歩行分析とは、歩き方を数値化された指標で客観的にとらえ、正常歩行からのズレを見つける評価法です。国家試験では歩行率(ケイデンス)約110歩/分・歩行速度60〜80m/分・歩隔5〜10cm・重心の上下左右動4〜5cmといった正常値がそのまま問われます。さらに立脚相60%/遊脚相40%という歩行周期の割合と、各相で働く筋の組み合わせも定番の出題です。
| 読み方 | ほこうぶんせき(歩行分析/gait analysis) |
|---|---|
| 目的 | 歩行を時間・距離因子と関節角度・筋活動で数値化し、異常歩行の原因を特定する |
| 主な時間・距離因子 | 歩行率(ケイデンス)・歩行速度・歩幅・重複歩距離・歩隔 |
| 正常値の代表 | 歩行率 約110歩/分、歩行速度 60〜80m/分、歩隔 5〜10cm |
| 重心(身体重心)の動き | 上下・左右とも約4〜5cmのサインカーブを描く |
| 歩行周期の割合 | 立脚相 約60%/遊脚相 約40%(片脚支持期と両脚支持期がある) |
| 省エネの仕組み | 骨盤傾斜5°・骨盤側方移動4〜5cm・骨盤回旋4°・立脚中期の膝屈曲15°・膝と足関節の協調運動 |
| エネルギー面の特徴 | 快適歩行速度で単位距離あたりの消費が最小。速度が上がるとある点で走行のほうが効率的になる |
| 国試での狙われ方 | 歩行率の定義(単位時間の歩数)、正常値の数値、立脚相/遊脚相の筋、失調での歩隔拡大 |
歩行分析でまず押さえるのは、時間因子(1分あたり何歩・何m進むか)と距離因子(歩幅・歩隔)です。歩行速度が上がると、歩行率(歩数)と歩幅の両方が増加します。どちらか一方ではない点が引っかけポイントです。
| 指標 | 意味 | 正常のめやす |
|---|---|---|
| 歩行率(ケイデンス) | 単位時間内の歩数 | 約110歩/分 |
| 歩行速度 | 単位時間に進む距離 | 60〜80m/分 |
| 歩幅 | 踵接地から対側踵接地までの距離 | おおよそ身長の約45% |
| 重複歩距離 | 同側踵接地から次の同側踵接地まで | 歩幅の約2倍 |
| 歩隔 | 左右の足の間隔 | 5〜10cm |
| 足角(つま先の開き) | 進行方向に対する足の向き | 約7〜10°の外方向 |
歩隔は左右の足の間隔で、正常では5〜10cm。バランスが悪いほど支持基底面を広げようとするため、小脳性失調・バランス不良では歩隔が広くなる(wide-based gait)のが典型です。逆に、パーキンソン病では歩隔がむしろ狭く小刻みになります。
正常歩行では身体重心(COG)が上下・左右とも約4〜5cmの正弦波(サインカーブ)を描き、正面から見ると8の字状の軌跡になります。この振幅が大きいほどエネルギーの浪費が増えるため、振幅を小さく保つことが省エネ歩行の本質です。
| 所見 | 歩隔 | 代表的な疾患・状態 |
|---|---|---|
| 正常 | 5〜10cm | 健常成人 |
| 歩隔が広い(開脚歩行) | 10cm以上 | 小脳性失調、脊髄後索障害、酩酊様歩行 |
| 歩隔が狭い | 5cm未満〜すり足 | パーキンソン病(小刻み歩行)、痙性対麻痺(はさみ脚歩行) |
| 重心の上下動が過大 | ― | 分回し歩行、義足歩行、膝関節固定 |
正常歩行では、重心の上下・左右の振れをできるだけ小さくする5つの機構が働いています。数値がそのまま出題されるので、角度と距離をセットで覚えます。
| 決定因子 | 内容 | 数値のめやす |
|---|---|---|
| ① 骨盤の傾き(骨盤下制) | 遊脚側の骨盤が下がり重心の上昇を抑える | 約5° |
| ② 骨盤の左右(側方)移動 | 立脚側へ骨盤が水平移動する | 4〜5cm |
| ③ 骨盤の回旋 | 水平面での前後回旋で歩幅を稼ぐ | 約4°(片側) |
| ④ 立脚中期の膝屈曲 | 重心の頂点を下げる | 約15° |
| ⑤ 膝と足関節の協調運動 | 踵接地〜足底接地〜踵離地の連続的な動き | ― |
エネルギーの話は「時間あたり」なのか「距離あたり」なのかで答えが変わります。ここが最大の引っかけです。
| 条件 | 一定時間あたりの消費 | 一定距離あたりの消費 |
|---|---|---|
| 遅い歩行 | 少ない | 多い(効率が悪い) |
| 快適歩行速度 | 中等度 | 最小(最も効率がよい) |
| 速い歩行 | 多い | 多い(効率が悪い) |
| 一定速度を超えた移動 | ― | 走行のほうが有利になる |
正常歩行では、股関節・膝関節・足関節の角度変化と筋活動がほぼ決まったパターンを示します。1歩行周期は立脚相 約60%・遊脚相 約40%に分けられ、立脚相はさらに初期接地・荷重応答期・立脚中期・立脚終期(+前遊脚期)、遊脚相は遊脚初期・中期・終期に分かれます。
| 筋 | 主に働く相 | 役割 |
|---|---|---|
| 前脛骨筋(背屈筋群) | 遊脚相+初期接地 | つま先の引っかかりを防ぐ/踵接地後の足底接地を制動(遠心性) |
| 下腿三頭筋(底屈筋群) | 立脚相(特に立脚終期) | 踵離地〜蹴り出し、前方推進 |
| 大腿四頭筋 | 立脚初期(荷重応答期) | 膝の急な屈曲を制動し体重を支持 |
| ハムストリングス | 遊脚終期〜初期接地 | 振り出した下腿を減速し、接地に備える |
| 中殿筋 | 立脚相 | 骨盤の水平を保持(麻痺でトレンデレンブルグ徴候) |