腹痛とは腹部に感じる痛みの総称で、激しい痛みから軽い不快感まで程度はさまざまです。国家試験では内臓痛・体性痛・関連痛の3分類と、痛む部位から原因疾患を推定する力が繰り返し問われます。ここでは分類・部位別原因・随伴症状・検査・緊急サインまでを一気に整理します。
| 読み方 | ふくつう |
|---|---|
| 定義 | 腹部に感じる痛みの総称。激しい痛みから軽い不快感まで程度はさまざま |
| 3つの分類 | 内臓痛・体性痛・関連痛 |
| 主な原因 | 胃・十二指腸潰瘍、胆石症、急性膵炎、急性虫垂炎、腸閉塞(イレウス)、腹膜炎、婦人科疾患など |
| 随伴症状 | 悪心・嘔吐・下痢・吐血・下血・発熱 |
| 鑑別・注意 | 心窩部痛では急性心筋梗塞、腹部全体の激痛では腹膜炎・消化管穿孔・絞扼性イレウス・腹部大動脈瘤破裂に注意 |
| 検査 | 身体診察・血液検査・腹部X線・腹部エコー・内視鏡・CT・MRI |
| 治療 | 原因疾患に応じて実施(抗潰瘍薬、手術、鎮痛薬による対症療法など) |
腹痛とは、腹部に感じる痛みの総称です。痛みの強さはさまざまで、激しい痛みから軽い不快感程度まで幅があります。
腹痛は「症状」であって「病名」ではありません。そのため国家試験でも臨床でも、痛みの性状・部位・誘因・随伴症状を手がかりに、背後にある原因疾患を絞り込んでいく思考が問われます。
腹痛はまず内臓痛・体性痛・関連痛の3つに分けて考えます。これは国家試験で最頻出の枠組みです。
| 分類 | 発生機序 | 特徴 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 内臓痛 | 管状臓器の伸展・拡張・収縮 | 腹部正中線上に感じやすい/場所がはっきりしにくい/鈍い痛み/周期的に反復することがある | 胃炎、胆石症、腸閉塞 |
| 体性痛 | 腹膜などへの炎症の波及 | 痛む場所がはっきりしている/病変部位と痛む場所が一致しやすい/鋭い痛みが持続する | 虫垂炎、腹膜炎 |
| 関連痛 | 内臓の痛みが神経を介して伝わる | 病変部位と違う場所が痛む/放散痛として出ることがある | 胆嚢炎で右肩に痛みが出る |
腹痛は痛む場所から原因臓器を推定します。上腹部は肝胆膵と胃、そして心臓まで視野に入れるのがポイントです。
| 部位 | 疑う系統 | 主な原因疾患 |
|---|---|---|
| 右季肋部痛 | 胆嚢・肝臓系 | 胆石症、胆嚢炎、総胆管結石、胆管炎、肝膿瘍、横隔膜下膿瘍、横隔膜炎 |
| 心窩部痛 | 胃・食道・膵臓+心臓 | 食道炎、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、急性膵炎、慢性膵炎、胃癌・膵癌、急性心筋梗塞 |
| 左季肋部痛 | 脾臓・膵臓・大腸・血管系 | 大動脈瘤破裂、大腸穿孔、胃潰瘍、急性膵炎、単純性イレウス |
下腹部では右下腹部痛=急性虫垂炎が特に重要です。左下腹部は大腸疾患が多く、下腹部正中では腸・膀胱・婦人科疾患を考えます。腹部全体が痛む場合は緊急性が高い疾患を最優先で除外します。
| 部位 | 考え方 | 主な原因疾患 |
|---|---|---|
| 右下腹部痛 | 急性虫垂炎が特に重要 | 急性虫垂炎、回盲部腫瘍、クローン病、腸型ベーチェット病、単純性潰瘍、大腸憩室症、右卵巣嚢腫捻転、右鼠径ヘルニア、メッケル憩室炎、右腸腰筋膿瘍 |
| 左下腹部痛 | 大腸疾患が多い | 大腸憩室炎、潰瘍性大腸炎、虚血性大腸炎、腸間膜脂肪織炎、S状結腸捻転、大腸癌、左鼠径・大腿ヘルニア、単純性イレウス、左腸腰筋膿瘍 |
| 下腹部痛 | 腸・膀胱・婦人科疾患を考える | 急性腸炎、潰瘍性大腸炎、腸重積、急性虫垂炎後期、大腸憩室炎、子宮外妊娠、膀胱炎、婦人科疾患 |
| 腹部全体の痛み | 緊急性が高い疾患に注意 | 汎発性腹膜炎、消化管穿孔、絞扼性イレウス、腸間膜動脈血栓症、腹部大動脈瘤破裂 |
腹痛は単独ではなく、他の症状を伴って現れることが多く、一緒に出ている症状が診断のヒントになります。
とくに吐血・下血は消化管出血のサイン、発熱は炎症性疾患のサインとして重要です。
腹痛は痛みの性状・部位・誘因からある程度判断でき、必要に応じて次の検査を行います。
緊急対応が必要なサインは次の3つです。施術現場でも見逃してはいけません。
治療は原因疾患に応じて行います。
腹痛は「痛み止めで終わり」ではなく、原因を見つけることが重要です。鍼灸・あん摩マッサージ指圧の現場でも、緊急サインを認めたら施術を中止し医療機関へつなぐ判断が求められます。