アフロの手アフロの手

腰痛の診察と鍼灸治療|問診・レッドフラッグ・弁証と配穴の国試ポイントようつうのしんさつとしんきゅうちりょう

このページは腰痛を「どう診て、どう鍼灸で治療するか」という診察手順と治療方針を扱います(下肢に放散する痛みそのものの鑑別は「腰下肢痛と坐骨神経痛」「下肢痛と神経障害」のページが担当)。問診で発症時期・安静時痛/運動時痛・姿勢との関係・既往歴・職業やスポーツ歴・生活習慣を押さえ、レッドフラッグ(発熱・安静時の強い痛み・体重減少・排尿排便の異常・麻痺やしびれ)を除外したうえで、東洋医学的には風寒湿・気滞血瘀・腎虚のタイプを見極め、局所穴と循経穴を組み合わせて治療します。

腰痛の診察と鍼灸治療|腰痛の診察と鍼灸治療 1
読み方ようつうのしんさつとしんきゅうちりょう
定義腰部に生じる痛みに対し、問診・危険兆候の確認・病態の鑑別を行い、東洋医学的な弁証にもとづいて鍼灸治療と生活指導を組み立てること
主な原因非特異的腰痛(原因を特定できない腰痛)/筋・関節の負担(姿勢・動作のくせ・使いすぎ)/内臓の病気/心理・社会的要因/神経の関与によるお尻・脚のしびれや痛み
鑑別すべき病態筋・筋膜性腰痛、椎間板症、椎間関節性腰痛、変形性腰椎症、腰椎圧迫骨折、股関節の障害、仙腸関節の障害
主な証(弁証)風寒湿・気滞血瘀・腎虚
治法疏通経絡(経絡の通りをよくする)・補腎(腎を補う)。腰痛のタイプに合わせて局所穴と循経穴の両面からアプローチ
代表的な配穴腰眼・腎兪・大腸兪・委中・承山
禁忌・注意(危険な兆候)レッドフラッグ=発熱/安静時の強い痛み(夜間痛)/体重減少/排尿・排便の異常/麻痺・しびれ。該当すればすぐ受診をすすめる
生活指導ウォーキング・ストレッチ・体幹運動を痛みを悪化させない範囲で。過度な安静はNG
国試での狙われ方レッドフラッグの内容、非特異的腰痛の定義、前屈で悪化=椎間板性/後屈で悪化=椎間関節性の対比、3つの証と配穴の対応

腰痛の原因はひとつではない――5つの視点

腰痛は「腰の骨や筋肉の問題」だけでは説明できません。スライドでは腰痛の背景として次の5つが挙げられています。診察の第一歩は、この5方向のどれが主因かを見当づけることです。

「腰だけが原因じゃない」――スライド06では腰以外に由来する腰痛として、変形性腰椎症・腰椎圧迫骨折・股関節の障害・仙腸関節の障害が示されています。

腰以外に由来する腰痛何が起きているか
変形性腰椎症加齢による骨や関節の変形で神経が圧迫され、痛みやしびれが出ることも
腰椎圧迫骨折骨がつぶれることで強い痛みが出ることがある
股関節の障害股関節の炎症や変形が、腰やお尻の痛みとして現れることがある
仙腸関節の障害骨盤の関節に炎症が起こると腰やお尻に痛みが出ることがある
腰痛とは? 原因は非特異的腰痛・筋関節の負担・内臓・心理社会的要因・神経とさまざま
腰痛とは? 原因は非特異的腰痛・筋関節の負担・内臓・心理社会的要因・神経とさまざま

見逃せない危険サイン(腰痛のレッドフラッグ)

鍼灸の適応・不適応を分けるいちばんの関門がレッドフラッグです。スライド02では、次の症状があるときは要注意とし、すぐ受診を=早期発見が命を守る、とまとめています。国試では「腰痛で医療機関への受診をすすめるべきもの」として頻出です。

これらが無いことを確認して、はじめて「非特異的腰痛」として鍼灸で対応する流れになります。

腰痛のレッドフラッグ=発熱・安静時の強い痛み・体重減少・排尿排便の異常・麻痺やしびれ
腰痛のレッドフラッグ=発熱・安静時の強い痛み・体重減少・排尿排便の異常・麻痺やしびれ

診察のポイント――問診で発症・経過・姿勢を確認する

スライド03は「丁寧な問診が、正確な評価と適切な治療につながる」として、確認すべき6項目を示しています。痛みの原因を見つける第一歩が問診です。

問診項目確認すること
いつから?痛みの開始時期やきっかけを確認
安静時痛・運動時痛安静にしている時や動いた時の痛みを確認
姿勢や動作との関係前かがみ・反らす・長時間同じ姿勢での痛みの変化を確認
既往歴過去の腰痛や病気、手術歴を確認
仕事・スポーツ歴職業やスポーツでの負担や外傷歴を確認
生活習慣睡眠・食事・喫煙・運動習慣などを確認
診察のポイント=発症・経過・姿勢を確認する6項目
診察のポイント=発症・経過・姿勢を確認する6項目

病態別の鑑別――筋・筋膜性腰痛と椎間板症/椎間関節性腰痛

問診で姿勢との関係を聞く意味は、ここで効いてきます。前かがみで悪化するか、後ろに反ると痛いかが病態を分ける決め手になります。

筋・筋膜性腰痛は、腰の筋肉や筋膜が緊張・硬くなることで痛みが発生するもの。特徴は「しびれや感覚の異常は少ない(神経症状は少ない)」「触ると筋肉が硬く緊張している」「押すと特定の部位に痛み(圧痛)がある」「前かがみや反る動作で痛みが強くなる」「猫背や反り腰など姿勢の乱れが影響」の5点です。

椎間板症と椎間関節性腰痛退行性変化に注目します。椎間板の変性では「水分や弾力の低下」「線維輪の亀裂・変性」が、椎間関節の変性では「軟骨のすり減り」「骨棘形成・炎症」が起こります。

所見筋・筋膜性腰痛椎間板症・椎間関節性腰痛
神経症状しびれや感覚の異常は少ないお尻や太ももに関連痛が出る
触診触ると筋肉が硬く緊張している/押すと特定部位に圧痛
姿勢・動作前かがみや反る動作で痛みが強くなる前かがみで悪化・長時間座位で悪化/後ろに反ると痛い
その他の誘発猫背や反り腰など姿勢の乱れが影響くしゃみで痛い
背景筋・筋膜の緊張退行性変化(椎間板の水分・弾力低下と線維輪の亀裂、椎間関節の軟骨すり減り・骨棘形成・炎症)
椎間板症と椎間関節性腰痛――退行性変化と症状の特徴
椎間板症と椎間関節性腰痛――退行性変化と症状の特徴

東洋医学の考え方――腰痛のタイプ(証)を見極める

東洋医学では、経絡の通り道が滞ると腰痛になると考えます。原因は体質やバランスの乱れにあるとみて、腰痛のタイプを3つに分けます。気血の巡りがキーワードです。

原因痛みの性質
風寒湿冷えや湿気の影響腰が重だるく痛む
気滞血瘀ストレスや血の巡りの悪さ刺すような痛み
腎虚加齢や疲労で腎が弱る腰がだるくなる
東洋医学の考え方――風寒湿・気滞血瘀・腎虚の3タイプ
東洋医学の考え方――風寒湿・気滞血瘀・腎虚の3タイプ

鍼灸治療の考え方――局所穴と循経穴を使う

スライド08は、鍼灸治療を局所穴と循経穴の組み合わせでとらえます。治療方針は補腎(腎を補う)と疏通経絡(経絡の流れを整える)で、腰痛のタイプに合わせて、局所と経絡の両面からアプローチするのが原則です。スライドに示された経穴は次の5つです。

腰部の3穴で腰痛の原因に直接アプローチし、下肢の委中・承山で経絡の流れを整えて根本から腰痛を改善する、という構成です。

局所穴(腰眼・腎兪・大腸兪)と循経穴(委中・承山)
局所穴(腰眼・腎兪・大腸兪)と循経穴(委中・承山)

生活指導・運動療法と再発予防

治療室の中だけで終わらせないのが腰痛診療のポイントです。スライド09では過度な安静はNGと明記され、「動かさないと筋力が低下し回復が遅れることも」とされています。痛みを悪化させない範囲でできることから始めるのが正解です。

区分内容
ウォーキング無理のないペースで血流を促進
ストレッチ筋肉の緊張をやわらげ柔軟性をアップ
体幹運動体幹を鍛えて腰への負担を軽減
過度な安静はNG動かさないと筋力が低下し回復が遅れることも
痛みの範囲で続ける痛みを悪化させない範囲でできることから始める
再発予防:正しい姿勢背筋を伸ばし、骨盤を立てて座る
再発予防:持ち上げ動作膝を曲げて腰を落とし、体に近づけて持ち上げる
再発予防:体を冷やさない腰回りを温めて血行を促進。冷えは大敵
再発予防:休養と睡眠疲労をためず、しっかり休んで体をリセット
再発予防:食生活を整える栄養バランスを意識して筋肉や骨を強くする
生活指導と運動――ウォーキング・ストレッチ・体幹運動。過度な安静はNG
生活指導と運動――ウォーキング・ストレッチ・体幹運動。過度な安静はNG
国試ポイント
① レッドフラッグは【発熱・安静時の強い痛み・体重減少・排尿排便の異常・麻痺やしびれ】の5つ。ひとつでもあれば鍼灸より先に医療機関へ。
② 非特異的腰痛=はっきりとした原因が特定できない腰の痛み。定義を問う問題が出る。
③ 筋・筋膜性腰痛は「神経症状(しびれ・感覚異常)が少ない」「圧痛がある」が鑑別の柱。神経症状があれば別病態を疑う。
④ 椎間板症は前かがみ・長時間座位・くしゃみで悪化、椎間関節性は後ろに反ると痛い。前屈/後屈の対比が引っかけポイント。
⑤ 東洋医学的弁証は風寒湿(重だるい)・気滞血瘀(刺すような痛み)・腎虚(だるい/加齢・疲労)の3つ。痛みの性質と証の対応で覚える。
⑥ スライドの配穴は局所穴=腰眼・腎兪・大腸兪、循経穴=委中・承山。治法は補腎と疏通経絡。
・ 腰痛に対して過度な安静はNG。痛みを悪化させない範囲での運動継続が指導の基本。
📖 腰痛の診察と鍼灸治療をスライドで学ぶ(国試辞書) 図解スライドでサクッと復習