このページは病理学「免疫」分野のうち、移植と拒絶反応にしぼって解説します。移植とは機能を失った臓器や組織を、他の個体または自分の体の別の場所から移し替えることで、提供者をドナー、受ける人をレシピエントといいます。国試では3つの分類(自己移植・同種移植・異種移植)と拒絶反応の起こりやすさ、HLA、シクロスポリン、GVH反応が繰り返し狙われます。
| 読み方 | いしょく |
|---|---|
| 定義 | 機能を失った臓器や組織を、他の個体または自分の体の別の場所から移し替えること |
| 用語 | 提供者=ドナー/受ける人=レシピエント |
| 分類 | 自己移植・同種移植(同系移植/異系移植)・異種移植の3種類 |
| 拒絶反応の起こりやすさ | 自己移植=低い/同種移植=場合による/異種移植=高い |
| 拒絶反応とは | 移植された組織を体が「自分ではないもの」と判断して攻撃する反応 |
| 拒絶反応の原因 | 移植片表面の組織適合抗原、特にHLA抗原(ヒトにおける主要な組織適合抗原)の不一致 |
| 治療(薬) | 免疫抑制剤。代表例はシクロスポリン。使用により移植成績は大きく改善した |
| GVH反応 | 移植片に含まれるリンパ球が宿主を攻撃する反応(graft versus host)。特に骨髄移植で重要 |
| 国試での狙われ方 | 3分類と拒絶反応の有無の対応、一卵性双生児=同系移植、HLA、シクロスポリン、GVH=移植片対宿主の向き |
移植とは、機能を失った臓器や組織を、他の個体または自分の体の別の場所から移し替えることです。臓器・組織を移して機能を代行させます。簡単にいうと「悪くなった臓器を、ほかから持ってきて助ける方法」=臓器や組織の引っ越しです。
この2語は方向を問う設問で頻出なので、必ずセットで覚えます。
移植には大きく3種類あります。同種移植はさらに同系移植と異系移植に分かれます。
覚え方は「自分→人→動物」。拒絶反応の起こりやすさは自己移植=低い/同種移植=場合による/異種移植=高いの順に強くなります。
| 分類 | 内容 | 例 | 拒絶反応 |
|---|---|---|---|
| 自己移植 | 自分の体の一部を自分の別の場所へ | 皮膚移植・自家骨移植 | 基本的に起こらない(低い) |
| 同種移植(同系) | 遺伝的に同じ個体間の移植 | 一卵性双生児どうし | 起こらない |
| 同種移植(異系) | 同じ種でも遺伝的に異なる個体間 | 血縁外の人からの臓器移植 | 起こりやすい(臨床で問題になる) |
| 異種移植 | 異なる種の個体から | ヒヒ→人、ブタ→人 | 強く起こりやすい(高い) |
拒絶反応とは、移植された組織を体が「自分ではないもの」と判断して攻撃する反応です。免疫(体の防御)が移植片を攻撃します。まとめると、自己移植・同系移植は拒絶されにくく、異系移植は拒絶反応が起こりやすいとなります。
| 自己移植 | 同系移植 | 異系移植 | |
|---|---|---|---|
| 内容 | 同じ体内での移植 | 遺伝的に同じ個体間の移植(例:一卵性双生児どうし) | 同じ種でも遺伝的に異なる個体間の移植 |
| 拒絶反応 | 起こらない | 起こらない | 起こりやすい |
| 移植片 | 永久に生着する | 永久に生着する | 生着しにくい |
| 臨床上の位置づけ | OK | OK | 臨床で問題になる臓器移植の多くがこれ |
拒絶反応は、移植片の表面にある組織適合抗原が関係します。特に重要なのがHLA抗原で、HLAはヒトにおける主要な組織適合抗原です。
ドナーとレシピエントのHLAが一致しないと免疫が反応して拒絶が起こるため、移植ではHLAの適合性を確認することが重要です。
拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤が使われます。代表例はシクロスポリンです。免疫の働きをおさえて移植片を守り、免疫抑制剤の使用により移植成績は大きく改善しました。
イメージは「免疫抑制剤=免疫のブレーキ」。ブレーキをかけて移植片を長く守ります。
移植では通常は宿主が移植片を攻撃します。しかし逆に、移植片に含まれるリンパ球が宿主を攻撃する反応があり、これをGVH反応(graft versus host=移植片対宿主反応)といいます。特に骨髄移植で重要な合併症のひとつで、症状は発熱、発疹、肝障害、下痢など、重症化すると生命に関わることもあります。攻撃の「向き」が逆である点が最大のポイントです。
| 通常の移植(宿主 対 移植片) | GVH反応(移植片 対 宿主) | |
|---|---|---|
| 攻撃する側 | 宿主の免疫細胞 | 移植片に含まれるリンパ球 |
| 攻撃される側 | 移植片(臓器・組織) | 宿主(患者) |
| 内容 | 体が「自分ではない」と判断し宿主が移植片を攻撃 | 移植片のリンパ球が宿主を攻撃してしまう |
| 重要な場面 | 一般の臓器移植(拒絶反応) | 特に骨髄移植 |
同じデッキの補足(おまけ)として組織の培養が扱われています。組織培養とは、生体から取り出した組織を人工培地で育てることです。