ホーム ›
国試辞書 ›
臨床医学各論 ›
橋本病(慢性甲状腺炎)
橋本病(慢性甲状腺炎)の病態・症状・診断・治療はしもとびょう(まんせいこうじょうせんえん)
橋本病(慢性甲状腺炎)は、自己免疫によって甲状腺が慢性的に炎症を起こし、じわじわと破壊される 疾患です。進行すると甲状腺ホルモンが不足し、甲状腺機能低下症 をきたします。中年女性に圧倒的に多く、甲状腺機能低下症の最多原因 として国試頻出です。
読み方 はしもとびょう(まんせいこうじょうせんえん)
分類 自己免疫性疾患(臓器特異的自己免疫)/甲状腺機能低下症の最多原因
別名 慢性甲状腺炎(橋本病と同義)
好発 中年女性(30〜50歳代に多い、男女比1:20以上)
主な症状 寒がり・易疲労感・体重増加・むくみ・便秘・徐脈
検査・診断 びまん性甲状腺腫、抗Tg抗体・抗TPO抗体陽性、エコーで深部エコー低下、FT4低下・TSH高値
治療 甲状腺ホルモン薬(レボチロキシン)の補充
予後 慢性経過。完全治癒は難しいが服用でコントロール良好
橋本病(慢性甲状腺炎)とは
橋本病は、自己免疫の異常により自分の甲状腺が攻撃され、慢性の炎症を起こす疾患 です。「慢性甲状腺炎」と同義で、リンパ球が甲状腺に集まって組織をじわじわと壊していきます。
リンパ球(免疫システム)が甲状腺を「異物」とみなして攻撃する 甲状腺が徐々に破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく 進行すると甲状腺機能低下症 を起こす ポイントは「自己免疫」「じわじわ壊れる」「機能低下」の3つ 甲状腺は体のエネルギー代謝をコントロールする臓器のため、機能が落ちると全身の働きがゆっくりになります。
自己免疫で起こる慢性の甲状腺炎=橋本病
疫学(好発・男女比)
橋本病は女性に圧倒的に多い自己免疫疾患 で、比較的頻度の高い病気です。
男女比は1:20以上 と、圧倒的に女性に多い 成人女性の約30人に1人 にみられる高頻度の疾患 すべての年齢で発症しうるが、30〜50歳代の中年女性に最も多い 気づかないうちに進行することもあり、早期発見・治療が大切
項目 内容
男女比 1:20以上(女性に多い)
頻度 女性の約30人に1人
好発年齢 30〜50歳代の中年女性(全年齢で発症しうる)
病態・病理変化
橋本病では甲状腺に特徴的な病理変化が起こります。原因は完全には解明されていませんが、甲状腺へのリンパ球浸潤 が基本です。
リンパ球浸潤 :甲状腺組織にリンパ球が入り込むリンパ濾胞(胚中心)の形成 :集まったリンパ球が濾胞を作る濾胞上皮細胞の変性・萎縮 :甲状腺の細胞が傷み、機能が低下する慢性の炎症が続くと結合組織の増生・線維化 が進み、甲状腺の予備能力が徐々に低下する この線維化・機能低下が進むと、甲状腺の予備能力を超えて甲状腺機能低下症へと移行します。
リンパ球浸潤・リンパ濾胞形成・上皮変性が特徴
症状(甲状腺機能低下症状)
甲状腺ホルモンが不足すると全身の代謝が落ち、甲状腺機能低下症の症状 が現れます。体のさまざまな働きが「ゆっくり」になるのが特徴です。
寒がり (いつも体が冷える)・低体温易疲労感・倦怠感 (だるくてやる気が出ない)体重増加 (食事や運動をしても増える)むくみ (顔・手足の硬いむくみ=粘液水腫)便秘 (消化管の動きが低下)徐脈・動悸 (脈が遅くなる、60回/分未満)・息切れその他:発汗減少、皮膚乾燥、脱毛(眉毛外側1/3の消失)、嗄声、アキレス腱反射の弛緩相遅延、月経異常
寒がり・疲れやすい・体重増加・便秘・徐脈など
診断・検査所見
診断は、甲状腺の所見・自己抗体・ホルモン値 を組み合わせて行います。
びまん性甲状腺腫 :甲状腺が全体的に腫大し、硬く触れる抗甲状腺抗体が陽性 :抗サイログロブリン抗体(抗Tg抗体)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO抗体)甲状腺エコー :深部エコー(内部エコー)の低下を伴うびまん性甲状腺腫血液検査 :機能低下すると FT4 低値・TSH 高値 (原発性甲状腺機能低下症のパターン)
検査 橋本病での所見
甲状腺触診・エコー びまん性甲状腺腫、深部エコー低下
抗Tg抗体・抗TPO抗体 陽性
FT4(遊離サイロキシン) 低値(機能低下時)
TSH(甲状腺刺激ホルモン) 高値(機能低下時)
治療・経過・予後
甲状腺機能が低下している場合は、不足したホルモンを薬で補う のが治療の基本です。
甲状腺ホルモン薬(レボチロキシン) を補充する1日1回、毎日決まった時間(朝食後など)に継続して服用することが大切 適切に服用すれば症状は改善し、日常生活は良好・予後良好 一方で経過は慢性 で、数年〜数十年かけてゆっくり進行することがあり、完全に治癒することは難しい 疾患です。長期的に経過を観察しながら上手に付き合っていく必要があります。
甲状腺ホルモン薬の補充で症状は改善する
国試ポイント
① 橋本病(慢性甲状腺炎)は自己免疫による慢性甲状腺炎で、甲状腺機能低下症の最多原因
② 男女比1:20以上と圧倒的に女性に多く、30〜50歳代の中年女性に好発
③ 病理はリンパ球浸潤・リンパ濾胞(胚中心)形成・濾胞上皮の変性/萎縮
④ 症状は寒がり・易疲労・体重増加・むくみ・便秘・徐脈など機能低下症状
⑤ 診断はびまん性甲状腺腫+抗Tg抗体・抗TPO抗体陽性、機能低下ではFT4低下・TSH高値
⑥ 治療は甲状腺ホルモン薬(レボチロキシン)の補充、経過は慢性で完全治癒は難しい
📖 橋本病(慢性甲状腺炎)をスライドで学ぶ(国試辞書)
図解スライドでサクッと復習