腹部は腹直筋と側腹筋からなる腹壁、胎児循環の名残である臍、骨盤の重要な触診指標である上前腸骨棘、そして鼠径管など、国試で繰り返し問われる体表解剖の宝庫です。
触診・局所解剖・発生の知識が交差する範囲なので、構造と位置関係を整理して押さえましょう。
| 読み方 | ふくぶ |
|---|---|
| 腹壁の構成 | 腹直筋(縦走)+側腹筋(外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋) |
| 白線 | 正中を縦走する腱膜性の線維、血管・神経が少なく手術切開部位として重要 |
| 臍の高さ | 第3〜4腰椎(L3〜L4)椎間板レベル |
| 臍の由来 | 臍帯の切断痕。臍静脈→肝円索、臍動脈→臍動脈索(内側臍ヒダ)に痕跡として残る |
| 下腹部皮下組織 | 浅層=脂肪層、深層=スカルパ筋膜の2層構造 |
| 鼠径管を通るもの | 男性は精索、女性は子宮円索 |
| 国試での狙われ方 | 臍の高さ・白線の性質・ASISと腸骨稜の触診・鼠径管の通過物と鼠径ヘルニアの機序が頻出 |
腹壁は正中を縦に走る腹直筋と、体幹側方を構成する側腹筋(外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋)から成り立っています。正中には血管・神経の少ない白線(はくせん)が縦走し、手術の切開部位としても重要です。
| 構造 | 位置・走行 | 特徴 |
|---|---|---|
| 腹直筋 | 正中の両側を縦走 | 腱画により区分され、縦方向の筋 |
| 外腹斜筋 | 側腹部の最も浅層 | 筋線維は前下方に走る |
| 内腹斜筋 | 外腹斜筋の深層 | 筋線維は前上方に走る |
| 腹横筋 | 側腹筋の最深層 | 筋線維はほぼ水平に走る |
| 白線 | 腹直筋の間、正中 | 血管・神経が少ない腱膜性の線維 |
臍は臍帯(さいたい)が切断された跡であり、胎児期の血管が出生後に痕跡として体内に残ります。国試では臍静脈・臍動脈がそれぞれ何に置き換わるかが頻出です。
| 胎児期の構造 | 出生後の名称 | 備考 |
|---|---|---|
| 臍静脈(さいじょうみゃく) | 肝円索(かんえんさく) | 肝臓へ血液を運んでいた血管の痕跡 |
| 臍動脈(さいどうみゃく) | 臍動脈索(内側臍ヒダ) | 全身へ血液を運んでいた血管の痕跡 |
下腹部では骨盤の触診指標として上前腸骨棘(ASIS)と腸骨稜が重要です。どちらも体表から触知でき、鍼灸・解剖学・触診の各分野で頻出します。
| 指標 | 位置 | 国試での意味 |
|---|---|---|
| 上前腸骨棘(ASIS) | 骨盤前方の左右の突出部 | 体表から触知できる骨盤評価の基準点 |
| 腸骨稜 | 骨盤上縁 | 第4腰椎(L4)レベルの目安として触診に利用 |
下腹部の皮下組織は浅層=脂肪層と深層=スカルパ筋膜(膜様層)の2層構造をとります。スカルパ筋膜は線維成分が豊富な膜様構造で、鼠径靭帯の下で大腿筋膜へ移行する点が国試頻出です。
| 層 | 名称 | 特徴 |
|---|---|---|
| 浅層 | 脂肪層 | 皮下脂肪を含みクッションの役割、下腹部では発達しやすい |
| 深層 | スカルパ筋膜(膜様層) | 膜様構造で線維成分が豊富、鼠径靭帯の下で大腿筋膜へ移行 |
鼠径管(そけいかん)は下腹壁を斜めに貫く通路で、男性では精索、女性では子宮円索が通ります。鼠径管の両端には浅鼠径輪(体表から触知可能)と深鼠径輪(下腹壁動静脈の外側)があります。
| 性別 | 鼠径管を通る構造 | 支持する臓器 |
|---|---|---|
| 男性 | 精索 | 精巣へ向かう血管・精管などをまとめる構造 |
| 女性 | 子宮円索 | 子宮を支える靭帯 |