(麻痺性イレウス)を生じます。とくに急性期はストレス潰瘍(胃酸分泌増加による胃潰瘍)や消化管出血のリスクが高く要注意です。

異所性骨化は関節周囲に異常な骨化が生じるもので、股関節に最も多く、次いで膝・肘・肩に好発します。進行すると関節強直となり可動域が失われるため、早期からの関節可動域訓練(ゆっくり・定期的に・痛みのない範囲で)が予防の要です。

合併症病態対策
麻痺性イレウス・通過障害自律神経障害で蠕動運動が低下腹部所見の観察、排便コントロール
ストレス潰瘍・消化管出血急性期の胃酸分泌増加、粘膜障害急性期の予防投薬・便色の観察
異所性骨化股・膝・肘・肩の関節周囲に異常骨化早期からのROM訓練、疼痛のない範囲で愛護的に
関節強直異所性骨化の進行予防が最重要(進行すると不可逆)
⑨異所性骨化:股・膝・肘・肩に好発し、進行すると関節強直に至る
⑨異所性骨化:股・膝・肘・肩に好発し、進行すると関節強直に至る

⑩ 性機能障害・褥瘡・その他の合併症

その他、長期の不動と感覚脱失に伴う合併症が多数あります。いずれも早期発見・早期対応でQOLを守ることが治療方針です。

⑩性機能障害・褥瘡・疼痛・浮腫・DVT・骨萎縮・脊髄空洞症・心理的問題
⑩性機能障害・褥瘡・疼痛・浮腫・DVT・骨萎縮・脊髄空洞症・心理的問題
国試ポイント
① 頸髄損傷=四肢麻痺、胸髄損傷=対麻痺。麻痺は必ず損傷高位より下位に出る。
② 急性期(脊髄ショック期)は弛緩性麻痺・反射低下、回復後は痙性麻痺・反射亢進。時期の入れ替えが定番の引っかけ。
③ 自律神経過反射はT6以上の損傷で好発。誘因は膀胱充満・便塊・褥瘡など。頭痛・顔面紅潮・発汗・徐脈+血圧急上昇。
④ 自律神経過反射への対応は「臥位のまま安静」ではなく座位にして血圧を下げ、誘因を除去すること。
⑤ 横隔膜はC3〜C5(横隔神経)支配。C3以上の損傷では自発呼吸が著しく低下し人工呼吸管理となる。
⑥ 異所性骨化は股関節に最も多く、進行すると関節強直。予防は早期からの他動的ROM訓練。
・ 急性期の消化器合併症はストレス潰瘍・消化管出血。長期臥床ではDVT・褥瘡・骨萎縮に注意。
📖 脊髄損傷(機能障害)をスライドで学ぶ(国試辞書) 図解スライドでサクッと復習