鍼鎮痛とは、鍼刺激によって痛みを軽減する作用のことです。鍼灸の主な適応は疼痛性疾患であり、昔は「鍼麻酔」と呼ばれましたが、鍼だけで完全な麻酔効果を得ることは難しいため、現在は「鍼鎮痛」という呼び方が一般的です。国試では内因性疼痛抑制系が鍼鎮痛の主要メカニズムであること、そして5つの科学的根拠理論と関与する神経伝達物質が繰り返し問われます。
| 読み方 | しんちんつう |
|---|---|
| 定義 | 鍼刺激によって痛みを軽減する作用 |
| 旧称との関係 | 昔は「鍼麻酔」と呼ばれたが、現在は「鍼鎮痛」が一般的 |
| 主な適応 | 疼痛性疾患(鍼灸の主な適応) |
| 主要メカニズム | 内因性疼痛抑制系(生体に本来備わる痛みを抑える防御システム) |
| 科学的根拠となる5理論 | ①ゲートコントロール説(1960年代)②刺激誘発鎮痛(SPA)③内因性オピオイドの発見(1970年代)④下行性疼痛抑制系⑤広汎性侵害抑制調節(DNIC) |
| 関与する物質 | エンドルフィン・エンケファリン・ダイノルフィン(内因性オピオイド)、セロトニン、ノルアドレナリン、GABA、アデノシン |
| 国試での狙われ方 | 内因性オピオイド3種の名称、DNIC/SPAの略語と意味、鍼麻酔が普及しなかった4つの理由、機序の順序 |
鍼鎮痛とは、鍼刺激によって痛みを軽減する作用を指します。鍼灸の主な適応は疼痛性疾患であり、鎮痛は鍼灸のもっとも代表的な効果です。
「麻酔(痛みを消す)」ではなく「鎮痛(痛みを減らす)」が主な役割である、という点が国試の引っかけポイントです。
鍼麻酔が外科手術の麻酔法として定着しなかった理由は、次の4点にまとめられます。
現在は「鍼麻酔」ではなく「鍼鎮痛」として利用されることが多く、痛みを減らすのが主な役割です。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 効果に個人差が大きい | よく効く人とあまり効かない人の差が大きい |
| 心理的影響を受けやすい | 不安・恐怖で効果が下がり、安心・信頼で効果が上がる |
| 効果発現まで時間がかかる | 刺鍼してすぐに効くわけではない |
| 十分な筋弛緩が得られない | 筋肉の緊張が完全にはとれない |
鍼の鎮痛作用は、次の5つの理論で科学的に説明されます。国家試験頻出の項目です。
ポイントは、ゲートコントロール説は1960年代、内因性オピオイドの発見は1970年代という年代の対応と、SPA=刺激誘発鎮痛、DNIC=広汎性侵害抑制調節という略語の意味です。
| No | 理論 | 内容 |
|---|---|---|
| ① | ゲートコントロール説(1960年代) | 触覚刺激により脊髄のゲートが閉じて痛みの伝達を抑える |
| ② | 刺激誘発鎮痛(SPA) | 鍼刺激により鎮痛が発生する |
| ③ | 内因性オピオイドの発見(1970年代) | 脳内の"モルヒネ"(エンドルフィン・エンケファリンなど)が痛みを抑える |
| ④ | 下行性疼痛抑制系 | 脳から脊髄へ信号が降りて痛み信号をブロックする |
| ⑤ | 広汎性侵害抑制調節(DNIC) | 別の部位への刺激が全身の痛みを抑制する |
内因性疼痛抑制系とは、生体に備わる痛みを抑えるシステムです。過剰な痛みから身体を守り、痛覚伝導を抑制して鎮痛を起こす、生体が本来持っている防御システムであり、鍼鎮痛の主要メカニズムとされます。
| 種類 | 作用の範囲 | レベル |
|---|---|---|
| ①全身性鎮痛 | 全身に作用して広く痛みを抑える | 脳内オピオイドなどが関与 |
| ②脊節分節性鎮痛 | 脊髄の特定の節で痛みを抑える | 脊髄レベルでの抑制 |
| ③末梢性鎮痛 | 末梢組織や末梢神経で痛みを抑える | 末梢での痛みの発生を抑制 |
鍼鎮痛のカギを握るのが神経伝達物質です。エンドルフィン・エンケファリン・ダイノルフィンの3つはまとめて内因性オピオイドと呼ばれ、体内でつくられる天然の鎮痛物質です。
これらの物質が痛覚伝導を抑制して鎮痛効果を発揮します。
| No | 物質 | 分類・特徴 | はたらき |
|---|---|---|---|
| ① | エンドルフィン | 内因性オピオイド/脳内のモルヒネ | 強力な鎮痛作用 |
| ② | エンケファリン | 内因性オピオイド | 脊髄で痛みを抑制(痛み信号をブロック) |
| ③ | ダイノルフィン | 内因性オピオイド | オピオイド受容体に作用し強い鎮痛作用 |
| ④ | セロトニン | モノアミン | 気分を安定させ、痛みの伝達を抑制 |
| ⑤ | ノルアドレナリン | モノアミン | 下行性抑制系を活性化し脳からの痛み抑制に関与 |
| ⑥ | GABA | 抑制性伝達物質 | 神経の興奮を鎮め、神経活動を抑制 |
| ⑦ | アデノシン | ヌクレオシド | 鎮痛・抗炎症作用で痛みと炎症を軽減 |
鍼鎮痛の流れは「鍼刺激 → 内因性疼痛抑制系活性化 → オピオイド放出 → 痛みを抑える」の順で覚えます。